神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2011-01-01から1年間の記事一覧

伊達得夫と中村稔

伊達得夫『詩人たち ユリイカ抄』によると、 昭和二十一年三月二十五日、一高生原口統三が厨子の海で入水した。(略)日刊新聞と違ってかなりくわしく原口統三という学生について語り、最後に、遺稿が一冊のノートにまとめられているが、それを出版したいと…

篠懸の花さく下に珈琲店かな

芥川龍之介が高浜虚子に俳句の指導を請うた書簡が発見されたとのニュースがあった。大正8年6月27日付で「篠懸の花さく下に珈琲店(カツフエ)かな」という句もあったという。大正8年6月というと、その前月の5月26日に芥川は谷崎と神保町のカフェーに行ってま…

奥田啓市鹿児島県立図書館長と全日本科学技術団体聯合会

柳田國男の年譜によると、柳田は、昭和11年4月28日鹿児島県立図書館で郷土資料を見学、5月1日には同図書館で講演している。これにより、柳田は当時館長だった奥田啓市と面識があったと思われる。奥田の経歴は、『簡約日本図書館先賢事典』によると、 奥田啓…

『兵庫近代文学事典』(和泉書院)を読む

『兵庫近代文学事典』(和泉書院)が刊行された。有川浩もしっかり立項されている。中尾務氏のコラム「神戸の新聞、出版社、書店」があって、ぐろりあ・そさえての伊藤長蔵について、神戸高等商業学校卒業後、東京高等商業学校専攻科(ママ)を経て、貿易商…

黒岩比佐子「人生最後の一冊」が『読書のとびら』(岩波文庫)に

読売新聞「よみうり堂から」は、14日にあった「語り継ぐ 黒岩比佐子の会」の話。 ・健康優良児時代の写真、遺著『パンとペン』の講演の際の完全原稿メモを公開。 ・小学6年の時に作った「わが生い立ちの記」が、400字詰め原稿用紙で135枚。写真、図版も織り…

大分県で「ブック・フェスタ・ベップ」(別府市)と黒岩比佐子氏蔵書展(佐伯市)

・今月23日(水祝)〜27日(日)に大分県別府市で一箱古本市などの「ブック・フェスタ・ベップ」というイベントがあるという→「ナンダロウアヤシゲな日々」 ・大分県佐伯市の国木田独歩館では「編集者国木田独歩と明治の雑誌 故・黒岩比佐子氏蔵書展」が今月…

柳田國男を訪問する国会図書館副館長中井正一

浅野晃「大和の旅」(『祖国』昭和25年9月号〜26年12月号)*1によると、 これも後日談になるが、大和の旅から帰つてのち、やはり東京で柳田國男先生をお訪ねした。先生のお宅へは、終戦の年の五月ごろ、折しも空襲のまつ只中にお伺ひしたのが最後であつた。…

小さなものへの視線を忘れなかった黒岩比佐子さん

黒岩比佐子『伝書鳩 もうひとつのIT』(文春新書)は、2000年12月刊行。同月27日付毎日新聞が早速「ひと」欄で、「「伝書鳩 もうひとつのIT」を出版した黒岩比佐子さん」を掲載している。そこには、例えば、 ・防衛庁の人に「こんなことを聞きにきた人は…

『人體美論』の著者川崎安=鋳金家原安民(その2)

『人體美論』の著者川崎安(鋳金家原安民)だが、『子規全集』第二十二巻の「子規門歌人略伝」に立項されていた。 川崎安民(明治四〜昭和四) 本名安。のち原氏をつぐ。鋳金家。子規の和歌革新に呼応し根岸庵歌会に殆んど欠かさず出席した。「日本美術」主…

群馬青年文化協会

『戦後文化人名簿 第三輯 昭和廿一年度臨時版』(文化研究会、昭和21年6月)は、金沢文圃閣から『戦後初期の出版社と文化人一覧』第一巻として、復刻されているが、そこに「群馬青年文化協会」という団体が出てくる。 群馬青年文化協会/群馬県群馬郡古巻村 …

丸善丸の内本店で西村賢太の空想書店

11月13日付読売新聞書評面、空想書店11月の店主は西村賢太氏。丸善丸の内本店2階で、近日中に西村氏の「空想書店」コーナー登場とのこと。

『人體美論』の著者川崎安=鋳金家原安民

多少神奈川県に縁があるので、わかりました。『人體美論』(隆文館、明治41年)の著者川崎安の正体が。『神奈川県史別編1 人物』によると、 原安民(1871(ママ)〜1929) はらやすたみ 明治後期・大正期の鋳金家。明治4(ママ)年大磯に生まれる。本名川崎…

林芙美子と月原橙一郎

神奈川近代文学館では、11月13日まで「没後60年記念展いま輝く林芙美子」を開催中。林は、昭和26年6月28日没。 木山捷平の日記によると、 昭和26年6月28日 今朝、林芙美子の死をきく。突然のことおどろいた。(追記、七月一日、告別式、大変な賑わい。月原橙…

黒岩比佐子さんを偲ぶ社会主義研究者たち

黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)についての最後の書評になると思われる書評が、『初期社会主義研究』23号に出た。大岩川嫩「軽妙にそして骨太に闘い抜いた堺利彦の生涯を描く」である。そこには、 文体は端正であ…

日比谷図書館員佐々木周雄

草野心平の年譜を見てたら、大正13年8月の欄に「広州に帰ってのち磐中時代の後輩佐々木(旧姓赤津)周雄(当時日比谷図書館勤務)から宮沢賢治の『春と修羅』が送られてくる。一読瞠目する」とあった。この佐々木だが、戦後の人事興信録にある佐々木と同一人…

発見された売文社の機関誌『パンとペン』創刊号

黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)で、黒岩さんが「残念ながら実物は発見されていない」とした売文社の機関誌『パンとペン』創刊号が、発見されたという。『初期社会主義研究』23号の小正路淑泰「堺利彦生誕一四〇年…

野依秀市を慕う帝都日日新聞の元編集者たち

長谷川渉編の草野心平の年譜によると、 昭和7年5月 宮島資夫夫人麗子の紹介で実業之世界社に入社。高橋亀吉監修『財政経済二十五年史』の編集校正を担当。 9年5月 『財政経済二十五年史』完結後、実業之世界社から発刊されていた『帝都日日新聞』の編集部に…

中央公論新社から中公選書創刊

4日付『週刊読書人』の「出版メモ」によると、今月、中央公論新社から中公選書が創刊される。新書戦争の次は、選書戦争かしら。今月分は、 茂木健一郎・竹内薫『3.11以後』 野村喜和夫『萩原朔太郎』 筒井清忠『帝都復興の時代 関東大震災以後』 小林恭子『…

黒岩比佐子さんの著作に言及した最近の論文

黒岩比佐子さんの著作に言及したり、引用した論文を二つ読んだ。・小出治都子「高等女学校の美育からみる「少女」と化粧の関係」『Core Ethics』7号、2011年 この「少女」たちの生活について論じているのが、黒岩比佐子(原注)と川村邦光である。原注:黒…

海城が生んだ怪人と快人

スメラ学塾を創設した小島威彦は、海城中学校出身者だった。小島の自伝『百年目にあけた玉手箱』第一巻によると、 僕の通う海城中学は日露戦争の頃では、海軍の予備門のような学校だったが、日比谷公園の裏に府立一中と並んで、徳川期の大名屋敷の門をそのま…

西谷能英『出版文化再生』(未來社)刊行

『未来』11月号で西谷能英「未来の窓」が176回(「あらためて本の力を考える−−『出版文化再生』刊行にあたって」)で最終回を迎えた。1977年3月号から始まったこのこのコラムは、未來社60周年記念社史『ある軌跡』と今月下旬に同時出版されるという。最終回…

今日泊亜蘭と辻まこと

「『歴程』詩人としてのSF作家今日泊亜蘭」で言及した草野心平の日記昭和37年9月25日の条に出てくる「今日泊亜蘭の会」は、やはり『光の塔』の出版記念会だった。辻まこと「光の塔の作者」『歴程』昭和38年3月によると、 去る九月二十五日に日比谷の山水楼…

本多正一写真展「古書の森の黒岩比佐子」

「BOOK TOWN じんぼう」(「http://jimbou.info/news/furuhon_fes_index.html」)によると、 ◆愛を刻み、明日へ伝える──本多正一写真展 「古書の森の黒岩比佐子」 昨年11月17日、古書と神保町を愛し、52歳で急逝したノンフィクション作 家・黒岩比佐…

東京帝国大学附属図書館司書官?西脇経治郎

『図書館雑誌』52号(大正12年3月13日)にヅウエイ大学附属図書館長シユウル・クウゼン「図書館の分類法に就いて」の翻訳を掲載した西脇経治郎の正体が偶然にも判明した。新倉俊一『評伝西脇順三郎』を見ていたら、西脇順三郎がイギリス留学から帰国してすぐ…

『出版ダイジェスト』の最終号にもビックリ!

このブログでも何度か引用させてもらった『出版ダイジェスト』が10月21日号(通号2238号)で休刊。最終号の内容は、永江朗「これからのメディアと出版」と「信じよう、本の力 10月27日〜11月9日 第65回読書週間」特集。→「http://www.digest-pub.net/」 南陀…

群馬県生まれの初代日比谷図書館長渡邊又次郎

『大正人名辞典Ⅱ』によると、 渡邊又次郎 前水戸高等学校長、文学士、東京府士族 東京府豊多摩郡渋谷町下渋谷伊達跡1832 旧武州藩士渡邊諶太郎の二男。慶應2年11月生れ、明治26年帝国大学文科哲学科卒、31年大学院修了 中央大学・東洋大学講師、帝国大学図書…

千代田区立日比谷図書文化館の開館を祝して

千代田区立日比谷図書文化館が11月4日開館。それを祝して、日比谷図書館児童室の職員だった中條辰夫の話の続き。 「中條辰夫と中村屋サロン」で言及した中條と秦学文やエロシェンコの関係から言って、中條が秋田雨雀の日記に出ているかもしれないと思ってい…

『神保町が好きだ!』5号の「芥川龍之介と谷崎潤一郎」への補足

『神保町が好きだ!』5号(本の街・神保町を元気にする会、2011年10月)が出た。目次は、 [特集]作家が語る・わたしと神保町 ・ぼくのふるさと神保町 浅田次郎 ・学生の街だった神保町 奥本大三郎 ・神保町が世界遺産になる? 角野栄子 ・映画と酒の街 出久…

埴谷雄高の農民闘争社時代

『農民闘争』とマルクス書房については、「マルクス書房の終焉」で記事にしたのだが、同誌は『日本近代文学大事典』に立項されていた。それによると、 農民闘争 農民運動誌。昭和五・三〜七・五。全二一冊。農民闘争社発行、マルクス書房発行。(略)全農(…

上毛新聞社で伝書鳩に餌をやる草野心平

草野心平の『わが青春の記』の「詩への絶望感」に、草野が上毛新聞者校正部時代にしていたもう一つの仕事が書かれている。 (前略)大晦日のひるひなか、それは私の日課の一つだったので工場のはじっぽの梯子段をあがって屋根上に出た。そこには伝書鳩の鳩舎…