読むまいと思っていたが、読んでしまった佐野眞一『阿片王』。
戦前の民族学者について第1章に出てくる。
昭和10年(1939)年4月、当時、陸軍省軍事課長だった
岩畔豪雄の命令で、「昭和通商」という軍需国策会社がつく
られた。公的記録には一切出てこない謎の会社である。
(中略)
太平洋戦争がはじまる半年前の昭和16(1941)年6月、
政府は民族研究所の設立を閣議決定した。これは渋沢敬三
の肝煎りでつくられた日本民族学会付属研究所を編成がえし
たもので、国策的要素が濃厚な研究機関だった。
(中略)
民族学は、図書館の分類で軍事の項目に隣接して設けられて
いる。ここからもわかるように、辺境地域に居住する民族を研究
対象としてきた民族学は、その成立時から、軍事、とりわけ植民
地統治の隣接領域という宿命を負っていた。
(中略)
同じ国策機関の民族研究所と昭和通商の橋渡し役となったのは、
軍部と学会にそれぞれ太い人脈をもつ二人の男だった。ひとりは、
戦後、『異人その他』などの著作で山口昌男に決定的な影響を
与えた民族学者の岡正雄である。
『本屋風情』の岡茂雄の弟、岡正雄については、『異人その他』の自作
年譜を見るだけでも色々興味深い人物だと思っていたが、佐野の書を
読んで、もしかしたらとんでもない怪人ではないかという気がしてきた・・・
本書は今年読んだ本ではベスト1かな。
追記:文藝春秋2月臨時増刊号「司馬遼太郎ふたたび」に
岡崎武志「東西古書店が見た司馬遼太郎」登場。
神保町からは高山本店、巌南堂書店。
「散歩の達人」1月号「本屋さんを遊ぶ!」にナンダロウ
御夫妻登場。
内澤旬子さんの顔って初めて見た気がする。
「おに吉」も出てくる。
盟友「ジュンク堂書店日記」はMSNにあまりに腹が立ち、
とうとうしばらく休止するみたい。休止の案内すらアップ
できないみたい!