神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2009-01-01から1年間の記事一覧

ジュンク堂にしてこのピンチ

『いける本・いけない本』11号(ムダの会、2009年12月)をもらってきた。 木下信一氏(翻訳家)が、石原千秋『国語教科書の中の「日本」』(ちくま新書)を「いけない本」としてあげていた。「「そう読めば読める」解釈を、都合よく集めているに過ぎない」と…

翻訳家列伝13(その7)

元々社の最新科学小説全集の翻訳陣について、福島正実は『未踏の時代』で、 (略)元々社では、SFは科学的な小説だからというので、理工科系の若手学者を翻訳陣に入れ、難解な科学・技術的なテクニカル・タームにアタックさせているという、一見まことしや…

翻訳家列伝13(その6)

津田和弘が元々社の命名者として、鵜澤総明をあげたり、斎藤晌をあげたりして、はっきりしないようだが、鵜澤と斎藤とは単に明治大学の総長と教授の関係だっただけではなく、極めて親しい関係だったようだ。 藤澤親雄『創造的日本学』所収の斎藤晌「天才のグ…

翻訳家列伝13(その5)

『最新科学小説全集』の翻訳陣には東大出身者が少なくとも4名いるが、京大出身者もいたようだ。 ナースの『憑かれた人』の訳者下島連がそうだ。『遍歴』(南窓社、昭和60年5月)などによると、 下島連 明治41年長野県生。昭和7年3月京大文学部英文科卒。9年…

翻訳家列伝13(その4)

クラークの『月世界植民地』を石川信夫と共訳した船津碇次郎は、歌人のようだが、よくわからない。 ググると、ウェッジ文庫の担当者によるブログ(「qfwfqの水に流して Una pietra sopra」)がヒットする。 今のところ、次のようにしておく。 船津碇次郎 歌…

翻訳家列伝13(その3)

ポール・アンダーソンの『脳波』などの訳者山田純は、『国立国会図書館著者名典拠録』でようやく経歴を発見。「山田純 大正10年生。共同通信記者。筆名:山田純一」。他の事典では見つからず。L.ブロード『チャーチル伝』(恒文社、昭和40年4月)の訳者紹介…

翻訳家列伝13(その2)

元々社の第2期最新科学小説全集の発行者は、津田和弘であった。高橋良平氏が津田和宏としているのは、誤植だったようだ。 翻訳家列伝を続ける。 ロバート・シェクレイ『人間の手がまだ触れない』などの訳者松浦康有は、 松浦康有 大正3年6月4日生。昭和18年…

翻訳家列伝13

元々社の最新科学小説全集・東京元々社の宇宙科学小説シリーズの翻訳者13人のうち、何人かについては、「kokada_jnet」氏教示の高橋良平氏「日本SF戦後出版史」に書かれている。 私の調査で判明した翻訳者について、記録しておこう。明治大学の関係者が…

養徳社の編集長とは

佐藤亮一の『翻訳騒動記』に養徳社が出てきた。 ついでにディズニーのまんが本を紹介すると、その後奈良の養徳社(天理教資本)の京大出という編集長が訪ねて来た。話の末、ディズニー・プロダクション刊行のワンセット箱入り二冊の絵入りまんが本を『ドナル…

村井弦斎に黙祷

村井弦斎の死に言及した日記は見つからないが、石川武美が『主婦之友』昭和2年9月号の「編輯日誌」で言及していた。 7月30日 村井弦斎氏が逝去。「食道楽」の著以来、氏が日本の家庭生活改善のために努力した功績は、偉大なるものである。今日の日本では、こ…

『主婦之友』の愛読者だった川上初枝=若林初枝=内山若枝=日高みほ

川上初枝が大正12年3月頃若林不比等と結婚し、若林初枝となった後、いつから内山若枝と称するようになったかは不明。しかし、大正15年ではまだ若林初枝だったようだ。『主婦之友』昭和2年新年号の「編輯日誌」*1によると、 大正15年11月19日 新年号で万葉百…

『新演藝』の合評会と鴎外の通夜

さて、「谷崎潤一郎詳細年譜」の大正11年7月11日の項を見ると、 11日、日本橋若松で「お国と五平」合評会。谷崎、荷風、小山内、岡田八千代、万太郎、周太郎、伊原青々園、岡鬼太郎、久保田米斎。 これは『新演藝』の合評会だが、このメンバーのうち、荷風、…

人間長生きすると『新・日本文壇史』が読める

長生きすると、色々なことを見ることができる。 ソ連の崩壊、米国黒人大統領誕生、日本人宇宙飛行士の活躍、日本の政権交代。 グイン・サーガの未完も(これは見たくなかったが)。来年1月から刊行される川西政明『新・日本文壇史』全10巻(岩波書店)もそう…

なぜか書物ブログがふれない出久根達郎の古本本

出久根達郎『古本綺譚』が大増補で平凡社ライブラリーから。私は、一時期、出久根氏の古本本を中公文庫でよく読んだが、最近はあまり読まず。書物ブログでも出久根本に言及する人が少ないような気がする。なぜだろう。 誰ぞの予定:五反田→神保町→浦和 - 国…

今年最後の南部古書会館

金曜日、土曜日の五反田古書会が今年最後の南部古書会館での古書展になる。 どうするべ。 - 沢田兼吉著『書病攷』(昭和17.5、台湾三省堂)なるレア本が存在するらし。

関東大震災後の玄文社

結城禮一郎の玄文社だが、関東大震災後の状況が岡本綺堂の日記に出てくる。 大正12年10月4日 玄文社の小林徳二郎君がたづねてくる。小林君は浅草の自宅も焼失、玄文社も焼失、しかも同社は新家庭、新演芸、劇と評論、詩聖の四雑誌発行を一時休刊することにな…

結城禮一郎と柳田國男

柳田國男の「大正十一年日記」に増田正雄らしい人物が出てくることは、昨年4月11日にも言及したが、その後色々判明したので、再掲してみる。 大正11年1月10日 夕増田君とあふ約束 (略) 夜スキヤ町加賀屋、大阪の増田君招、市来結城静雄、石嘉六君同席 「市…

三浦関造とアメリカ神智学協会

三浦関造の上海時代についてはさっぱりわからないが、渡米時(昭和5年〜6年)の状況はだいぶ判明してきた。 『心霊と人生』8巻11号(昭和6年11月)所収の「米国で親しんだ四人の心霊家」によると、 今年の四月上旬、私は加洲サイキカル、リサーチ協会主催の…

オルコットに感化された伊勢の坊さん

ニコライの日記*1には、オルコットへの言及が数回あるが、そのうちの一つを。 明治28年10月12日 伊勢の坊主が伝教学校に入れてほしいと頼んできた。かれはオールコット師[ヘンリー・スティール・オールコット。神智学協会設立者]と熱狂的な仏教徒のイギリス…

元々社の最新科学小説全集に関するちょっとした発見

河出ブックスもやってくれる。長山靖生『日本SF精神史 幕末・明治から戦後まで』。 ハヤカワ文庫JAからは福島正実『未踏の時代』。 さて、福島の書を見ると、元々社の最新科学小説全集について、次のような記述がある。 一九五六年には、元々社は、佐藤享…

キャンディ・キャンディへの思い入れはない

『本が好き!』の最終号で、「22世紀に遺したい「この一冊」」に猫猫先生、ナンダロウ・内澤夫妻*1登場。 猫猫先生は、『キャンディ♥キャンディ』をあげている。「高校二年生の頃、東京の高校から疲れて帰ってきたころにアニメが再放送されているのを観て…

ある古本者の2009年10大ニュース

順不同で、今年の10大ニュースを選んでみた。・黒岩比佐子さん、読売新聞読書委員となる*1・小谷野敦氏東大を追われ、猫猫塾を開講*2・南陀楼綾繁・内澤旬子夫妻の「別居」*3・山本善行氏の善行堂開店*4・林哲夫氏が『ちくま』の表紙を担当・東部古書会館で…

松宮春一郎の『世界聖典全集』と久保田米斎

久保田米斎は松宮春一郎の『世界聖典全集』の装幀を担当したらしい。『日本近代文学館年誌』5号、2009年10月に、久保田の日記*1が掲載されているので、引用する。 大正11年1月16日 朝松宮春一郎君来り聖典全書*2の装幀のことを依嘱せらる 2月7日 聖典全集の…

大社教と川上初枝=若林初枝=内山若枝

妹尾義郎日記から再び引用。 昭和15年1月19日 夜六本木の楽満六樹荘へ簡牛凡夫氏に招待され出席した、御客は千家尊宣氏、朝日の川上氏、井関氏、それに内山女史だった。千家氏は早く中座された、簡牛氏は福岡県選出の代議士で、中島知牛平氏の秘書的の方、皇…

松尾尊兊先生と『スメラ学塾講座』

松尾尊兊先生は、戦前、県立鳥取第一中学校に在学中、学徒動員により興亜工業という軍需会社に配属されていた。当時の日記が、「戦中工場学徒動員日記」として、『鳥取地域史研究』10号、2008年2月に掲載されている。 昭和20年7月21日 帰宅後、赤飯を持って…

世界幻想作家事典と四方田犬彦

今度は荒俣宏『世界幻想作家事典』(国書刊行会、1979年9月)を見てみる。荒俣著となっているが、「まえがき」によれば、草稿作成などで協力した人として、次のような人があがっている。 四方田剛己(シュルレアリスム、フランス思想、精神分析学) 沼野充義…

エラ・ケートと牧野信一

エラ・ケートが早稲田で英語を教えていたということだが、どうやら牧野信一が教え子だったようだ。 牧野の「文学的自叙伝」*1によると、 ところが私たちの中学とは違つて、ミセス・ケイトの会話の時間などには自ら進んで立ちあがり勇敢にまくし立てる学生も…

大日本興亜同盟に加盟していた世界紅卍字会後援会

大政翼賛会の指導の下に昭和16年7月に結成されたのが、大日本興亜同盟。この団体については、一昨年3月29日に言及したが、思っていたよりも重要な団体だったようだ。当初は53団体から発足したが、『興亜』2巻9号(昭和16年9月18日)には「大日本興亜同盟加盟…

菊水で飲む後の国会図書館副館長中井正一

京都帝国大学文学部講師で、戦後国会図書館副館長となる中井正一が、加古祐二郎の日記*1に出てくる。 昭和10年11月24日 夕から総長の古希の祝賀会をホテルで行う。済んでから、皆と河原町を歩いた。途中で、美学の中井氏*2と久しぶりに出くわす。 久しぶりに…

世界神秘学事典の制作スタッフを振り返る

荒俣宏編『世界神秘学事典』(平河出版社、1981年11月)は、新刊で買ったのではなく、阪急三番街地下古書バーゲンセールで買ったと思う。 「制作スタッフ紹介」から一部のスタッフの紹介を抜き出してみる。 水神祥 1951年生。国学院大学文学部卒。現在、国学…