神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2019-01-01から1年間の記事一覧

大正5年10月に開催された臨済宗大学(現花園大学)学長釈宗演の碧巌満講会

年末ギリギリに『図書』1月号を確保。長谷川櫂「悩める漱石」を読むと、氏の曽祖母が円覚寺に縁があり、大正2年夏管長だった釈宗演が曽祖母に与えた書が残っているという。そして、 夏目漱石は明治二十七年(一八九四年)暮れから翌年正月の十数日間、円覚寺で参…

聴竹居の建築家藤井厚二の原点ーー東京帝国大学を卒業直後に新式日本倉庫を提案ーー

数寄者高橋義雄の日記を色々使ってきたが、今回は藤井厚二。意外にも同日記には建築家も何人か出てくるが、今年京都文化博物館で「太田喜二郎と藤井厚二ーー日本の光を追い求めた画家と建築家ーー」展が開催された藤井にしよう。アサヒビール大山崎山荘美術館…

日本大学総長山岡萬之助が主宰した宗教雑誌『宇宙』(宇宙社)と大東信教協会

先日の人文研における古本バトルに引っ張り出されて、『宇宙』など3誌を紹介。『宇宙』についてはあまり調べずに臨んでしまったが、その後色々判明したので補足しておこう。『宇宙』8巻3号(宇宙社、昭和8年3月)を見つけたのは、今年の知恩寺の古本まつりに行…

大正14年三村竹清が目撃した柳田國男に同行する謎の西洋人の正体が判明

『柳田國男全集』別巻1の年譜を読んで最も驚いたのは、次の記述。 (大正一四年) 一一月 このころの秋の一日、国際連盟で知り合いとなったオーストラリアから来日中のウィルソンが、工業が盛んな近郊の農村を見たいというので、為正を連れ八王子市内から百草…

大幅に増補された柳田國男詳細年譜を楽しむ

『柳田國男全集』別巻1(筑摩書房、平成31年3月)は、小田富英氏作成の詳細年譜。ざっと読んでみた。『別冊 柳田国男伝 年譜・書誌・索引』(三一書房、昭和63年11月)も随分詳細な年譜と思っていたが、この81頁の年譜に対し今回の年譜は驚くべき5倍の415頁。追…

仏教者としての寿岳文章と父鈴木快音

ここに文庫櫂で入手した寿岳文章の年賀状がある。宛先は福井県大飯郡青郷村(現高浜町)にある中山寺(なかやまでら)の住職であった杉本勇乗宛である。昭和27年、29年と30年の3枚。うち昭和27年の年賀状には、「(略)このバビロンのやちまたの地獄へたゞ□墜ちてゆ…

東伏見邦英(久邇宮邦彦王第3王子)旧蔵の高島米峰『信ずる力』(丙午出版社)

9月の「京都まちなか古本市」では、当初参加予定になかった書林かみかわが急遽参加ということで、突撃。かみかわの棚には500円均一で仏教書等が出ていた。高島米峰や高楠順次郞からの献呈本が何冊か出ていたので、そのうち高島『信ずる力』(丙午出版社、昭和11…

高山樗牛ゆかりの龍華寺で近代仏教史講演会「仏教と学知」

鈴木繁三『わが郷土清水』(昭和37年5月初版・54年8月7版)という戸田書店が発行した本がある。「はしがき」に「中学生でも楽に読める程度」とあるが、私は小学生の時に初めて読んだと思う。ボロボロになるまで読んだが、今手元にあるのは綺麗な本である。昭和54年…

大正6年慶應義塾図書館の閲覧室で開かれた福澤先生十七年忌晩餐会

福澤諭吉は明治34年2月3日逝去。今なお慶應の塾生・塾員(卒業生)から福澤先生と呼ばれているようだ。「日本の古本屋メルマガ」で「『図書館絵葉書』を発見した人」として紹介された書物蔵氏も慶應文学部卒で塾員である。その書物蔵氏は、大学図書館で学生嘱託と…

柳田読みの柳田知らずーー『柳田國男全集』第34巻中「旅の文反故」解題への補足ーー

『柳田國男全集』34巻(筑摩書房、平成26年3月)に「旅の文反故」が収録された。三村清三郎が写しを所蔵する*1「姉上様」宛の柳田の書簡を胡桃沢友男(胡桃沢勘内の長男)が『信濃』30巻1号(信濃史学会、昭和53年1月)に発表したもの*2を収録している。解題を担当した…

向日庵(こうじつあん)公開研究会「寿岳文章一家 その人と仕事を追う」

向日市立図書館・向日市文化資料館開館35周年記念特別展として、12月1日まで「昭和モダンと向日町」が開催された。向日町に暮らしたり、縁があった昭和の文化人(笹部新太郎、河合卯之助、寿岳文章・しづ、渡邊武)の活動や戦前にあった向日町劇場にスポットを当…

裏表紙の社章から見た金港堂と博文館

「蔵書印/出版広告」さん(@NIJL_collectors)がtwitterでやってくれました。博文館の出版物における裏表紙に印刷された社章の変遷。私も「戦前期における裏表紙に刷られた出版社ロゴマークの美学 - 神保町系オタオタ日記」で2種類紹介したが、10種類ほどもあるよ…

大正4年における富士屋ホテル文庫の蔵書

名著永嶺重敏『の誕生 明治30年代の活字メディアと読書文化』(日本エディタースクール出版部)が刊行されて15年。そろそろ文庫化してほしいものである。出すならちくま学芸文庫か講談社学術文庫か。解説はドカーンと書物蔵氏を抜擢してほしいなあ(*_*) わしも…

明石順三による灯台社の機関紙『黄金時代』(後『なぐさめ』)の発行部数

今月7日(土)の人文研ワークショップ「キリスト教系「新宗教」研究の新展開」で山口瑞穂「明石順三と灯台社ーー外来のキリスト教系新宗教における文書伝道と「翻訳」ーー」があるので、予習(?)で稲垣真美『兵役を拒否した日本人ーー灯台社の戦時下抵抗ーー』(岩波新…

澁川驍の詳細年譜・著作目録が索引付きで刊行されていた

図書館で山﨑柄根編著『昭和の作家澁川驍 年譜・著作目録』(研成社、令和元年8月)を発見。偶然にも同日書物蔵氏も書店で見つけたらしい。戦前は帝国大学新聞社や東京帝国大学図書館、戦後は国会図書館等に勤めた澁川。拙ブログでも話題にしたことがある人物…

吉野作造の旧友としての真山青果ーー野村喬『評傳眞山靑果』への補足ーー

『真山青果とは何者か?』(星槎グループ発行、文学通信発売)中、青木稔弥「青果の多彩なる人脈」は、青果の演劇作家、江戸文学研究者の側面に関わる人脈について、的確にまとめたものである。しかし、仙台出身者としての側面については、紙数の関係で略されて…

芸艸堂が発行した謎の西洋芸術叢書

寿岳文章が『美』23巻3号(芸艸堂、昭和4年9月)に「ブレイクの画論」を書き、それが西洋芸術叢書として刊行されたらしいことは、「壽岳文章と芸艸堂 - 神保町系オタオタ日記」で紹介した。百万遍知恩寺の秋の古本まつりで『美』のその号を拾った。玉城文庫の1冊20…

朗報!『昭和前期蒐書家リスト 趣味人・在野研究者・学者4500人』が金沢文圃閣へ注文可に

今日の京都新聞にはビックリ。1面に松本清張が「火の路」(原題「火の回路」)執筆に際して、手紙で教えを請うた京都の古代史家藪田嘉一郎に関する記事。連載開始直後の清張の手紙には、「『藪田ゼミナール』に入っているような気持がします」とあるらしい。詳細は、…

小林法雲(小林法運?)の気合術を「軍艦金剛航海記」でステルマする芥川龍之介

栗田英彦・塚田穂高・吉永進一編『近現代日本の民間精神療法 不可視なエネルギーの諸相』(国書刊行会)は、柄谷行人氏の書評も朝日新聞に出たし、好評のようだ。今回は、同書の「民間精神療法主要人物および著作ガイド」関係の話。一時期は数万人いたと言われる…

西荻モンガ堂でかわじ・もとたか企画「個人名のついた研究会会誌の世界」展

岡崎武志さんに「だまされて」古本病にかかってから古書店を開業するまでの経緯が『週刊朝日』で紹介された西荻モンガ堂。そこで12月2日(月)から22日(日)まで(水曜休、12時~20時)「個人名のついた研究会会誌の世界」展が始まる。かわじ・もとたかさんの企画で、…

清野謙次教授による窃盗事件の報に接した浜田耕作京都帝大総長の心情

森さんのコメントで思い出したが、最近刊行された『羽田亨日記』(京都大学大学文書館、平成31年3月)に医学部教授清野謙次がしでかした経典等の窃盗事件に関する記述がある。本件については、「『長與又郎日記』(小高健編)から - 神保町系オタオタ日記」で東…

「蒐める人」を4500人も蒐めちゃった『昭和前期蒐書家リスト 趣味人・在野研究者・学者4500人』が凄すぎる件

自称「人間グーグル」のわしが、戦前の趣味人、コレクター、奇人などを調べる時にまずお世話になるのが、反町茂雄『一古書肆の思い出』全5巻(平凡社ライブラリー)である。ただし、人名索引があって便利ではあるが、各巻ごとの索引の上、著名なコレクターしか出…

では小林昌樹「戦時期ガラパゴス化の果てに見えた日本図書館界の課題」に補足してみようーーもう一つあった皇道図書館ーー

金沢文圃閣から『戦時下日本主義の図書館ーー『日本図書館学』・皇道図書館』が刊行された。本書は、京都帝国大学附属図書館で同僚だった三田全信と小川寿一が創刊した『日本図書館学』『池坊華道文庫報』と並木軍平が創立した皇道図書館の目録を復刻したも…

数寄者高橋義雄の日記『萬象録』を使って稲岡勝『明治出版史上の金港堂』に補足

文久元年生まれで、慶應義塾卒業後時事新報を経て、三井銀行で活躍し、茶の湯を趣味とした高橋義雄(箒庵)という財界人・文化人がいた。その日記が『萬象録』(思文閣出版)として刊行されている。この日記は、政治家・実業家・趣味人・宗教家が多く出てくるが…

たまには失敗だす!光風館書店の上原才一郎から牧野武夫宛暑中見舞い

だいぶ前にシルヴァン書房から千葉県北条町の牧野武夫宛の暑中見舞いの葉書を400円で買った。昭和7年7月30日付け消印で、差出人は光風館書店の上原才一郎である。この牧野は、中央公論社の社員を経て牧野書店を興す牧野だろうと思って購入。しかし、『出版文…

奇人記者小川定明が日露戦争を報じた明治38年の『大阪新報』を発見

三密堂書店の100円均一台から掘り出したトンデモない本の幾つかは、 「明治期の京都における染織図案史の修正を迫る『京都図案会誌』を発見 - 神保町系オタオタ日記」 「最初期の仏教唱歌集、西村義嶺編『仏教唱歌』(井上教山、明治23年9月) - 神保町系オタオタ…

古書鎌田から芝川ビルの意匠設計をした本間乙彦の饅頭本『忍び草』

天神さんの古本まつりに古書鎌田やモズブックスが目録参加のみで出店しなくなったのは、非常に残念である。さて、一昨年に同まつりで古書鎌田が全品300円、500円、800円のどれかというセールをやってくれた件については、「京都時代の金尾文淵堂と製本所真英…

昭和13年渡仏する宮本三郎画伯を見送る三角寛

三角寛のサンカ小説と挿絵を描いた宮本三郎については、「ようやく解けた謎の宮本三郎『サンカ画集』 - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである。私は世田谷にある宮本三郎記念美術館は何回か行ったことがあるが、「宮本三郎と三角寛のサンカ小説展」のよ…

『真山青果とは何者か?』(星槎グループ)を読んでみた。

星槎グループ監修、飯倉洋一・日置貴之・真山蘭里編『真山青果とは何者か?』(星槎グループ、令和元年7月)を読んでみた。青果の旧蔵書・資料・原稿用紙類を星槎グループが所蔵していることが判明し、それらを利用した展覧会及びシンポジウムが平成28年に開催…

詩誌『骨』同人大浦幸男先生の父大浦八郎

百万遍知恩寺秋の古本まつりの初日、座って何やら雑誌を読んでいる某先生。声をかけると、「これ読んでると色々載っていて楽しい」と。『會報』、三高(第三高等学校)同窓会の会誌である。神戸古書倶楽部で小松左京の講演か何かが載った号を買った覚えがある。…