神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2020-01-01から1年間の記事一覧

オタどんが死ぬまでに読みたい未公刊の日記群ーー堀一郎の日記はどうなった?ーー

わしには、探求書は存在しない。ただ、読んでみたい本はいくつか存在する。次のような日記群である。 堀一郎の日記(当初『堀一郎著作集』で書翰・日記編が予定されていたが、未完のまま完結) 石川達三の日記(河原理子『戦争と検閲:石川達三を読み直す』) 中…

昭和9年鹿児島県立図書館で奥田啓市館長と会った大場磐雄と藤島武二

大場磐雄「楽石雑筆〈中〉」*1を読書中。そうしたら、奥田啓市鹿児島県立図書館長を発見。 (昭和九年) ◎一月五日(略) 九時過の列車にて別れ鹿児島着十一時少過、山田五十麿氏*2にあう、氏の遺物は図書館にありというを以て一同そこに赴く、図書館長に逢い便宜…

元台北帝国大学教授で法人類学者だった増田福太郎の教職追放ーー増田は、藤沢親雄・小島威彦・堀一郎らとムー大陸の夢を見たかーー

『国民精神文化研究所要覧:昭和十六年三月』(国民精神文化研究所、昭和16年3月)で職員の一覧を見ていると、色々考えさせられる。多くの職員が、戦後公職追放や教職追放となっている。しかし、在職中は研究に切磋琢磨し、互いに刺激しあった仲だっただろう。…

出版史料にも使える渋谷定輔『農民哀史』ーー平凡社の下中弥三郎と三浦関造ーー

一昨日の吉永さんの「日本オカルティズム史講座」第3回には、藤沢親雄、山本英輔、三浦関造、下中弥三郎など拙ブログでお馴染みの人物が多数出てきて楽しめた。下中と三浦の関係についても言及されていたので、2人が出てくる戦前の日記を紹介しておこう。渋谷…

知られざる北村小松の大衆文藝傑作文庫『空の非常線 處女よ嘆く勿れ』(艸元社書房)

『本のリストの本』の重版記念イベントがあった日に、三密堂書店で「大衆文藝傑作文庫」の『空の非常線 處女よ嘆く勿れ』(艸元社書房)を発見。未知の文庫で、かつ、北村小松執筆なので購入。124頁、400円。昭和12年10月初版、16年10月再版。青森県立図書館・青…

大場磐雄『楽石雑筆』に「信仰と迷信に関する通俗科学展覧会」ーー國學院大學博物館で「楽石雑筆展」開催中ーー

國學院大學博物館で、「企画展「楽石雑筆―神道考古学の祖 大場磐雄の記憶と記録―」 【会期:2020/11/5~】 | 國學院大學博物館 考古と神道で知る日本の文化・歴史(国学院大学博物館)縄文 土偶 埴輪 土器 神社 宗教 東京 渋谷 無料 Japanese tokyo shibuya C…

『近代の仏教思想と日本主義』(法藏館)中の名和達宣論文を読んでーー仏教関係者の公職追放についてーー

今年の瞠目すべき一冊、法藏館の石井公成監修、近藤俊太郎・名和達宣編『近代の仏教思想と日本主義』については、「『近代の仏教思想と日本主義』(法藏館)の栗田英彦「日本主義の主体性と抗争ーー原理日本社・京都学派・日本神話派ーー」への補足 - 神保町系オ…

中島俊郎先生の講演会と内田明先生により解明された寿岳文章が向日庵本で使った活字

中島俊郎先生の講演「書物・和紙・文学ーー寿岳文章の豊かな世界ーー」が12月20日(日)府立京都学・歴彩館であると、御連絡をいただきました。ありがとうございます。ちょうど1年前に長野裕子先生の講演「寿岳文章と向日庵本」があったことを思い出す。その時、ど…

今年何かと話題になった三密堂書店で見つけた粟野秀穂編『五十四年之回顧』(昭和13年)ーー西田直二郎の友人としての粟野秀穂ーー

今年の新語・流行語年間大賞は、「3密」でした。3密が話題になると、三密堂書店も何かと話題になった1年でした。しかし、幸か不幸か、客が押し寄せて3密になるような事態にはならなかったようだ(^_^;) 今回は、三密堂で見つけた粟野秀穂編『五十四年之回顧…

台湾の古書店台北堂書店(小野山三郎)の古書目録『(南支南洋)南方資源資料特集目録』(昭和16年)

先日『本のリストの本』(創元社)重版記念イベントが開催され、行ってきました。林哲夫氏所蔵の目録類の展示・販売もあり、眼福でした。私も古書目録は集めていて、ある程度集まると『日本古書目録大年表』(金沢文圃閣、平成27年1月)にも載ってないような珍し…

平楽寺書店の井上四郎宛家永三郎書簡ーー『日本仏教思想の展開』監修者としての家永三郎ーー

3年前の大阪切手まつりでシルヴァン書房の矢原さんから、家永三郎の平楽寺書店宛葉書を入手。平楽寺書店宛書簡が出回っていた頃である。中村元の書簡もあった。3枚あった家永の葉書のうち昭和31年7月5日付けは、ゲラ刷を一覧して、「道元が法然や貞慶に先行し…

京都女子大学で開催中の「京女100年の至宝展」に江戸川乱歩旧蔵の『風流東大全』(享保16年)ーー蔵書印データベースも活用した解説ーー

京都女子大学が創基100周年記念の展覧会「京女100年の至宝」を開催していたので、行ってきました。ビアズリー関連、九条武子コレクション、淀野隆三宛や佐藤春夫宛の川端康成書簡、よく知られたB5判ではなくB4判の『キンダーブック』創刊号(昭和2年11月)*1など…

『本のリストの本』(創元社)重版記念のイベントが京都市の徳正寺でーーあなたも本のリストを作ろうーー

『京王線沿線の吸血鬼伝説』 『直立魚類上・下』 『生首の正しい飼い方』 『自殺のススメ』 『古木探検』 『不思議昆虫図鑑』 『珍妙昆虫図鑑』 『陳氏菜経』 『邪馬台国は火星にあった!』 『古墳の呪的文様』 『木を巡る対立』 『海竜祭の民俗』 『加美島…

取りあえず買っておいたら役に立った『旧高田邸と国立大学町85年の物語』ーー高田義一郎と茅原華山の『内観』

茅原華山の『内観』(大正9年4月創刊)における異色の執筆者について、「知恩寺の古本まつりで三密堂書店から茅原華山の雑誌『内観』を - 神保町系オタオタ日記」で紹介した。『民本主義の論客茅原華山伝』(不二出版、平成14年12月)の著者茅原健氏は、そのうち高…

契丹古伝と竹内文献を繋ぐムー大陸幻想ーー「言説のキャッチボール」で拡大する偽史大系ーー

明日『ユリイカ』12月号の「特集偽書の世界」が出るようだ。私は一時期偽書、特に竹内文献等の超古代史物にハマっていたので、『歴史読本』の特集や原田実氏*1の著作は必ず買っていた。最近は、あまり関心もなくなり関係書もほとんど買わなくなってしまったが…

「京大光線」の三浦恒助の経歴を明らかにした『洛味』の凄さーー古書クロックワークで発見ーー

やはり『洛味』(洛味社)は、重要な雑誌ですね。「千里眼事件の最中に「京大光線」を発見した京都帝国大学の学生三浦恒助のその後 - 神保町系オタオタ日記」で言及した「京大光線」を「発見」しちゃった三浦恒助の経歴のうち京都市立美術工芸学校の嘱託教諭は、『洛味…

昭和初期に秋田県内で「発見」された巨石遺跡群ーー『秋田考古会々誌』(秋田考古会)からーー

「秋田県立秋田図書館横手分館旧蔵の『秋田考古会々誌』(秋田考古会)ーー柳田國男が顧問を務めた秋田考古会ーー - 神保町系オタオタ日記」で言及した『秋田考古会々誌』(秋田考古会)の2巻1号,昭和3年2月中の「余白録」に注目すべき記述があった。 (略) 田圃の中…

昭和26年東大1年生にして「内外諸名家秘蔵珍稀本展」に出品した松山俊太郎ーー「鶴房竿積」旧蔵?の出陳目録からーー

昭和26年11月に日本出版協会が主催した読書週間記念の「内外諸名家秘蔵珍稀本展」については、「『読書週間記念内外諸名家秘蔵珍稀本展出陳目録』 - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである。あらためて、出品者名を挙げると、 木村毅 小倉重勝 内藤政勝(…

知恩寺の古本まつりで三密堂書店から茅原華山の雑誌『内観』を

知恩寺秋の古本まつりの成果。いつも100円均一台でお世話になっている三密堂書店から『内観』を2部、各500円。「内観法」の「内観」かと手にとったが、そうではなかった。茅原華山らが出していたタブロイド判の雑誌である。初めて見たので、購入。27号,大正11年6…

京都学の進展のためにも『洛味』総目次の作成を望む

百萬遍知恩寺秋の古本まつりで、玉城文庫が3冊500円コーナーに『洛味』を大量に出していたので、目次を見て良さげな分だけ購入。竹中郁執筆の号も数冊あったが、それだけで買うのは止めておいた。市会にまとまって出たらしいが、幾つの書店に分かれて納まっ…

慶應義塾幼稚舎同窓会が日本初の喫茶店可否茶館で開催されていた

林哲夫氏の好著『喫茶店の時代:あのとき こんな店があった』(ちくま文庫)に、「明治二一年(一八八八)に上野(東京下谷西黒門町)に開店した「可否茶館(ルビ:カヒーさかん)」を日本最初の珈琲店だとするのが定説である」とある。この可否茶館は、明治21年4月に鄭…

千里眼事件の最中に「京大光線」を発見した京都帝国大学の学生三浦恒助のその後

10月20日の京都新聞第1面に驚いた人も多いだろう。「『人文書院』前身は霊術団体」とか「『日本心霊学会』の資料発見」というおどろおどろしい見出しが躍る。お馴染みの樺山聡記者の記事である。日本心霊学会の資料が人文書院から見つかったこと自体は既報である…

川柳家にして印刷所経営の趣味人石曽根民郎ーー知恩寺の古本まつりで見つけた石曽根民郎『川柳の話』ーー

石曽根民郎(いしぞね・たみろう)という人物は前から気になっていた。「阪神百貨店夏の古書ノ市で見つけた板祐生の『杏青帖』 - 神保町系オタオタ日記」では、板祐生孔版蔵書票の会会員。「青田寿美『蔵書印の話』を夢見る頃ーー小谷方明『蔵書印の話』を読んで…

国家主義者笠木良明と仏教者藤井日達の関係について補足ーー小川原正道編『近代日本の仏教者』からーー

笠木良明の大亜細亜建設社と仏教者との関わりについては、「近代の仏教者達と国家主義団体大亜細亜建設社ーー笠木良明のもとに集まる多田等観・山辺習学・足利浄円・中井玄道ーー - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである。その中で伊藤武雄『満鉄に生…

京都新聞の「京都古書の森案内」に紫陽書院が登場ーー店主鎌倉麻里さんが駆け出しの頃におかした大失敗とはーー

11月10日京都新聞の連載「京都古書の森案内」第15回(万代憲司記者)に紫陽書院が登場 。鎌倉麻里さんが、平成5年左京区茶山に開業*1。その後、夫が大阪で開いていた古書店*2が立ち退きとなったため、蔵書と屋号を引き継いで平成7年から紫陽書院として営業してい…

昭和14年における仏教専門図書館叡山文庫の概要及び所蔵記録の分類

百萬遍知恩寺秋の古本まつりでは色々珍しいものが買えたので、追々紹介していきたい。今回は、玉城文庫の3冊500円コーナーで見つけた『比叡山』17巻186号(比叡山発行所、昭和15年3月)。同誌は数冊出ていたが、今井常吉「叡山文庫所蔵記録の分類及閲覧に関して…

京都における近代仏教史のエピソードーー『京都府百年の年表 6宗教編』から見るーー

京都における近代仏教関係のエピソードを、取りあえず『京都府百年の年表 6宗教編』(京都府、昭和45年3月)で読んでみた。先ずは、「五色園の森夢幻が京都に計画していた万国史蹟宗教公園 - 神保町系オタオタ日記」で紹介した現八幡市における万国史蹟宗教公園…

出久根達郎氏が日経新聞の連載「書物の身の上」で泊鴎会と佐々木味津三に言及

10月17日の日経新聞朝刊掲載の出久根達郎「書物の身の上」に、『右門捕物帳』の佐々木味津三が欠かさず出席していた泊鴎会が出ていたという。私は全然知らなかったのだが、これを見られた某先生が「泊鴎会」を検索して、拙ブログ「馬場孤蝶の泊鴎会 - 神保町系オ…

明治25年絵草紙屋で雑誌『少年園』を買う綱島梁川

明治期に絵草紙屋が新刊雑誌も販売した時期があったという。今回、日記中にその実例を発見したので紹介しておこう。 (明治二十五年四月) 九日 (略)不覚柳町の雑誌屋まで行きぬ。雑誌屋にて古き国民之友二三冊買ひ求め、(略)途中八銭五厘を出して、新しき国民…

昭和26年5月29日京大人文研に出現した長玄なる人物は何者?と思ったら……

宮本常一の日記*1昭和26年5月29日の条に謎の人物が登場する。 (昭和26年) 5.29。火.(略)人文科学研究所にゆく。柴田、長玄[←?]、水野、貝塚、今西、天野、桑原氏ら来る。今西氏はすぐれたる学者。7時まではなし、鳳にかえってねむる。 [ ]内は編集部が付し…