神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

大正10年画家今関啓司が観た山本鼎の第2回農民美術品即売会とロシア未来派展

『画家今関啓司の日記:1918~1946』(求龍堂、平成3年10月)は1度読んでいるが、所要で再度読んだら色々発見があった。まずは、星製薬で開催された戦争ポスター展である。 (大正十年) 六月二十二日 (略)星製薬七階に戦争ポスター見に行く。後藤市長講演真[マ…

夏目漱石夫人鏡子が通った峰岸米造邸における静坐会のその後

「平安神宮の古本まつりで東寺済世病院長小林参三郎夫人の小林信子宛絵葉書を掘り出すーー『静坐』(静坐社)の総目次を期待ーー - 神保町系オタオタ日記」などで言及した『静坐』(静坐社)の裏表紙には、日本各地(台湾・朝鮮を含む)・満洲で開催された静坐会が掲…

『東洋新報附録』(菅了法社主)の「宗教彙報」欄でオルコット再来日に注目ーー佐藤哲朗『大アジア思想活劇』(サンガ)への補足ーー

緊急事態宣言下ではあるが、大阪古書会館のたにまち月いち古書即売会へ。ホールには新たに検温器が設置されていた。あまり買えなかったが、唯書房に見慣れぬ新聞があった。東洋新報社の『東洋新報附録』192号、明治24年8月1日)~252号、明治24年10月11日のう…

高橋箒庵『萬象録』(思文閣出版)の完結を祝してーー巻9の解題(政治・社会・思想)に中野目徹先生ーー

今年5月に高橋箒庵(高橋義雄)の『萬象録』巻9(思文閣出版)が刊行され、完結した。関係者の皆様、お疲れ様でした。拙ブログ 高橋箒庵が見た閨秀画家野口小蘋と小蘋挿画『画法自在』(博文館) - 神保町系オタオタ日記」で「巻8刊行後20年以上経つが巻9が未だ刊行…

著書を理由として公職追放になった稀有な女性鳥井敦子ーー『皇道精神の真髄』(惟神皇道同志会)の著者鳥井敦子とは?ーー

戦後公職追放になった数少ない女性のうち「著書」を理由した者は、2名である*1。1人は石原莞爾の研究者なら御存知の『東亜聯盟と昭和の民』(東亜聯盟協会、昭和15年8月)の著者小泉菊枝(のち白土菊枝)である。もう1人が、鳥井敦子という謎の女性である。『公職…

二人の「問題の女」、本荘幽蘭と下山京子に関する本ーー平山亜佐子『問題の女:本荘幽蘭伝』(平凡社)と松尾理也『大阪時事新報の研究』(創元社)ーー

松尾理也『大阪時事新報の研究:「関西ジャーナリズム」と福澤精神』(創元社、令和3年7月)が、刊行された。同書第2章「夕刊発行と時間軸の拡大ーー化け込み記者・下山京子」は、初期の婦人記者で明治39年大阪時事新報社に入社し、身分を隠した潜入ルポで評判にな…

公職追放に関する研究の進展を期待してーー公職追放になった女性の数すら不明な現状ーー

あらためてトム・リバーフィールド「『公職追放に関する覚書該当者名簿』のメディア関係者・文化人五十音順索引」『二級河川』17号(金腐川宴游会、平成29年4月)を読んでみた。女性としては、市川房枝が「言論報国会理事」、吉岡彌生が「大日本青少年団大日本婦人…

荷風を盗んだ猪場毅が編集発行した『南紀藝術』(南紀藝術社)と無名の画家太田良平

8月12日下鴨納涼古本まつり2日目、雨の中シルヴァン書房のテントへ。絵葉書の箱は並べられずに積まれた状態だったので、最近チェックしてなかったビニール袋に入った紙ものを見る。そうすると、南紀藝術社が「無名の青年画家太田良平」の「プロ風俗画展」を開催…

第一高等学校教授の職を女で棒に振った内藤丈吉と中山岩太の妻中山正子ーー辻直人『近代日本海外留学の目的変容』(東信堂)への補足ーー

辻直人『近代日本海外留学の目的変容:文部省留学生の派遣実態について』(東信堂、平成22年11月)を読んでみた。本書は、明治8年から昭和15年までの文部省留学生3,180人のデータベースを作成し、更に大学史史料や外交文書等を駆使して、戦前期の文部省留学生…

南洋協会が夢見た帝国日本の南洋博物館及び南洋図書館

中島俊郎「表象としてのジェームズ・ブルック」の抜刷を御恵投いただきました。ありがとうございます。「土俗研究者にして日本学術探検協会理事長の三吉朋十もチャーチワードのムー大陸に騙された。そして、三島由紀夫も?ーー森谷裕美子「三吉朋十と土俗学」への…

九鬼周造「最後の歌」の初出誌としての『静坐』(静坐社)

小林参三郎の妻小林信子が昭和2年に創立した静坐社の機関誌『静坐』については、「新村出・成瀬無極の脚本朗読会カメレオンの会と小林参三郎・信子夫妻ーーそして谷村文庫の谷村一太郎もまたーー - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである。成瀬無極の「…

鹿子木孟郎の妻鹿子木春子の日記(未公刊)に注目

存在が判明しているものの未公刊の日記については、「オタどんが死ぬまでに読みたい未公刊の日記群ーー堀一郎の日記はどうなった?ーー - 神保町系オタオタ日記」で言及したことがある。関西美術院第3代院長だった鹿子木孟郎の妻鹿子木春子の日記も、未公刊で…

土俗研究者にして日本学術探検協会理事長の三吉朋十もチャーチワードのムー大陸に騙された。そして、三島由紀夫も?ーー森谷裕美子「三吉朋十と土俗学」への補足ーー

平成8年6月『歴史を変えた偽書:大事件影響与えた裏文書たち』(ジャパン・ミックス)が刊行された。ここに掲載された藤野七穂「偽史と野望の陥没大陸“ムー大陸”の伝播と日本的受容」には戦前ムー大陸に言及した未知の文献が多く引用されていて、感心したもので…

東北帝国大学工学部の山内清彦と禊の科学者成瀬政男ーー寸葉会で見つけた『学士試験成績簿』からーー

何年か前に寸葉会という絵葉書などの紙ものの即売会で、戦前の『学士試験成績簿』を購入した。東北帝国大学工学部電気学科の学生の成績簿である。東大や京大の文学部で更にある程度知名度のある人のものだったら、速攻で買いだ。しかし、これは東北帝大工学…

「西の田村敬男か、東の赤尾好夫か」と呼ばれた大雅堂の田村敬男と松代大本営への印刷所移転ーー下鴨納涼古本まつりで見つけた『京都綜合製版沿革史』からーー

下鴨納涼古本まつりの初日、福田屋書店の1冊200円3冊500円台では、1冊だけ購入。キリスト教関係の良さげな本が幾つか出ていた。しかし、既にリュックが重たくなっているので、『京都綜合製版沿革史』(京都綜合製版協同組合、昭和56年10月)だけを購入したので…

昭和8年スチーム暖房に惹かれて北白川に引っ越した京都帝国大学植物学教室の北村四郎ーー下鴨納涼古本まつりで竹岡書店から見つけた年譜からーー

下鴨納涼古本まつりが無事開催された。雨で2日間中止というハプニングもあり、主催者・参加店は大変だったと思う。お疲れ様でした。恒例の竹岡書店の3冊500円台は、従来の1冊売り不可から3冊まで500円(1冊でも2冊でも500円)になり、3冊揃わないと家に帰れな…

『子供の科学』の表紙・記事を分析した神野由紀・辻泉・飯田豊編著『趣味とジェンダー:〈手づくり〉と〈自作〉の近代』(青弓社)

昭和12年10月柴田宵曲は、大橋図書館と日比谷図書館である雑誌を探していた。大正13年に創刊された『子供の科学』(誠文堂新光社)である。『日本古書通信』昭和58年3月号掲載の「柴田宵曲翁日録抄(21)」から引用する。 (昭和十二年) 十月二十二日 午後大橋図書…

田所廣泰・小田村寅二郎らが創立した日本学生協会で指導的役割を果たしたとして公職追放になった経済学者山本勝市

『公職追放に関する覚書該当者名簿』によると、経済学者山本勝市の公職追放該当事項は、「国民精神文化研究所々員学生協会に於て指導的役割を演ず」である。山本は昭和7年から18年まで国民精神文化研究所の所員であったので前半の方はよいとして、後半の方が確…

昭和初期における健康雑誌の時代ーー『健康之友』(健康之友社)・『健康時代』(実業之日本社)・『健康之光』(健康之光社)ーー

平安蚤の市で@pieinthesky氏から『健康之友』と『健康之光』を入手。既に所蔵している『健康時代』と併せて、昭和初期の3種類の健康雑誌が集まった。写真のとおり、同じような表紙である。それぞれの創刊時期は、 『健康之友』(健康之友社)大正13年創刊(推定…

伊達俊光の大阪文化女塾の創立と終焉ーー本野精吾や田代善太郎が講義ーー

ツイン21古本フェアで入手した伊達俊光『大大阪と文化』(金尾文淵堂、昭和17年6月)については、「ツイン21古本フェアではどんだけ?こんだけ! - 神保町系オタオタ日記」で言及したことがある。この本に出てくる伊達が昭和5年に創設した大阪文化女塾も気になる…

日本人は広島への原爆投下まで原子爆弾の存在を知らなかったという俗説の誤りーー中尾麻伊香『核の誘惑』(勁草書房)からーー

ざっさくプラスで「原子爆弾」をタイトルに含む記事を検索すると、次のような結果となる。 昭和20年に初登場(23件)するまでは、見事にゼロである。これを見ると、広島に原爆が投下されるまでは、軍人や物理学者などを除いた一般の日本人は原子爆弾という兵器の…

占領下の雑誌『月刊中国』(中国新聞社)に寄稿した宮本常一と竹中郁

「大東亜学術協会の機関誌『学海』ーー敗戦を巧みに生き延びた戦時下の雑誌ーー - 神保町系オタオタ日記」で紹介した『学海』2巻7号(秋田屋仮事務所、昭和20年8月)には、「次号予定」が出ている。 宮本常一の名前がある。ネットで読める菊地暁先生の「人文研探検―…

『東壁』(関西文庫協会)の編集委員川村猪蔵は、日出新聞記者だった

『図案会誌』2巻1号(京都図案会雑誌部、明治40年4月)の編集人に川村猪蔵という人がいた。このことは、「明治期の京都における染織図案史の修正を迫る『京都図案会誌』を発見 - 神保町系オタオタ日記」の注で言及したことがある。今回、その川村の経歴が判明し…

昭和8年度京都帝国大学工学部土木工学科卒業生の同窓会誌『恒友会誌』ーー帝国日本の土木技術者たちーー

昨年の秋無事に開催された知恩寺秋の古本まつりで「indigo book」の均一台から見つけた『恒友会誌』創刊号(恒友会、昭和9年9月)。62頁、非売品。恒友会は、会則を見ると昭和8年度京都帝国大学工学部土木工学科卒業生及び之に準じる者で構成される。会の命名は…

ゴルドン夫人が建てた高野山奥之院の大秦景教流行中国碑のレプリカーー『宗教文芸の言説と環境』(笠間書院)と家蔵の宗教絵葉書からーー

シリーズ「日本文学の展望を拓く3」(笠間書院)は、小峯和明監修・原克昭編『宗教文芸の言説と環境』。コラムに奥山直司「物言う石ーーE・A・ゴルドンと高野山の景教碑レプリカーー」があった。ゴルドン夫人が明治44年高野山に建てた「大秦景教流行中国碑」(景教碑…

昭和13年京都帝国大学総長濱田耕作の追悼会で太田喜二郎のスケッチ画を観ていた大場磐雄ーー植田彩芳子「太田喜二郎研究:その画業と生涯」への補足ーー

「古本が古本を呼ぶ」(by 高橋輝次)と言われるが、「展覧会が展覧会が呼ぶ」こともある。平成28年7月から9月まで京都文化博物館で「アートと考古学 物の声、土の声を聴け」展が開催された。ここで展示された考古学者濱田耕作による昭和8年の石舞台古墳調査…

大東亜学術協会の機関誌『学海』ーー敗戦を巧みに生き延びた戦時下の雑誌ーー

『学海』2巻7号(秋田屋仮事務所、昭和20年8月10日)は、2年前知恩寺の古本まつりでヨドニカ文庫から300円で購入。和本の均一箱に入っていたような気がする。目次を挙げておく。 「青山光二が描いた京都学派の奇人土井虎賀壽と『鹿野治助日記』 - 神保町系オ…

竹久夢二や妖怪を愛した廣瀬南雄の『民間信仰の話』(法蔵館)ーー大阪古書会館で出口神暁の鬼洞文庫旧蔵書を発見ーー

今月も暢気に(?)大阪古書会館の「たにまち月いち古書即売会」へ。一番乗りした古本横丁では相変わらず争奪戦になったのと、店主の体調を反映してか品揃えがもう一つだったため、1冊も買わず終了。しかし、古書あじあ號や他の店で幾つか買えた。その中に関西…

昭和17年民族学者杉浦健一が佐藤生活館で南方派遣者(?)向けの講演会ーースメラ学塾の南方指導者講座との関係ーー

山路勝彦編著『日本の人類学:植民地主義、異文化研究、学術調査の歴史』(関西学院大学出版会、平成23年8月)に、民族学者で元南洋庁嘱託の杉浦健一が昭和17年7月3日佐藤生活館で行った講演(民族学よりする原住民に対する対策)の原稿が翻刻されている。同館に…

大正12年装幀家としてデビューしていたマヴォイスト牧寿雄ーー五十殿利治「関西『マヴォ』について:牧寿雄と『マヴォ』関西支部」への補足ーー

さて五十殿利治「関西『マヴォ』についてーー牧寿雄と『マヴォ』関西支部」*1に補足してみよう。五十殿先生は、牧寿雄について、生没年未詳で経歴も不明、『マヴォ』前後の記録だけが判明していることのすべてであるとしている。今回、牧が大正12年には装幀…