神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2024-01-01から1年間の記事一覧

内田魯庵『文学者となる法』(右文社、明治27年)異装版を大阪古書会館で発見・・・と思いきや

今月の大阪古書会館「たにまち月いち古書即売会」で、内田魯庵が「三文字屋金平述」の形式で書いた『文学者となる法』(宮澤俊三発行・右文社発売、明治27年4月)を発見。古本横丁の和本400円均一台に紛れていた。表紙が本来の表紙と異なっているので、「わ…

西村賢太が集めていた藤澤清造寄稿の宗教雑誌『宇宙』の凄さー北村兼子も執筆ー

『西村賢太旧蔵資料目録』(石川近代文学館、令和6年3月)を読んでいて最も驚いたのは、「雑誌」の中に「宇宙 2(11),3(6),4(5) 宇宙社 1927.11.1-1929.5.1」があったことだ。『宇宙』は、「日本大学総長山岡萬之助が主宰した宗教雑誌『宇宙』(宇宙社)と大東…

佐野繁次郎装幀の『昭和六年新文藝日記』を持つ西村賢太と西村義孝

個人の蔵書目録を読むのが好きで、図書館が所蔵する個人文庫の目録を集めたことがあった。多くは早川図書というその手の専門店から入手したものである。 さて、『西村賢太旧蔵資料目録』(石川近代文学館、令和6年3月)を読んでいたら、色々発見があった。藤…

創造社同人の鄭伯奇と京都帝国大学文学部心理学教室の岩井勝二郎講師

先日善行堂が開く前に竹岡書店をのぞいてきた。前から絵葉書が少しあるのは知っていたがチェックしていなかったので、今回実逓便(実際に投函された郵便物)を探してみた。そうすると、何と「帝国大学心理学教室 岩井勝次郎先生」宛(昭和3年4月17日消印)が…

昭和3年古書趣味の会展覧会に一條成美の原画や『法藏館蔵版並発兌書目』(明治25年)

天地書房なんば店で『古書趣味の会展覧会出品目録』(古書趣味の会、昭和3年8月)を購入。20頁、1,900円。展観品目の一覧を挙げておく。 35名の同人の中に後に斎藤昌三の書物展望社を経て昭森社を興す森谷均と思われる名が見える。大阪時代の森谷については…

来年大阪歴史博物館で特集展示「泉布観ー大阪最古の洋風建築ー」開催

『明治天皇記念館泉布観記録』(大阪市役所教育部、昭和10年11月)が出てきた。これもどこで買ったことやら。国会図書館にはない。写真10頁と本文28頁の冊子。本文13頁には、泉布観は明治3(1870)年造幣局創設に際し応接所として建設されたとある。しかし明…

昭和2年『書史』を創刊した書史会の青木平七と南木芳太郎

『書史』第1冊(書史会事務所、昭和2年2月)が出てきた。いつどこで買ったことやら。古本横丁かCosyo Cosyoの和本均一台から掘り出したか。28頁、300部限定の193番。表紙の右上に「大正十四年一月創立/昭和弐年二月二十日発行」とある。1行目は通常印刷納本…

法藏館図書目録大正15年版と令和6年版

令和6年版の『法藏館図書目録』が出ていたので貰ってきた。「法藏館の歩みと理念」から一部を引用しておこう。 慶長年間(1596-1615) 大坂城落城のころに本家丁子屋初代西村九郎右衛門、大坂より京都へ転居。のち五条橋通扇屋町で一向宗(浄土真宗)の仏書…

日本基督室町教会へ通う谷口善之と京大YMCA

先々月だったか臨川書店の古書バーゲンで『地塩洛水:京都大学YMCA百年史』(京都大学キリスト教青年会、平成15年3月)を500円で入手。同書の「京大YMCA百年史年表」で、谷口善之が理事長(昭和7~9、14~19、28~29、33~34、36~41年)や副理事長…

尼崎市立図書館員永尾利三郎と難波橋ライオン像の天岡均一

先日大阪歴史博物館の特集展示「ーわたしが難波橋のライオン像をつくりました!!ーなにわの彫刻家・天岡均一没後100年記念展」(7月8日まで)を観覧。《金剛力士像》(明治44年)のキャプションに注目した。 (略)均一の俳友で尼崎市立図書館員であった永…

早稲田大学初代図書館長市島春城と伊藤仁斎の旧宅

これも噂の南部堂から平安蚤の市で購入した一品。大正8年8月23日付けで、発信者の「春城生」は、大正6年に早稲田大学初代図書館長を辞した市島春城(本名謙吉)と思われる。ナンブさんなので安く、500円か1,000円だったか。 宛名の小田嶋彦太郎は、『早稲田…

種字彫刻師君塚樹石と平楽寺書店の井上四郎

市谷の杜 本と活字館の「活字の種を作った人々」展が6月2日に終了した。印刷博物館には何度も行っているが、本と活字館はまだ行ったことがない。同展では、種字彫刻師の一人として君塚樹石を紹介していたので、観に行きたかった。 私が君塚を知ったのは、平…

噂の南部堂から武井武雄の『がり通』18号(榛の会、昭和19年1月)

今年は武井武雄生誕130年記念ということで、長野県岡谷市のイルフ童画館で「新コレクション展」を6月17日まで開催中である。そこで、今回は4月の平安蚤の市で南部堂から入手した『がり通』18号(榛の会、昭和19年1月)を紹介しよう。南部堂は東京古書会館の…

関西初の活人画に出演した金子錦二と虎屋町小文ー井上章一先生が選んだ京谷啓徳『凱旋門と活人画の風俗史』(講談社選書メチエ)ー

朝お出かけすると、たまに日文研へ出勤途上と思われる井上章一所長とすれ違うことがある。その井上先生が、講談社選書メチエ創刊30周年記念の冊子『執筆者150人が選んだ524+冊:1994~2024年ベストセレクション』(講談社)の「私が選ぶ選書メチエの『この…

南方科学研究所設立に奔走する羽田亨京都帝国大学総長と民族研究所の岡正雄

大佛次郎の戦時中の日記*1に戦後奈良教育大学教授となる地理学者林宏とジャカルタの南方文化研究所が出てくることは、「戦時下ジャカルタで南方文化研究所を開設する地理学者林宏ー大佛次郎『南方ノート』からー - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところで…

大正大学出版部最初の刊行物『華鬘』創刊号(大正15年11月)

昨年11月西宮神社で第1回えべっさん古本まつりが開催された。下鴨納涼古本まつりを意識したものであったようだ。遠方なので、初日のみ参加した。大盛況で初回から成功と言ってよいだろう。ただ、合同レジと各店レジのエリアに分かれていたのは、ややこしかっ…

『近代仏教』31号に『「日本心霊学会」研究』(人文書院)の書評(木村悠之介)

昨年5月東北大学でシンポジウム「近代仏教史とオカルト研究ー吉永進一が残した課題の可能性ー」が開催された。京都でやってくれたらのぞきに行けたが、仙台では中々厳しいものがあった。しかし、幸い先月刊行された『近代仏教』31号(日本近代仏教史研究会)…

最後まで光り輝いた金尾文淵堂の京都時代ー幻の与謝野晶子『源氏五十四帖:歌集』ー

石塚純一『金尾文淵堂をめぐる人びと』(新宿書房、平成17年5月)は、金尾文淵堂の歴史を次の4期に分けている。 第1期(明治32~37年) 第2期(明治38~43年ころ) 第3期(明治44~大正12年ころ) 第4期(大正13~昭和22年) そして、第4期について次のよう…

竹内文献の信奉者で藩札狂の前田惇と東京美術学校長正木直彦

別件で東京美術学校長正木直彦の『十三松堂日記第1巻』(中央公論美術出版、昭和40年9月)を読んでいたら、自他共に認める藩札狂だった前田惇*1らしき人物を見つけた。何回も読んだ日記だが今頃気付いた。 (大正十三年) 六月二十五日 晴 出勤 楮幣蒐集家前…

藪内清を小林信子の静坐社に連れて行った曽我了雲

近代仏教研究者で曽我量深(そが・りょうじん)を知らない人はいないだろう。一方、同じ曽我でも曽我了雲(そが・りょううん)を知る人はほとんどいないだろう。私も最近まで知らなかったが、「静坐社に参加した福田與の旧蔵書が古書市場にー吉永進一さんの…

京都大学新聞の「特集きょうの妖怪Vol.3」に「北白川の仙人『白幽子』」

臨川書店の古書バーゲンに行った帰りに、京大生協ショップルネへ寄り道。入り口脇に『京都大学新聞』の無人販売台があってふと見ると、5月1日・16日合併号掲載の「特集きょうの妖怪」の第3回が、「北白川の仙人『白幽子』」。そんな連載があったのか、しかも…

京都帝国大学の学知を支えた須磨勘兵衛の内外出版印刷ー井上書店の追悼にー

今年も無事みやこめっせの古本まつりに行けました。目録の巻頭に井上書店の井上道夫店主の追悼文が載っていて驚きました。略歴を要約すると、 昭和21年4月 今出川通吉田神社鳥居の西側に父小三郎が開業 昭和26年7月 現在地に移転 昭和28年12月 誕生 昭和52年…

唯書房から京都中心の合同古書目録『書之燈』

一昨日(5月17日)の大阪古書会館「たにまち月いち古書即売会」では、「南木」宛の葉書が挟まった雑誌『上方趣味』を発見。これは、南木芳太郎だろうとホクホクと購入。詳細は、もう少し調べてからアップします。 今回は、唯書房から500円で購入した古書目録…

河合卯之助の『窰:向日窯陶誌』から見た河合山脈ー小川千甕・川西英・寿岳文章・安田青風・山田一夫ー

特定非営利活動法人向日庵の機関誌『向日庵』7号(向日庵、令和6年3月)を御恵贈いただきました。ありがとうございます。「編集後記」では、寿岳文章を論じた記念碑的な2著として、高木博志編『近代京都と文化:「伝統」の再構築』(思文閣出版、令和5年8月…

戦時下ジャカルタで南方文化研究所を開設する地理学者林宏ー大佛次郎『南方ノート』からー

『日本民俗学大系第1巻』(平凡社、昭和35年4月)の小川徹「民俗学と地理学、とくに人文地理学との関係」は、「三 民俗学史上における人文地理学的方法」の付記として、小寺廉吉*1、林宏、山口弥一郎、千葉徳爾らの民俗学的活動に触れなかったことに言及して…

広隆寺弥勒菩薩半跏思惟像を観た京都帝国大学生の絵葉書:オールドブックス ダ・ヴィンチから

碧海寿広『仏像と日本人:宗教と美の近現代』(中央公論新社、平成30年7月)105頁に、町田甲一が戦時下に京都の寺を巡ったとある。 戦後日本を代表する美術史家の一人である町田甲一(一九一六~九三)も、東京帝国大学の学生時代に、友人と奈良に近い京都の…

古書あじあ號で買い逃した宗教雑誌?『復興』と買ってしまった婦人雑誌『日本婦人』ー日本婦人新聞社の衣川延治とはー

四天王寺春の大古本祭りが終了しました。今回古書あじあ號が目録参加のみ*1で、会場は不参加でした。体調がお悪いようです。御回復され、次回を期待しています。あじあ號というと、均一台で買い逃した本を思い出す。「買った本より買い逃した本の方がいつま…

武井武雄刊本作品友の会本会員を目指す我慢会の好古家や宝塚の女優達

先日1時間遅らせて行った京都古書会館の古本まつりで見つけたもう1枚*1の葉書。武井武雄から北海道弟子屈の木下某宛で、昭和41年6月7日付けである。文面は、 ・色々と委しい報告を拝見したこと ・近く(多分8月下旬)我慢会への特頒があり、今度のは一寸豪華…

『古本イエーZINE』8号に「京都市立絵画専門学校の関係者が結成した美術劇場とカフェーカナリヤ」寄稿

みやこめっせの古本まつりをウロウロしてたら、狂言屋こと齊藤さんの奥さんと遭遇。『古本イエーZINE』8号(狂言屋、令和6年4月)をいただいた。ありがとうございます。拙稿「京都市立絵画専門学校の関係者が結成した美術劇場とカフェーカナリヤ」が載ってま…

京都新聞THE KYOTO「京都・左京区研究」で「からふね屋印刷所」の回を希望

先日の「たにまち月いち古書即売会」(大阪古書会館)では、久しぶりに古本横丁の和本均一400円台から購入。そのうちの1冊が、杉浦三郎兵衛編『雲泉荘山誌:家蔵松会板之書目』別冊第4(雲泉荘、昭和9年7月)である。「はしがき」によれば、5月に知友に乞わ…