3年前の大阪切手まつりでシルヴァン書房の矢原さんから、家永三郎の平楽寺書店宛葉書を入手。平楽寺書店宛書簡が出回っていた頃である。中村元の書簡もあった。3枚あった家永の葉書のうち昭和31年7月5日付けは、ゲラ刷を一覧して、「道元が法然や貞慶に先行しているのは時代の順序が乱れていると思います」と指摘し、「田村君」と相談するよう指示している。
調べると、これは家永三郎編『日本仏教思想の展開:人とその思想』(平楽寺書店、昭和31年10月)のことである。目次を見ると、貞慶、法然、親鸞、道元の順に修正されている。また、同書の「あとがき」に、「実際に本書のプランを立て、その実現のために奔走されたのは、田村圓澄君であって、私は編者の名を僭称するに過ぎない」と書いている。「田村君」は、田村圓澄ということになる。家永は、監修者として最低限の務めは果たしていたようだ。