わたしが松井簡治という人物に惚れこんだのは、古書収集の
動機や目的を語った「わが蒐集の歴史」を読んでからである。
「書誌学」(7巻2号、昭和11年8月)に掲載されたもの
で、簡治の談話を編集部がまとめている。
(中略)
帝国大学と取引している古本屋のなかで一番の大手を探し、
国語国文関係の本を人力車一台分持ってこさせて、言い値で
買う。次も同様に買って信用させたうえで、三度目から買う
もの買わないものをよるようにした(引用者注:石山氏によ
ると、明治25年の出来事だそうだ)。なぜ言い値で買うよ
うなことをしたかといえば、大学や帝国図書館(現・国立
国会図書館)に負けないだけの文献を集めるためだったとい
う。
(中略)大学や帝国図書館が仕入れる本は簡治が必要ないと
判断して買わなかった<かす>(中略)ばかりで。このよう
な独占状態は実に約10年間続いたというのである。
(参考)本書には、『本屋風情』(岡茂雄著)も出てくる。
「波」(新潮社のPR誌)1月号で、2月刊行予定の本として
『「本」に恋して』(松田哲夫著・内澤旬子イラスト)を
発見!『印刷に恋して』と同じコンビだ。