細谷 『経友』(経済学部の校友会誌、第5号、1924年
3月)にその震災(引用者注:関東大震災)のときに本
を持ち出した話が出ていましたね。
脇村 研究室の小使の永峰と、そのへんにいた学生たちがス
ミス文庫をまず出したのです。震災当時の写真が『東京
大学経済学部五十年史』に載っているのですが、それは
ぼくの家内の兄の藤田昌二郎が撮った写真なのです。
図書館が火を吹きつつある写真もあります。
(中略)
細谷 例のエンゲル文庫はあの火事で丸焼けと伝えられてき
ましたが、実は千冊くらい、焼け残ったのです。それを
私が知ったのは、大河内暁男先生からうかがったからで
す。(中略)
私はそのとき慶応大学の図書館学科の講師をしていまし
て学生の卒論の相談にのっていたものですから、これは
テーマになるかと思ってそのとき経済学部図書室の主任
をしていた斎藤滋さんに頼んで、エンゲル文庫を(東大
附属図書館の)地下書庫で発見した当の、あのころたし
か参考係の係長だった大野智さんに会って見せてもらった
のです。そうしましたら、おどろいたことに想像以上に
たくさんエンゲル文庫が焼け残っていたのです。係長さ
んは、暇のできるたびに地下書庫を歩いて段々に集めた
と言っていましたが、なかには焼け焦げた本も混じって
いて迫力がありました。
追記:1月23日〜28日に丸善丸の内本店で「第19回慶應義塾
図書館貴重書展示会 論語の世界」がある。19回とのこと
だが、1回も行ったことがない。期間が短いから、ちと難
しい。大学外で展示するってあまり他の大学では聞いたこ
とがない。東洋大学だったか、横浜ランドマークタワーで
やった例は知っているが。