2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧
戦時中の古本屋に関するエピソードとして最も印象的なのは、古本の物々交換である。古本を持っていかないと売ってくれなかったという話である。たとえば、山下武は旧制中学に通った戦時中の5年間は極端に本のない時代だったとして、『古書縦横』(青弓社、昭…
金沢文圃閣の『日本陸軍『各部隊文庫図書目録』ーー帝国軍隊の読書装置』がtwitterで話題になった。1910年頃における宇都宮、熊谷、佐野連隊などの陸軍における『各部隊文庫図書目録』の復刻である。こういう特殊な環境下の読書状況は、まだまだ研究が進んで…
高橋箒庵の日記『萬象録』、まさかの河口慧海が登場。河口の研究者は気付いているだろうか。巻7(思文閣出版、平成2年7月)から引用しよう。 (大正八年) 七月十一日 金曜日 半晴/寒暖計七十七度 [河口慧海師の西蔵経文翻訳] 午前、河口慧海師来訪(略)三、四年…
ミネルヴァ日本評伝選は200冊刊行され、第Ⅵ期に入った。私は、過去何度か同評伝選をネタに使わさせていただいた。 ・「大日本トンデモ評伝選 - 神保町系オタオタ日記」 ・「ミネルヴァ日本評伝選への期待 - 神保町系オタオタ日記」 ・「夢かうつつか幻のミネルヴ…
高橋箒庵の日記『萬象録』巻1にビゲローという道具商が出てくる。 (大正元年) 九月十六日 (略) [仏国人ビゲロー氏の日本美術品に関する感想] 午前京都の林新助氏*1、仏国巴里の道具商ビゲロー氏を伴ひて来宅せしに就き、所蔵品数点を観覧に供せり。ビゲロー…
たまたま『紅葉舎類聚ーー名古屋・富田家の歴史ーー資料編』(富田企業、昭和52年9月)の「富田家日記」を読んでいたら、大英博物館のローレンス・ビニヨンが出てきた。富田は名古屋の財界人、ネットの「コトバンク」を見られたい。同日記は富田家の執事・高木…
2月5日京都新聞に行司千絵記者が京都国際マンガミュージアムで開催中の「「趣味の王さま」三田平凡寺、令和に復活す!? | 京都国際マンガミュージアム」を紹介していた。早速見てきたが、孫の夏目房之介氏ら遺族が提供した平凡寺の旧蔵書、自作絵葉書やスク…
何年か前に、かわじもとたか氏から古書目録『ちか』4号(幽学荘舎、昭和14年5月)をいただいた。ありがとうございます。この目録は、『日本古書通信』平成12年9月号の二見和彦「『ちか』という古書目録」によれば、巌松堂の波多野重太郎が還暦を期に引退し、大…
佐藤優氏が超訳を出した『日米戦争未来記:小説』(大明堂書店、大正9年5月)の著者樋口麗陽。大正5年樋口が出した翻訳書をめぐって一騒動あったようだ。高橋箒庵『萬象録』巻4(思文閣出版、昭和63年3月)から。 (大正五年) 七月二十二日 土曜日 (略) [日本征服…
大正10年5月柳田國男は横浜からアメリカ、フランス経由でジュネーブへ向かった。国際連盟委任統治委員会委員に選ばれたためである。この道中の動向は、家族や知人宛に出された葉書・絵葉書などで追うことができるので、『柳田國男全集』別巻1の年譜で詳細に…
高橋箒庵(義雄)の日記『萬象録』巻8にとうとう民間精神療法家がデテキター\(^o^)/ (大正九年) 十月十四日 (略) [印度伝来の精神統一法] 食後、麻布我善坊山本栄男方に赴けり。今夕は印度に十七ヶ年間滞在して精神統一法を研究し、帰朝後精神統一会なる者を…
岩波書店の伝統的看板たる『漱石全集』の定本版も着々と刊行され、近く完結予定である。かつて、紅野敏郎先生が旧全集の書簡篇に書いた注について、私は「紅野敏郎先生の図書館員知らず - 神保町系オタオタ日記」と書いたことがある。紅野先生に「図書館員知…
『昭和天皇実録』の人名索引を見てたら、驚きました。「東京帝国大学附属図書館司書小山栄三 - 神保町系オタオタ日記」や「日本大学総長山岡萬之助が主宰した宗教雑誌『宇宙』(宇宙社)と大東信教協会 - 神保町系オタオタ日記」で言及した神父を辞めて東京帝…
昨年11月に人文研で開催されたシンポジウム「みることの広がりーー1910-20年代の展覧体験ーー」は、特に竹内幸絵同志社大学教授の報告が興味深かった。 「ショーウィンドーはなにをみせたのかーー黎明期の全国的な流行から考える」と題し、明治末から大正初…