2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧
『定本漱石全集』20巻(岩波書店、平成30年6月)は、日記・断片下。漱石の作品は、夏休みの課題図書にされた『こころ』を読むのが苦痛だった時以来苦手だが、日記や書簡を読むのは楽しい。ざっと読んでみて、注解(石崎等・岡三郎)で気付いたことを補足しておこ…
かつてリブロポートがシリーズ民間日本学者を出した。予定したラインナップのすべては出せなかったが、優れた評伝が多かった。今リストを見ると、 津村喬『岡田虎二郎』 左方郁子『宮本常一』 鈴木正『狩野亨吉』 阿奈井文彦『梅原北明』 鶴見良行『松岡静雄…
大阪砲兵工廠について初めて知ったのは小松左京『日本アパッチ族』からだという人も多いだろう。私も角川文庫版の同書で知った口である。そんなオールドSFファンの私が、昨年6月大阪古書会館の古本市で「大阪砲兵工廠蔵書」印のある和本を見つけた。毛利貞斎『…
下鴨神社や百万遍知恩寺で開催される青空古本まつりから100円均一コーナーが消え失せて数年が経つ。『山岳語彙採集帖』(日本山岳会、昭和11年12月)は確か熊本地震の被災者へのチャリティーとして均一コーナーが一時的に復活した時に見つけたと思う。巻頭の「…
数年来積ん読だった『日夏耿之介宛書簡集:学匠詩人の交友圏』(飯田市美術博物館、平成14年7月)を読んでいたら石橋智信の書簡が載っていた。昭和5年1月16日消印で游牧印書局宛。游牧印書局は昭和4年8月に日夏の監修で創刊された雑誌『游牧記』の発行所。文面…
京都国際マンガミュージアムの臨時休館が「3月15日まで」から「3月22日まで」に延長された。 京都の蒐集家小西一四三(号卜鯰爺)の三田平凡寺宛絵葉書ーー京都国際マンガミュージアムで三田平凡寺展開催中ーー - 神保町系オタオタ日記」で紹介した「「趣味の王さま…
平成24年7月から9月にかけて、堺市立文化館で「晶子さんとその時代ーー宇崎純一と華やかな大阪出版文化ーー」が開催された。スミカズが描いた絵葉書が大量に出品されていて、いつかは1枚くらい入手できるだろうかと思ったものだった。その後、書物蔵氏からの…
国会図書館は小中村清矩『歌舞音楽略史』乾・坤(小中村清矩、明治21年2月)を2点所蔵している。1つは帝国図書館に寄贈され冑山文庫となっている根岸武香旧蔵書である。もう1つは国立国会図書館の印が押されたものである。明治の刊行時に内務省から交付された…
文庫櫂で入手した稗田菫平宛葉書については、「昭森社の森谷均人生最後の年賀状 - 神保町系オタオタ日記」などで紹介した。稗田旧蔵品は金沢文圃閣が大量に持っているようなので、同社が買い取りをして一部を市会に出し、それが文庫櫂に渡ったのかもしれない。…
都立中央図書館で開架の文学全集や伝記の棚をブラウジングしたことがある。高橋箒庵の日記『萬象録』もそこにあったのだが、茶人の日記ということでスルーしてしまったようだ。しかし、精読すると多彩な人物が登場して驚く。既に何度もブログのネタに使わさ…
手元に飯野官吉『穏田の神様 飯野吉三郎』(文藝書房、平成9年8月)という本(以下「本書」という)がある。最初は百万遍の吉岡書店の店頭で見つけた。その時は文藝春秋発行と見間違えて、知らない本だがよくありそうな本だから図書館で借りるかと見送った。ところ…
文学者の日記に霊術家が出てくることがある。拙ブログ「戦時下の霊術家 - 神保町系オタオタ日記」で紹介した森田草平の日記のような例である。芹沢光治良の日記にも、霊術家に関する目を疑うような記述があった。 『芹沢光治良戦中戦後日記』(勉誠出版、平成27…