神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

寸葉会で見つけた小川千甕表紙絵の句誌『蕪』と岡田熊之助


 9月20日は寸葉会(絵葉書、地図、切符、チラシなど紙ものの即売会)へ。例によって皆様開場するや、ひげ美術に殺到。私は主催の寸葉さんに敬意を表して、寸葉さんの所からスタート。今回は石黒修宛葉書が多く、そこから3枚購入。他には、池田文痴庵の某宛葉書など。
 今日は、ひげ美術で見つけた小川千甕表紙絵の『蕪』62号(蕪吟社、昭和7年10月)を紹介しよう。鳥取県八頭郡山郷村の岡田熊之助が発行する句誌である。
 ひげ美術が出品するビニール袋に入れた紙ものは原則として1,000円である*1。例えば、山内神斧(山内金三郎)宛書簡群でも原則1,000円である。そのため、時に「どひゃあ」というような物が1,000円で買えたりする。逆に本誌の如き地方の句誌のような100円均一台にあっても見向きもされない雑誌でも1,000円ということになる。しかし、私は、写真のとおり表紙に「小川千甕筆」とあったので購入。「楠部南崖の俳誌『変人』(俳華堂)と小川千甕ー『縦横無尽』(求龍堂)の「小川千甕年譜」「小川千甕書誌」への補足ー - 神保町系オタオタ日記」で挙げた知られざる千甕の表紙絵の雑誌『変人』(楠部南崖編輯・発行)を見つけているオタどんが再び未知の千甕表紙絵の雑誌を発見かと買う気になったわけである。
 『縦横無尽:小川千甕という生き方』(求龍堂平成26年11月)に載る詳細な「小川千甕書誌」(橘川英規編)を調べてみたが、やはり記載はなかった。所蔵する図書館は皆無で、日本現代詩歌文学館にもない希少な雑誌のようだ。編輯兼発行人の岡田は、『現代俳家人名辞書』(素人社書店、昭和5年12月)には雅号「守静」で立項され、明治14年鳥取県生まれの植林業者である。『蕪』を大正14年4月に創刊*2
 千甕と岡田の関係は不明である。ただ、本誌の「緋蕪集」*3の頁に「村上鬼城先生選」の作品に続いて、「楠部南崖先生は満洲方面へ御旅行中の為め、選巻未着、次号に発表します」との注意書きがある。千甕は、前掲書の「小川千甕年譜」(増渕鏡子編)昭和2年の条に南崖と九州や北海道・樺太旅行をしたとあるし、前記のとおり南崖発行の『変人』の表紙絵・題字を描いていて、千甕と南崖は親しかった。そのため、岡田は南崖経由で千甕と知り合ったのかもしれない。

*1:そのほかに実逓便の葉書の山は、1枚100円。これも掘り出し物多し。

*2:『蕪』第62号は月刊誌で昭和7年10月発行なので、逆算すると昭和2年9月創刊の筈である。休刊していた時期があるか、月刊でなかった時期があると思われる。

*3:裏表紙に載る『蕪』第64号俳句募集の案内で、「緋蕪集」は「小川千甕先生選」と「山口花笠先生選」である。