「ケーベル教授が来た。かれはロシアからアウグスチヌス、
ジュコフスキーその他の本を取り寄せている。ところで、かれ
の話によれば、三年前大学に着任したときは、学生たちはスペ
ンサーとダーウィンに夢中になっていたのだが、いまはスペンサー
やダーウィンは馬鹿にするようになりつつあるという。その頃は、
学生たちに何かキリスト教に近いものの講義をするなどというこ
とは、考えることもできなかった。ところが今回は、キリスト教
哲学に極めて近い中世哲学史の講義をしたという。つまりアウグス
チヌスその他についてだ。学生たちは強い興味を示して聞いていた
とのことだ。(後略)」(1896年7月28日)
(参考)ケーベルはドイツ系ロシア人で、ロシア正教徒だったという
(1899年にカトリックに改宗)。
ケーベルは東京帝国大学の哲学の教師。教え子に田中秀央が
いる。田中は、寿岳文章の師。
引用文は、ニコライの日記の記述。
「東京大学総合図書館」の展示で「東大黎明期の学生たち」を見たが、
進化論ブームが一つのテーマであった。