神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

昭和14年における仏教専門図書館叡山文庫の概要及び所蔵記録の分類

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 百萬遍知恩寺秋の古本まつりでは色々珍しいものが買えたので、追々紹介していきたい。今回は、玉城文庫の3冊500円コーナーで見つけた『比叡山』17巻186号(比叡山発行所、昭和15年3月)。同誌は数冊出ていたが、今井常吉「叡山文庫所蔵記録の分類及閲覧に関して」が載っている本号だけ購入。「186号」は、通号と思われる。比叡山発行所は、比叡山延暦寺内に所在。幾つかの図書館が本誌を所蔵しているものの、本号はないようだ。
 今井著によると、叡山文庫は大正11年11月5日開館。昭和14年12月末までの状況は、
・開館日数 4,767日
・閲覧人員累計 18,246人
・仏書閲覧冊数 35,843冊
・和漢書閲覧冊数 13,514冊
・記録及古文書類 6,759冊
 今井は、仏書関係に比べて記録及び古文書類の閲覧冊数が少ないのは仏教専門図書館としては遺憾とし、記録の内容について一般閲覧者のため詳細に報告することとしたという。

 此等の記録を所属別にすれば東塔(止観院)、西塔(生源寺)、横川(別当代)、滋賀院御留守居延暦寺事務所等で古ひ記録では慶長、元和頃より始まり徳川末期の元治、慶応の頃までが大部分であつて、明治以後今日に至る迄の記録は極めて少なく、延暦寺事務所記録として整理されてある。此の内最も多く保存されてある記録は法儀関係のものが多く(略)

 法儀文書やその他の記録の分類のほか、所蔵する記録の統計表が載っているので、一部を挙げておく。
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 今井は最後に、平沼淑郎「山門領門前町近江坂本に就て」『早稲田商科学報』や三橋時雄「徳川時代延暦寺寺領の年貢直納制」『経済史研究蠧誌』はこれらの記録を利用したもので、研究者の更なる活用を切望するとしている。なお、叡山文庫所蔵の古文書・絵図の一部は、延暦寺編『叡山文庫文書絵図目録』(臨川書店、平成6年5月)として刊行されている。
 ちなみに、叡山文庫とは直接の関係はないが、『京都府百年の年表 6宗教編』(京都府、昭和45年3月)に仏教図書共通分類表に関する記述があったので、記録しておこう。

昭和35年4月2日 仏教図書館協会総会を大谷大学で開催し同協会作製の仏教図書共通分類表を紹介。 中外4・5

叡山文庫文書絵図目録

叡山文庫文書絵図目録

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