神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2005-11-01から1ヶ月間の記事一覧

関野貞・伊東忠太

それから今国宝の調査会にも関係しておりますが、この (明治)33年に正倉院の御物を拝見に行きましたとき に、ついでに奈良の方を少し見たことがあります。その 時に関野貞君が奈良県の技師であって、そうして伊東忠太 君もちょうど奈良へ来合わせた。こ…

井上円了

小石川の伝通院の横に○○庵というものがあって、 今は沢蔵主稲荷の所の通の真中に大きな榎が一本 ある。その下にあった庵でありますが、そこへ( 明治)26年の11月頃から杉浦重剛さんを中心 に、井上円了・市村瓉二郎・私等が時々寄って天下 国家の話合い…

『明治の翻訳王 伝記 森田思軒』(谷口靖彦著)から

その翌(明治)30年の秋、思軒は急死するが、その臨終直後の写真を、(岡倉)天心は親交のあった友人の写真師、小川一真に頼んで撮影をしてもらっている。また。友人代表として黒岩涙香、藤田隆三郎らと葬儀を執行した。思軒は36歳の短い寿命だったが、…

『父荷風』(永井永光著)から

葬儀のときに、私は遺品の書籍を盗難から守るため、奥の部屋の本棚に五寸釘を打ちつけました。この作りつけの本棚は安普請で、裏はベニヤを張っただけのものでしたから、雨が漏って本がしみだらけでした。しかし『断腸亭日乗』の原本が入っていたので、これ…

『東大黎明期の学生たち−民約論と進化論のはざまで−』の「展示資料目録」中「洋書肆の書棚(服部撫松『東京新繁盛記録』より)」から

『東京新繁盛記』の「書肆、洋書肆、雑書店」の項には、書店の書棚に並ぶ書籍を列挙して、「正面に維新斯徳剌(いぼすとる)氏の大字書を安置し、(中略)」とある。ここではいずれも明治7年前後に出版された書籍で、その書店の書棚を再現してみよう。すな…

『家の記憶 第一巻 明治篇Ⅰ』(藤森照信・増田彰久著)中「旧徳川頼倫邸」から

大正十二年の関東大震災の時、東京帝国大学の図書館が全焼の憂き目にあうと、紀州の殿様はその再建のため南葵文庫の書籍をそっくり寄贈してしまった。 現在、東京大学の総合図書館閲覧室に入ると、壁の上の方に南葵文庫と書かれた大きな額が掲げられているが…

『考古学者はどう生きたか−考古学と社会−』(春成秀爾著)中「後藤の処世術」から

敗戦の時、後藤は国学院大学文学部の教授であった。ところが、10月に再開した国学院大学の教員名簿から後藤の名が消えている。教授職をこの年の9月には辞していたことになる。(中略) 後藤がもっともおそれたのは、大東亜共栄圏の建設を会の方針にかかげ…

『文庫本福袋』(坪内祐三著)中「谷沢永一『私の「そう・うつ60年」撃退法』」から

ところで谷沢氏の代表作といえば読書コラム『紙つぶて』であるが、私はかつてある編集者から、谷沢氏が毎週毎週、あのクオリティーの高い、しかもわずか六百字のコラムを、書き続けることによって、「うつ」病が悪化したと聞かされ、それを信じたことがあっ…

『松本清帳と木々高太郎』(山梨県立文学館)から

私は33歳のころまで乏しい蔵書を何度か古本屋に売ったことはあるが、この「小説研究十六講」だけは手放せず、敗色濃厚な戦局で兵隊にとられたときも、家の者にかたく保存を云いつけて、無事に還ったときの再会をたのしみにしたものだ。今も手垢にまみれた…

『前橋が生んだ現代小説家−司修・豊田有恒・樋口有介が描いた前橋と作品−』(前橋文学館)中「化石化したユートピア、前橋」(書き下ろしエッセイ)から

百冊以上の本を書いたが、前橋が登場する物語は多くない。 気恥ずかしくて、書けないのである。シリーズで書いていたヤマトタケルでは「毛の国のヤマトタケル」など、予告したこともあるのだが、実現しない。たぶん、永遠に書けないだろう。僅か数編だけ、前…

平凡社新書『書店の近代』(小田光雄著)中「円本時代と書店」から

文学者や編集者の回想は無数にあるのだが、出版社の営業部の人間によって書かれた出版史は、牧野武夫の『雲か山か』の一冊しかないように見える。牧野武夫は岡茂雄の『本屋風情』にも登場しているが、この「出版うらばなし」とサブタイトルにある『雲か山か…

岩波新書『日本近代史事始め』(大久保利謙著)から

国会図書館で外部の専門家に委嘱していた図書評価委員は、和書は朝倉屋でした。その評価をまた、収蔵者として検討するわけです。頼んでおくと、憲政資料室向きの史料を集めてくれるんです。たとえば旧華族会館の文書を建物が壊されたとき、屑屋に売ったもの…

『私の神保町』(紀田順一郎著)から

セドリとは業者が仲間の店をまわって安いと思うものを探し出し、”向き”の店へ売るか市場へ出品して口銭をとることで、専門家としてはほとんどいなくなってしまった。 (参考)初出は1966年。今や、にわかセドラーだらけとなってしまった・・・ なおかつ…

なにわ塾叢書『たいまつの火 近代史研究から照らし出されるもの』から(梅渓昇著)

図書館にしても、外国の図書館員は非常にハイレベルで、中には教授よりよほどしっかりしている人もいます。日本の図書館も若い人をもっと外国へ留学させて、そういう優れたライブラリアンを育てるべきだと思いますが、なかなかうまくいきません。 日本英学史…

『弘文荘 反町茂雄氏の人と仕事』(文車の会編)中「烈しい一生」(八木壮一著)から

東大で新人会に入っておられたかどうか、私ども下司の世界では関心の在るところであった。新人会名簿には、反町茂雄の名はない。しかし、最近刊行された石堂清倫著『中野重治と社会主義』にはカウツキーの「経済学原理」読書会に反町さんは熱心に通っていた…

『青年小泉信三の日記』(小泉信三著)から

明治44年1月24日 教員室で永井荷風さんに阿部から頼まれた「ふらんす物語」の事を聞く。 同月30日 今日「ふらんす物語」の「巴里のわかれ」「黄昏の地中海」と「三田文学」所載、国枝史郎(原注:1886−1943。『神州纐纈城』の作者も、この年…

『文庫本福袋』(坪内祐三著)から

ようやく寿岳文章『新曲』が文庫本で読める日がやって来た。 いよいよ私はこの大古典を通読できる出来るのだろうか。とりあえずまず、第Ⅰ巻の「地獄篇」を買ってみることにする。 坪内祐三氏が、『神曲』を通読できるのも大賀のおかげということになるか。

京都大学広報誌「紅萠第6号」中「附属図書館のモノ ダンテ研究への多大な貢献」(赤井規晃著)から

附属図書館が所蔵する文庫のひとつに旭江(きょっこう)文庫と呼ばれるダンテ文献のコレクションがある。日本における民芸運動の父・柳宗悦デザインのex libris(蔵書票)でも有名なこの文庫は、市井のダンテ学者大賀壽吉(おおがじゅきち)(1865〜19…

岩波文庫『新編明治人物夜話』(森銑三著)中「夏目漱石と文芸委員会」から

『ドンキホーテ』などという古めかしいものの翻訳は、島村抱月には、ありがたくない仕事であった。それで了解は得て置いたのであろうが、片上伸に代訳せしめて、やや後れはしたけれども、その方の訳も完成を告げ、これは植竹書院から刊行した。菊版の大冊で…

岩波新書『国文学五十年』(高木市之助著)から

いつだったか、三高入学の時にどういう本を読んだか、入学試験の準備に何をやったかということをアンケート風にさる受験誌に書かされた。末川博さんと金森徳次郎さんと私の三人が書いたんですが、三人とも受験時代に何を勉強したかということよりもほかの話…

平凡社ライブラリー『[定本][文藝]発禁本』(城市郎著)の「続発禁本」から

一図書館員のブンザイで、国から命令されたわけでもないのに風教上宜しくないとばかりに、ある本の一般閲覧を禁止するということは、それが虚妄であろうとなかろうと戦後の民主主義の今日ではあり得ないことですが、上野図書館の当事者が新時代の男女学生の…

出久根達郎

読売新聞朝刊(11月3日付け大阪版) 少年時代、貧乏で本を買えなかったため、移動図書館に父親が連れて行ってくれた。1人3冊の本を架空名義を使ってまで借り、漱石全集や江戸川乱歩全集を読んだ。

立花隆

文春文庫『ぼくはこんな本を読んできた』(立花隆著)から (小学校)3年になった頃、近所の人から江戸川乱歩の探偵小説を見せて貰ったのが病み付きになり、それ以来探偵小説、冒険小説、推理小説、怪奇小説、剣豪小説、捕物帖のたぐいに熱中し次から次へと…

荒俣宏

中公文庫『稀書自慢 紙の極楽』(荒俣宏著)から だから、今でも思い出せる最古の記憶は、鶯谷の古本屋のうす暗い電灯の下で、山川惣治の『少年ケニア』だとか江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズ、それに手塚治虫の『ジャングル大帝』だとかを掻きまわして…

鶴見俊輔

「読書年譜」(『鶴見俊輔集12 読書回想』収録)中「1932年(昭和7年)」から それらよりももっと心をひかれたのは江戸川乱歩の小説で、『人間豹』『緑衣の鬼』が心に残っている。それらは性的な関心をひきつけたのだが、邦枝完二『お伝地獄』もうそ…

青木正美

『古本屋五十年』(青木正美著)から 私の経験でも昭和22、3年の中学生の頃は、下町の古本屋を歩き廻り、やっとためた二百円の保証金を積み、『少年講談』や江戸川乱歩の『怪人二十面相』などを借りて読んだ。

川村湊

集英社新書『日本の異端文学』(川村湊著)から 寝床にこっそり持ち込んで、夢中になって読んだ江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』や『人間椅子』(ともに1925年)や『パノラマ島奇談』(1926年)といった小説は、確かに「異端」の匂いに満ちていた。

寅書房

『雑読系』(坪内祐三著)から たぶん三千冊以上はある私の文庫コレクションの中で、この一冊というベスト1を決めるのは難しいけれど、ベスト10を選ぶなら、その内の一冊に絶対入るのが、旺文社文庫の小山清『落穂拾い・雪の宿』だ。 巻末をめくると「寅…

古書現世

『三都古書店グラフティ』(池谷伊佐夫著)から 神保町で書誌関係といえば、小宮山書店、梓書房、波多野書店あたりが揃っている。早稲田なら古書現世か。

天牛書店

『本はこうして選ぶ買う』(谷沢永一著)から (市は)取り引きだけでなく、業者にとっては知識を仕込む道場とも言えよう。萩ノ茶屋に出店している津田喜代獅さんは、私は市を欠かしたことはおまへんで、と自慢していた。確かに然りで、市へ一遍も出たことの…