神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『新刊ニュース』を読む

『新刊ニュース』11月号は、「人気の著者がオススメする この秋読みたいこの3冊!」特集。最相葉月、出久根達郎、原武史、松田哲夫、森まゆみ、四方田犬彦各氏らが登場。岡崎武志氏は、 ・寝台急行「昭和」行(関川夏央) ・須賀敦子を読む(湯川豊) ・叙…

臨川の戦いと知恩寺の古本猛者たち

皆勤賞の山本善行氏やほぼ皆勤賞のma-tango氏には負けるが、知恩寺の秋の古本まつりには十数回は参戦しているオタどんである。 初日の開店前に行われる寺の大殿での古本供養に参加すれば金券がもらえるのだが、どうも誰ぞが待ち構えている悪寒がするので、ま…

呉清源と世界紅卍字会後援会

呉清源といっても知らなかったのだが、「ウィキペディア」にも立項されているから、著名な人のようだ。 最近岩波現代文庫になった桐山桂一『呉清源とその兄弟』によると、呉は昭和17年4月に中国へ向かい、紅卍字会の布道団の日本への派遣を求めている。 篁道…

昭和研究会と柳田國男

昭和13年3月28日、柳田國男は昭和研究会で講演をしているが、その内容に年譜と大蔵公望の日記で食い違いがある。 年譜 昭和研究会で教育改造論を話す。 大蔵公望日記 十二時、昭和研究会に行き、食後、柳田国男氏の日本民族の変遷に関する話をきく。 年譜の…

世界紅卍字会後援会の設立前後

再び大蔵公望の日記で世界紅卍字会後援会について見てみる。 昭和13年6月24日 一二時、帰京。直ちに工業クラブにて、遠藤柳作氏主催の世界紅卍字会日本総会の設立協議会に出席。余は取敢ず紅卍字研究会を設立す可き旨主張す。 7月1日 五時、国研*1民族委員会…

戦時下の上田壽、中野好夫、原田敏明

10月21日に言及した文部省の外郭団体である日本文化中央聯盟については、『昭和十八年版日本文化団体年鑑』に「(主要職員参事上田壽、中野好夫、原田敏明、昭和十八年十月現在)」という記載もある。このうち、原田敏明は神宮皇学館教授の宗教学者原田と確…

川上初枝=若林初枝=日高みほ子=内山若枝の生年

日高みほという女傑は、三村三郎によると川島芳子に並ぶ大陸女浪人とされるので、私は馬に乗って銃をぶっ放すイメージを持っていたが、小田秀人によると霊能者でもあったらしい。確かに、三村の書にも「日高女史はつねに世界紅卍字会を舞台に大陸で踊つてい…

一水会と柳田國男

一水会とは、『白岩龍平日記』の中村義「第一部アジア主義実業家の生涯」によると、貴族院議員宮島誠一郎の次男で、漢学者、漢詩人、書家の宮島大八が大正6年1月に組織した研究会。毎月第一水曜日に華族会館で開催されたので、一水会と呼ばれたという。中村…

文壇美男番附

『不同調』7巻4号、昭和3年10月に「文壇美男番附」が載っていた。一部を紹介すると、 東 方 横綱 久米正雄(艶子夫人から見れば) 大関 谷崎潤一郎(だが、女人に警告・・・妙な癖がある) 関脇 正宗白鳥 小結 宮島新三郎 西 方 横綱 佐藤春夫 大関 近松秋江…

戦時下の心霊実験と小田秀人

ma-tango氏が外国の心霊ネタを書いていたので、わしは大日本帝国の心霊ネタを出しちゃう。 満鉄理事の後、貴族院議員となった大蔵公望の日記に小田秀人の名前が出てくる。大蔵が世界紅卍字会後援会の理事だった関係のようだ*1。 昭和14年3月20日 八時、遠藤…

財団法人日本文化中央聯盟による日本文化図書館設立計画

松本学が中心となって設立した*1文化団体に日本文化中央聯盟がある。『昭和十八年版日本文化団体年鑑』(日本文化中央聯盟、昭和18年12月)によると、 財団法人日本文化中央聯盟所在地 東京都麹町区内幸町二ノ一ノ三 大阪ビル新館八階設立の目的及事業 肇国…

「児童読物改善ニ関スル指示要綱」

山中恒『ボクラ少国民』(講談社文庫)に「児童読物改善ニ関スル指示要綱」の全文なるものが掲載されていた(典拠不明*1)。平井昌夫が示していたふりがな廃止などにかかわる部分を抜き出すと、 [廃止スベキ事項] 一.活字 (1)六号及ビ八ポイント以下ノ活字ノ…

「怪奇幻想漫画家事典篇」に収録される335名の漫画家

10月下旬国書刊行会から東雅夫・石堂藍編で刊行予定*1の『日本幻想作家事典』巻末には、附録として「怪奇幻想漫画家事典篇」と「怪奇幻想映像小史篇」も収録される。内容見本によると、怪奇幻想漫画家としては、 手塚治虫・石ノ森章太郎・横山光輝・楳図かず…

『柳田國男全集』(筑摩書房)に漏れたる著作

緻密を極める『柳田國男全集』だが、幾つか未収録著作を発見。 「イプセン雑感」『新天地』2巻1号、明治42年1月1日 「名家の読書時間」『読書之友』7号、大正元年11月1日 「出版界の積弊を難ず」『図書評論』1巻3号、大正2年6月3日 これらは、ちまちました文…

石川公彌子『<弱さ>と<抵抗>の近代国学 戦時下の柳田國男、保田與重郎、折口信夫』とスメラ学塾

今年も出ました、スメラ学塾に言及した文献が。講談社選書メチエの石川公彌子『<弱さ>と<抵抗>の近代国学 戦時下の柳田國男、保田與重郎、折口信夫』がそれ。森田朋子論文*1に依拠している。目新しい内容としては、保田が「言霊私観」でスメラ学塾を批判…

資生堂ギャラリーと佐野繁次郎

開廊90周年を迎えた資生堂ギャラリー。佐野繁次郎が出品した展覧会を『資生堂ギャラリー七十五年史』から拾うと、 「新油絵第一回展」 1933.6.7-6.11 「S」出品 「新油絵第二回展」1934.3.24-3.28 「中川紀元・佐野繁次郎二人展」 1943.5.7-5.10 「アトリエ…

内務省の「子供雑誌編輯改善要項」がつぶした少年雑誌

平井昌夫編の「国語国字問題年表」によると、昭和13年10月内務省は児童読物改善のため、「子供雑誌編輯改善要項」*1を指示した。内容は、小活字の使用禁止・ふりがな廃止・漢字使用制限で、昭和14年2月号の子供雑誌から適用された。この措置によって、児童雑…

21世紀中年オタどんの2010年“しんよげんの書”

浦沢直樹の20世紀少年の真似をして、わすも“しんよげんの書”を書いてみた。 猫猫先生 『久米正雄伝』を書くも、出版社が見つからず。 黒岩さん 泣く泣く蔵書を処分*1。古書会館地下を借りきり、百箱古本市開催。 書物蔵さん ゴロウタン*2本を自費出版。三輪…

第一書房の再興を夢見た伊藤禱一

第一書房の編集者で、同書房廃業後、八雲書店、斎藤書店を経て、第二書房を興した伊藤禱一。彼が、八雲書店を辞めた時期が判明した。これも新井静一郎の日記だが、 昭和22年4月2日 伊藤禱一氏から手紙が来ていた。一月限りで八雲書店を辞め、今度斎藤書店を…

人間グーグルのオタどん、村井弦斎の長女黒田米子を発見!

昨年神奈文で開催された村井弦斎展のパンフ所収の略年譜によると、長女米子は、明治34年11月生ま。大正12年4月に黒田鎮夫と結婚、昭和9年日本放送協会に入社、教養部で女性向け家庭番組の企画・制作を担当したという。この米子を明治製菓広告課でアドライタ…

進々堂と安西冬衛

安西冬衛の日記*1に進々堂らしい喫茶店が出てくる。 昭和29年2月3日 氏とつれ立って城君と落合う予定の京大北門前の喫茶室へ行く。(略)/大きいガラス窓のあるフランクな喫茶店。長方形の重厚なテーブル。 進々堂はお勉強の好きな学生がたまる喫茶店で、黒…

兵どもが夢の跡、独歩社の終焉

徳川夢声、明治27年4月生まれ。国木田独歩と面識はないと思われるが、その戦時中の日記*1に独歩社に関する記述がある。 昭和20年4月21日 海軍艦政本部が、コールターヲ塗ッテイタ。国木田独歩ガ籠ッテイタ、新古文林社ノ古イ建物ガ、エイサエイサト縄デ引カ…

日比谷に萱野長知の陶陶亭あり

谷崎ゆかりの偕楽園に比べると若干歴史は浅いが、日比谷に陶陶亭という中華料理店があった。 文学者などの日記に、よく登場している。例えば、高見順の日記だが、 昭和22年5月17日 日比谷の陶々(ママ)亭へ行く(菅(ママ)野長知氏の経営だったが、今は中…

野依秀市からの手紙

とりあえず野依秀市ネタの第二段。宇野浩二の日記*1にも出てくる。 昭和6年5月26日 野依秀市の名前で、「どりこの」宣伝に使はれたのかどうかの手紙書留で来る。「実業の世界」六月号を送つて来る。 6月3日 (略)後、野依秀市氏にどりこのに就いての返事を…

戦時下の野依秀市

佐藤先生の連載が絶好調なので、わしも野依秀市の名前を見つけたら記録しておくことにした。 昭和20年5月2日 (略)自分は緒方邸へ持参し緒方氏に会ったが、実業世界の野依秀市氏が来訪したので、支那の話や身辺の話は出来ずに辞した。野依氏も戦局に対して…

図書館職員養成所長舟木重彦

広津和郎らと『奇蹟』を創刊した舟木重雄の弟で、小説家、独文学者の舟木重信宛書簡(『人間、この愛しきもの 舟木重信書簡集』)に重信の従弟舟木重彦が出てくる。中野重治の昭和26年3月25日付け書簡だが、 (略)さて、先日重彦君(1)のこと御知らせを受け…

不同舎門人田内千秋の経歴

黒岩さんの『編集者国木田独歩の時代』で、女写真師「梅子」の正体を探った章はとてもスリリングだった。ただ、独歩社で活躍し、その終焉を見届けた画家の一人田内千秋については、経歴不詳とされていた。独歩社で活躍した同じく不同舎門人である満谷国四郎…

「おとわ」のトンカツの出前

村井弦斎の『食道楽』由来の「おとわ亭」を再び発見。 松本克平『日本新劇史』の「踏路社の事前運動」によると、 駿河台の木村(修吉郎)の家は『みなし児』以来、連中の合宿所になっていた。(略)神保町の「いろは寿司」、東京堂裏の「おとわ」にトンカツ…

前途洋洋たる倉田啓明

倉田啓明にも前途洋洋だった時期があった。『人物研究』(サンデー社、大正2年12月)*1に特色ある新進作家として、 更に下つては國枝史郎君、倉田啓明君、谷崎精二君、福氷(ママ)挽歌君、相馬泰三君、國枝莞二君、細田民樹君、水島爾保布君、之等の数氏は…

女皇道主義者川上初枝=日高みほだった。

ma-tango氏の教示により9月24日に言及した女皇道主義者川上初枝は、大陸女浪人日高みほと同一人物と判明。 確かに、三村三郎の『ユダヤ問題と裏返して見た日本歴史』によると、日高みほの別名として、川上初枝、篁白光*1が挙がっている。三村によれば、日高…