神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

紅療法の発明者山内啓二こと山内不二門

山内啓二述、松浦玉圃記『紅療法講演録』(松浦玉圃、明治41年8月)の著者山内啓二は、本名山内不二門というようで、伝記も出ている。山内玄人編『伝記山内不二門』(1980年7月)の「不二門略年譜」によると、 山内不二門 慶応2年9月20日現在の宮城県生まれ …

売文社解散後の堺利彦の原稿料

大正8年7月22日付時事新報9面の「むせんでんわ」に「堺さんの原稿値上」として、 例の社会主義者堺利彦氏、葉書を各方面に出して曰く、「近来諸物価暴騰生活困難に付き、小生従来の稿料を五割方値上げ仕るの止むなきに立ち至り候間、悪からず御承知置下され…

カフェ・スズキと徳川夢声

徳川夢声「神保町昔ばなし」によると、 電車通りをこえて裏神保町を、駿河台の方向へ行くと、右側の所に寄席があった。たしか神田の立花というイロモノ席だった。(略) 何しろ四十年も昔の話、今の桂文楽老師達が、まだ若年のチャキチャキで夢みたいである…

堺利彦の愛猫

黒岩比佐子さんの『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)9頁の写真には、堺真柄、堺利彦、高畠素彦、久板卯之助、岡野辰之助、堺為子、高畠初江が写っている。これと同じ時に撮った思われる写真が、『売文集』に掲載されている。森…

『かんだ』(かんだ会)創刊200号の目次

昭和37年9月30日創刊の『かんだ』(かんだ会)が9月30日発行の秋号で創刊200号を迎えた。目次は、 神保町昔ばなし 徳川夢声(創刊号から再録) エンタメ下から目線(3) 細馬一紀 あの町、この人(6) 梅谷桂三 カンダ・ナウ(55)中学校舎が文化芸術の拠点…

東京図書館主幹手島精一

古本合戦への祝辞、じゃなかった、ちょっこし図書館ネタ。東京図書館主幹としての手島精一を『小中村清矩日記』に発見。 明治20年12月21日 ○図書館主幹手島精一氏より同館季報(廿年七月より九月ニ至)恵送。 『東京図書館季報』はこの月に創刊。誰ぞも持っ…

社会主義者と忘れられた美女と大空詩人

同時代に生きていれば、どんな人物同士が面識があってもおかしくはない。社会主義者堺利彦、忘れられた美女及川道子、神保町の喫茶店田沢画房の「卒業生」*1で詩人の永井叔も例外ではない。前二者については既に今月1日に述べたが、この三名が一堂に会した時…

内藤民治の『中外』創刊祝賀会に出席した堺利彦

黒岩比佐子さんの『パンとペン』332頁に、内藤民治の『中外』の創刊を支援した実業家として登場する堤清六。 内藤民治『堤清六の生涯』(曙光会、昭和12年8月)を見ると、 三萬部からの月刊雑誌「中外」十月号が、刷り上つて、秀英舎の中庭に山と積まれた九…

黒岩比佐子『パンとペン』(講談社)から中森明夫『アナーキー・イン・ザ・JP』(新潮社)へ

重厚な黒岩比佐子『パンとペン』で勉強した後で、中森明夫の小説『アナーキー・イン・ザ・JP』を読むのも良いかもしれない。堺利彦の名前も出てくる。 −−いや、そのー、大杉・・・・サン?そもそも、いったい、あなたは何者なのかなって。 <うーん、まあ…

破船事件前後の久米正雄

阿部次郎の日記によれば、 大正6年10月29日 午後から藤間勘右衛門の舞踏会にて帝劇へ。茅野夫婦、森田夫婦、岩波、夏目未亡人、久米、赤木、松岡、徳田(秋江)、野上(豊)、横川、加藤(精)、高屋等にあふ。 11月11日 久米正雄破談の報をきく*1 (略)夜…

名曲喫茶田澤畫房の店主田澤學二と看板娘田澤千代子

大正末期に神田にあった田澤畫房という喫茶店については、2009年3月10日に言及して、その後店主や看板娘の名前も判明したが、店主の経歴が不明だったので、それっきり記事にしていなかった。私がぽっくりいっても、林哲夫氏なら再発見することも可能だとは思…

黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)への蛇足

黒岩比佐子さんの『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社、2010年10月)は、私が補足できるような隙はないのだが、366〜367頁で言及されている黎明会の解散時期について一言。黒岩さんが採用している解散時期の1920年(大正9年)夏(…

岡本一平の描いた堺利彦の顔

黒岩比佐子さんの『パンとペン』が東京堂書店のベストセラー第1位になってバンザイ。さて、同書のカバーをはずして表紙を見ただろうか。裏表紙には、岡本一平が描いた堺利彦の顔が載っている。これは、野依秀市編『堺利彦を語る』(秀文閣書房、昭和5年2月…

横田順彌と遠藤無水『社会主義者になった漱石の猫』

黒岩比佐子さんの『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)に売文社分裂事件の経緯を書いたパロディ本として登場する遠藤無水『社会主義者になった漱石の猫』。私がこの本の存在を初めて知ったのは、ヨコジュンさんの『日本SFこてん…

ミュージアムと古本市

美術館や博物館での古本市というと、古くは京都文化博物館、最近では名古屋市博物館と芦屋市立美術博物館(今年は、11月5日(金)〜11月7日(日))がある。京都と芦屋のは何度も行ったことがあるが、名古屋のは行ったことがない(誰ぞとか、ナンダロウさん…

山本飼山と堺利彦の売文社

山本飼山は、黒岩比佐子『パンとペン』(講談社)に大正元年10月大杉栄・荒畑寒村により創刊された『近代思想』の執筆者の一人として名前が出てくる。この飼山の日記は『飼山遺稿』に収録され、研究者にはよく知られていると思うが、一般の人には知られてい…

本屋風情岡茂雄と岡田式静坐法

岡書院の岡茂雄も岡田式静坐をしたおかげで長生きした一人のようだ。岡の『閑居随筆』(論創社、1986年6月)所収の「幼年学校時代」によると、 そのころ(明治四十三年)であった。阿南(惟幾)生徒監に勧められ、伴われて岡田式静坐会場の一つであった阿南…

永井荷風と田端の天然自笑軒

荷風の『断腸亭日乗』は索引があるので「自笑軒」を引くと、載っていた。昭和3年2月26日の条には、駿河台の市川左団次(松莚)邸で開かれた例会に、荷風のほか、小山内薫、岡鬼太郎、池田大伍、川尻清潭が出席し、すっぽんの吸物、烏賊のさしみ、新芋に蕗の…

柳田國男に群がる図書館人(その2)

再び、「ジュンク堂書店日記」から引用させてもらおう。 多少好評(?)だった柳田國男の『炭焼日記』に見るズショカンインの話の第二弾。 1 大西伍一(後の府中市立図書館長) (昭和20年) 3月 9日 大西伍一君来、「村のすがた」一そろひを托し、片山…

柳田國男に群がる図書館人(その1)

お許しを得て、閉鎖中の「ジュンク堂書店日記」さんから孫引き。 柳田國男の『炭焼日記』にズショカンの関係者が何人か登場する。 1 中田邦造日比谷図書館長 昭和20年 7月15日 中田邦造君来、文庫疎開の話をして行く。信州高遠がよからうといふ話などを…

笹川臨風と田端の天然自笑軒

筑摩書房の『明治文学全集』の総索引は優れもので、田端の天然自笑軒も立項されていて、笹川臨風『明治還魂紙*1』(亜細亜社、昭和21年6月)に出てくることがわかった。この笹川の回想録は、黒岩さんの新著『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘…

田端の天然自笑軒と有島一族

有島武郎の一族も田端にあった天然自笑軒を利用していたようだ。有島の日記によると、 大正6年1月9日 夕方、原が来て、英も一緒に天然自笑軒へ行く。 原文は英文で、小玉晃一訳(『有島武郎全集第十二巻』)による。「原」は友人の原久米太郎(原智恵子の父…

『中外』の内藤民治と民衆図書館

黒岩比佐子さんの『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』は、黒岩版日本文壇史といった感もあって、今面白く読んでいる真っ最中である。さて、同書は、大正6年内藤民治が創刊した『中外』について、売文社が手伝っていたと言及している。この…

竹内文献の社会史

森本和男『文化財の社会史 近現代史と伝統文化の変遷』(彩流社、2010年6月)なる本にびっくら。「第12章戦時下の史跡保存」、「第14章日本の中国侵略と文化財」に、上記、竹内文献、富士文献、契丹古伝などの偽書の信奉者としての藤澤親雄や中里義美らが登場…

日経文化面に「変わる国会図書館」の記事

今日の日経朝刊を誰ぞは見たかすら。長尾眞館長就任後、書籍の電子化を主導するなど従来の慎重な姿勢から変わった国会図書館の動きについて紹介してるだす。来年10月には各部に所属していた電子部門担当の職員を統合して約70人規模の電子情報部を新設、また…

2005年の四天王寺と天神さんの古本祭

5年前の大阪の古本祭りの記録があった。 2005年10月7日 書物奉行さんに負けじと10時をもって突撃!の巻 書物奉行さんに10月7日の大阪古本祭めぐりを推奨したものの、どうやら「雨にたたられた青空古本祭」になりそうな気配・・・ 責任をとって辞職しよ…

有島武郎と村井弦斎のすれ違い

有島武郎と村井弦斎は、もう少しで出会いそうになった機会があった。大正4年5月6日付け武郎の妻安子(相模国平塚 杏雲堂分院内)宛書簡*1によると、 其後熱の具合如何や あれより絃(ママ)斎方を訪れ候処主人殿は未た睡眠中に而代人出来り候間御申聞の旨尋…

『彷書月刊』300号の目次

これは、買わないわけにはいかなかった。『彷書月刊』300号にして、休刊号である。目次をアップすると、 ・特集 彷書月刊総目次後編 1997−2010 ・読者のみなさまのおたより 連載 ・尋ね人の時間(78・特別編) 生活社と鉄村さんと 河内紀 ・均一小僧の気まぐ…

古屋鉄石の孫弟子、北一輝

北一輝・北署吉兄弟と、古屋鉄石の催眠術の試験台だった行者永福なる人物とは親しかったようだ。稲邊小二郎『一輝と署吉 北兄弟の相剋』(新潟日報事業社、2002年6月)によると、 また署吉の記録にも次のように書いてある。 「兄がどうして霊的人物になった…

文部官僚にして絵馬蒐集家の鶴岡春三郎

鶴岡春三郎「常陸眞壁地方特殊民雑話」*1を収録した礫川全次編『穢れと差別の民俗学』では、不詳とされてしまった鶴岡。この人は、木村捨三編『千里相識』(集古会、昭和10年9月)*2によると、 鶴岡春三郎 明治二十四年一月廿一日生 一(出生地)東京目白台 …