神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2005-01-01から1年間の記事一覧

来年も期待できる展覧会

松本零士コレクションでつげる「漫画誕生から黄金バットの時代」展 1月8日〜2月5日 逓信総合博物館 昭和モダニズムとバウハウス〜建築家土浦亀城を中心に〜 3月14日〜5月7日 江戸東京博物館(第2企画展) 徳川将軍家の学問−紅葉山文庫と昌平坂学問…

私の体を通り過ぎていった図書館本たち(その2)

『日本の植民地図書館』(加藤一夫・河田いこひ・東條文規著)を 読んだ。トンデモ本か?という話があったが、能力不足につき、わか らんかった。 満洲には多少興味があるが、「書物蔵」にて色々予備知識がなければ おそらく一生読まなかった本であろう。聞…

『柳田国男の絵葉書』(田中正明編)

[1921年]10月25日(記載) 10月26日(日付印) 柳田孝 殿 舩少しおくれて26日の午後か 27日に立つ、日本人があまり多 くて却つて煩しい 併し仲よしの 新村教授が同舩だ、南フランス では珍しい所を多く見た、マルセ ーユは新開の港町だが見…

 『本屋風情』(岡茂雄著)から

私が浜田青陵先生の、身に余る知遇を得られたのは、清野謙次先生 あってのことであり、清野先生から直接受けた恩義も限りないもの であるということ、そして今は亡き両先生の御冥福を祈って已まない ことを、改めてここに書き留めておく。 (中略) 特に、私…

『日本の経済学を築いた五十人 ノン・マルクス経済学者の足跡』(上久保敏著)から

思わぬ所に思わぬ古本屋があり、思わぬ品を置いているということが ある。自宅の最寄り駅から電車で10分足らずの古本屋がそうである。 誰にも教えたくない漁場のような存在だ。以下でみる作田荘一の『皇国 の進路』(昭和19年)もここで知った本である。 …

『下山事件<シモヤマ・ケース>』(森達也著)から

奇妙なタイトルの小冊子が引出しの奥にあった。表紙に綴られたタイトル は「毛の国」。その下に記された著者名は、矢板玄と三菱化工機社長という 肩書きがついた白井秀雄なる人物だ。 (中略)数頁読み進めるうちに、どうやら日本人とユダヤ人との相違点や …

『横田順彌のハチャハチャ青春記』(横田順彌著)から

[一の日会]の仲間が、ぼくを古典SF研究家にしてくれたのだ。そのおかげで、 いまは、ほとんど蒲団一枚しか敷くスペースしかなく、あとはすべて古本に 囲まれるという生活をしているが・・・。数年前、二十年間生活を共にして きた妻に、突然離婚届けを突きつ…

『文芸東西南北』(木村毅著)から

この島田翰が如何に日本人離れのした凄いビブリオマニアであった かは内田魯庵氏が読売新聞に連載せられた『蠹魚の自伝』に詳しか った。その中にはまるで西洋の探偵小説のような面白い話もあった。 そして彼が又永井荷風氏の青年時代の親友であった事は、例…

 『古書巡礼』(品川力著)から

(日本文壇史)24巻の索引は大学の図書館の人がやったときかされて、いよいよ専門家の登場、講談社も索引に本腰を入れ始めたなあと思いながら眼をやると、古屋(こや)芳雄がFの部に、素木(しらき)しづ子がMの部、坪谷善四郎が坪内善四郎なんですよ。 (…

 『評伝・SFの先駆者 今日泊亜蘭』(峯島正行著)から

新潟県長岡へ疎開したまま、帰京していない父の水島爾保布に手紙を 出して、佐藤春夫への紹介状を書いて貰った。 (中略) その時、佐藤は凡そ、次のようなことを言った。 「自分の弟子筋に当たる男に大坪砂男という男がいる。(中略) 大坪を君に紹介するか…

『横田順彌のハチャハチャ青春記』(横田順彌著)から

古書集めは前記のように中学時代から、ぼちぼちとやっていたが、買うのは、旧<宝石>のほかは<丸>や<画報戦記><世界の艦船><航空ファン><航空情報><海と空>といった戦記雑誌や飛行機関係雑誌、[世界航空文学全集]のルネ・ムシュット『大空への…

岩波新書『宣教師ニコライと明治日本』(中村健之介著)から

「ケーベル教授が来た。かれはロシアからアウグスチヌス、 ジュコフスキーその他の本を取り寄せている。ところで、かれ の話によれば、三年前大学に着任したときは、学生たちはスペ ンサーとダーウィンに夢中になっていたのだが、いまはスペンサー やダーウ…

『退読書歴』(柳田國男著)から

日本に唯一つの国立図書館、しかも帝都の大公園と併存する図書館 の中にも、駆除し難い悪者が折々潜入し、珍書を借りて蔵書印 を切とったり、又アート版の一枚を破って持ち帰ったりする。 それは国人共同の恥でもあり、同時に学問其ものの不名誉でも あるが…

 『長與又郎日記』(小高健編)から

昭和13年7月2日 紙上伝うる所によれば、清野は神護寺その他より多数の国宝級 の経巻を盗出したる由なり。近来貴重なる経巻の蒐集に熱中し 居たるは、先般京都に赴きし際承知、その一、二は自分も見たる ことあり。(中略) 同氏亦、多年写経に熱中し、近…

中公文庫『書物航游』(平澤一著)から

Kが戦前、北京を訪れた時、故宮を案内した当時の留学生から、陳列 されている物を平然とポケットに入れるので、同じ大学の長老教授 でもあり、注意するわけにもいかず、ほとほと困惑したという話を 聞いたことがあります。

 『田中秀央 近代西洋学の黎明』(菅原憲二・飯塚一幸・西山伸編)から

ところで佐野眞一『旅する巨人−宮本常一と渋沢敬三』(中略)、 『渋沢家三代』(中略)が明らかにしたところによれば、渋沢家は 当時、嫡男篤二が妻敦子を家に置いて芸者玉蝶と同居、周囲の度重 なる説得にも応じなかったために、1912年1月28日、栄…

再び都丸書店

このようにして健康に恵まれているために、どこの古書展にもよく出かけているが、なかでも高円寺の古書展の時には朝早く眼がさめる。 ここにきて、かならず立寄るのは高円寺駅そばの都丸書店だが、社会科学・経済学書などが豊富にある本店でなく、人文科学が…

戒厳令下の古本市

あれほど、猛威を振るった新型インフルエンザもようやく下火に なりつつある200×年。戒厳令はまだ解除されていない。 ここは、神田○町、某古書会館前。時刻は、金曜日の午前9時過ぎ。 政府の自粛要請を無視して、強行されようとしている古本市。 未だ、…

 帝国図書館は、かすばかり

わたしが松井簡治という人物に惚れこんだのは、古書収集の 動機や目的を語った「わが蒐集の歴史」を読んでからである。 「書誌学」(7巻2号、昭和11年8月)に掲載されたもの で、簡治の談話を編集部がまとめている。 (中略) 帝国大学と取引している古…

『探書五十年』(福田久賀男著。不二出版、1999年3月刊)から

西早稲田バス停の前に、大観堂という新刊書店がある。この一画は 戦災を免れたそうで、建物も戦前からのものと思われる位、店内 も暗いので、古書店と間違って入ってくる客も間々あったとか。 通りすがりに覗くと、何時も、店に座っているのは品の良い老女 …

柳田國男と里見甫

『阿片王』(佐野眞一著)によると、戦後の一時期、里見甫は、 成城683に潜伏して、GHQに踏み込まれたりしているが、 当時柳田國男は成城の377に居住していたので、街ですれ違 っていたかもと思うと、ちょっとおもしろい。 ちなみに、柳田邸の向か…

岩波新書『日本の近代建築(下)』(藤森照信著)から

長野(宇平治)は、大学予備門で夏目漱石と同級で、漱石が 建築から志望変更して文学に進んだのに対し、彼は予定通り 建築に進んだが、おそらく二人には世代的ま共通性があり、 漱石がヨーロッパの”個”と格闘するのと同じように長野も ヨーロッパの”石”と取…

事例1:岩波新書『宣教師ニコライと明治日本』(中村健之介著)から

しかし、その日記が今日まで伝わっていたとは、日本のだれも 知らなかった。正教会関係者も日露交流史の研究者も、ニコライ堂 に残されていたニコライの書いた文書は、関東大震災のときの火災 ですべて湮滅(いんめつ)したと思っていた。ソ連の研究者たちも…

事例2:『智にはたらけば角が立つ』(森嶋道夫著)から

多くの人は、マルクス派が横暴を極めたから京大経済学部は マルクス派に乗っとられたというが、頭数では−京大教授会 は厳密に多数決で人事を決めていた−非マルクス派が多数で あったのである。マルクス派の勢力が影響したとすれば、教 授会会場外の世論的マ…

事例3:『回想九十年』(脇村義太郎著)から

細谷 『経友』(経済学部の校友会誌、第5号、1924年 3月)にその震災(引用者注:関東大震災)のときに本 を持ち出した話が出ていましたね。 脇村 研究室の小使の永峰と、そのへんにいた学生たちがス ミス文庫をまず出したのです。震災当時の写真が『…

『阿片王 満州の夜と霧』(佐野眞一著)から

読むまいと思っていたが、読んでしまった佐野眞一『阿片王』。 戦前の民族学者について第1章に出てくる。 昭和10年(1939)年4月、当時、陸軍省軍事課長だった 岩畔豪雄の命令で、「昭和通商」という軍需国策会社がつく られた。公的記録には一切出て…

岩波新書『戦後文学放浪記』(安岡章太郎著)から

何年か前にリービ英雄氏と会ったとき、昔の文壇には 編集者というものがいて、作家への原稿依頼や原稿受け 取りや原稿料の支払いなど一切合財、編集者が全部やって くれた。作家にとって、編集者は甚だ便利な存在であると 同時に、作家の生殺与奪の権を全部…

『上方風雅信』(肥田皓三著。昭和61年10月人文書院)から

病気(引用者注:肺結核)のため止むを得なかったとはいえ、 三十代の私はなかば朽ち果てていたといってよい。そんな私を 何かにつけてはげましてくれ、高津の旧友をつどって「肥田を はげます会」まで開いてくれたのが黒田清(讀賣新聞大阪本社 編集局次長…

『戦後「翻訳」風雲録』(宮田昇著)から

アメリカ史を専門とした彼の叔父の自伝的論文によると、 彼の父は、戦前の北海道庁、ついで樺太庁(今のサハリン) の移民課の技師を経て、松岡洋右外相にコネをつけて大陸に 渡り「満洲国」官吏となった。その後、家族を日本に帰すと、 「蘭」特務機関員に…

『SFの時代−日本SFの胎動と展望』(石川喬司著)中「SF界展望 SF界1976」から

76年のSF界回顧は、まず福島正実の急死(4月9日) から始めなければなるまい。(中略) 「SFアルカギリ貴殿ノ名ハ消エズ」という 無名の一ファンから寄せられた弔電は、このパイオニアに ふさわしい墓碑銘といえるだろう。 遺稿となった『未踏の時代…