神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

古本

ワキヤ書房の脇清吉

『古本年鑑』には載っていないが、松ヶ崎の京都高等工藝学校(現在の京都工芸繊維大学)前にワキヤ書房という古本屋があった。店主は脇清吉といって、武林無想庵について回想文*1を書いている。 京都の松ケ崎に京都工芸学校があって、校門前で、なまえばかり…

古書の森を遊泳する女性飛行士

人類が初めて月面に着陸して四十年。当時、推理小説やSF小説が好きで、宇宙飛行士になりたいと思っていたちょっと変った小学生の女の子がいた。その子は、やがて本の世界から離れ、テニスコートの世界に夢中になり、お蝶夫人のように華麗に舞っていた。そ…

狩野文京堂の狩野兵太郎

金沢文圃閣の『出版・書籍商人物情報大観−昭和初期』で復刻された「人と事業」『日本出版大観』(出版タイムス社、1930年)に、狩野文京堂のおじさんが出てきた。 文京堂 狩野兵太郎氏 明治二十三年一月生/上京区丸太町河原町東 君は京都府綴喜郡の産、明治…

コレクションの誕生、成長、変容―藝大美術館所蔵品選―

東京藝術大学大学美術館では、今日から「コレクションの誕生、成長、変容―藝大美術館所蔵品選―」展が開催。大学の前身、東京美術学校の正木直彦校長時代のコレクションも展示されるらしい。正木の日記『十三松堂日記』を見てみると、 明治45年2月24日 (前略…

神保町の東條書店と幸徳秋水

神保町にあった東條書店と幸徳秋水に関係があったらしいことは、昨年8月19日に言及したところである。この両者の関係について、きだみのる『人生逃亡者の記録』(中公新書)に書いてあった。明治43年4月に東京開成中学に編入学したきだが、学校から帰りによ…

わすも『彷書月刊』の「古本検定」にチャレンジ

も一つネット上では評判になっていないようだが、『彷書月刊』の「古本検定」に挑戦してみた。初級・中級・上級編とあるわけだが、初級編だけやってみた。初級といっても、絵葉書や装幀関係はほとんどわからず、86問中62問の正答であった。一応、初級レベル…

明治末期の古書展事情

誰ぞやほほへほ氏、最近はu-sen氏も「通勤」するらしい古書展。東京で最初に開催された古書展については、先日も考察したところである。明治末期の古書展の状況について、幾つかの日記で開催状況を見てみよう。 八木福次郎氏によると、「日本橋の榛原の隣に…

東京初(?)の古書即売展

東京における古書即売展の歴史については、日本橋の常盤木倶楽部で明治43年か44年に第1回が、45年1月に第2回が開催されたとされてきた*1。ところが、木下杢太郎の「パンの会の回想」*2に、 (その時代の空気を示す為めに一寸追記する。(明治四十三年)十一…

仙台の夏

仙台で6月20日(土)・21日(日)、「古本縁日 in 仙台 〜「わめぞ」の古本・雑貨市〜」があるらしい。宮城県美術館の「洲之内コレクション展」、仙台市歴史民俗資料館の「オールド・グラフィック〜仙台の出版文化の歴史」は6月7日で終了しているが、内澤さ…

女の子を古本屋に連れ込んだ井上章一青年

初デートには失敗は付き物。しかし、京大に入ったばかりの井上章一青年のやらかした失敗はとんでもなく大きかった。「古書哀話」『京古本や往来』78号(1997年10月15日)によると、中学高校と男子校だったため、同年齢の女性と30秒以上会話をしたことがなか…

トンデモ本の殿堂狩野文京堂

林哲夫画伯の「daily-sumus」に出てた京都の狩野文京堂。初めて行った時、今で言うところのトンデモ本の山で驚いたものである。左側の入口から入った所の棚に、神代文字や反ユダヤ主義、日ユ同祖論などの本がてんこ盛りだった。酒井勝軍や包荒子*1らの本、『…

Fブックスの2階

某県の古本屋といえば、Fブックス(正しくは、××××ブックス)は欠かせない。某氏の御用達でもあるらしい。そして、今や某女史にとって命の次に(?)大事なものとなったパッケージが発見されたのもここと思われる。某書にも載っているため、ミステリーファ…

岸本葉子の古書展女一人旅

『かんだ』冬号(平成20年12月)の「神田つれづれ草(8)」で、岸本葉子さんが「古書ファンのお膝元、東京古書会館を覗く」を書いていた。武鑑の実物を見るのを第一目的、ふだん近寄り難い神田古書店の世界を覗くのを第二目的として、東京古書会館の古書展…

ますます古本臭くなってきた『ちくま』

林哲夫氏が表紙を描き、表紙裏にも「ふるほんのほこり」を執筆している筑摩書房のPR誌『ちくま』2月号は、いよいよ古本臭くなってきたぞ。今回の表紙は、「讃州堂書店」。また、連載中の荻原魚雷氏の「魚雷の眼」は新居格の話。新たに市川慎子さんのコラム…

今年こそ北海道古本ツアー

北海道出版企画センターの『北海道の出版文化史 幕末から昭和まで』は、高いし、分厚いしで、手が出ずにいる。こういう本が出ると、書肆アクセスを思い出す。入ってすぐ右手が北海道のコーナー。棚の最上部に『高倉新一郎著作集』があったね。 一時期毎夏、…

黒岩比佐子『古書の森逍遥』に衝撃を受ける!

工作舎のホームページを見てたら、「これから出る本」の中に2月刊行予定として、黒岩比佐子さんの『古書の森逍遥』あり。御本人の紹介より先に言及して、またまた怒られたり(?)して(汗)。「明治・大正の美麗な古書との出会いを綴ったエッセイ集」との…

戦後も存在したベルグ書房

南田辺のベルグ書房については、昨年4月23日に言及したけれど、宮本常一の日記によると、同書店は戦後も存在している。 昭和20年3月3日 途中南田辺のベルグへよつて見る。あまりいいものは出てゐない。『西洋美術の知識』がめぼしいものであろうか。はなして…

高円寺の古本屋にして芥川賞受賞者の寒川光太郎

埴谷雄高「戦争の時代」*1によると、 寒川光太郎はその頃芥川賞をもらつたばかりであつたが、私達は彼を文学者として知つているというより、よく本を売りに行つた高円寺の古本屋の親父として知つていたのである。 古本屋の親父にして、芥川賞受賞者! ほんま…

 時代や書店で境野黄洋を買う福原麟太郎

福原麟太郎の「昭和二十年の日記」(『福原麟太郎著作集8』)に時代屋書店という古本屋が出てくる。 五月十二日。(略)三軒茶屋に至り散髪。(略)帰途中里で電車を降りて、時代屋という古本屋を見る。境野黄洋『日本の仏教』、大和田建樹『狂言評釈』を買…

 『座談会明治文学史』という名の古本合戦

『座談会明治文学史』を改めて見てみると、 柳田(泉) それから末松謙澄のシェリーの「雲雀の詩」がある。 勝本(清一郎) ところがまた私の持っているものに、外山正一の「新体詩抄」の原稿の一部があるんです。 (略) 柳田 「女学生」はなかなかありませ…

 一箱古本市へ、ひたすらトチゲキ、トチゲキ

書物奉行氏からバトンタッチを受けるべく、まずは神保町の古書会館へ。 す、すまった。数年前の一箱古本市で氏によって仕掛けられたワナにあやうくはまりかけた時に目撃した顔を忘れてしまった。図書館本も見かけず、それらしい「好青年」も発見できず。なぜ…

金沢の古本屋カフェあうん堂

朝日の「人生の楽園SP」を見てたら、会社を早期退職して2004年に金沢の住宅街にある自宅を改築して、「あうん堂」という古本屋カフェを開いた本多夫妻という人が出ていた。カフェ部分に比べ古本の方は全く売れていないみたい。 金沢まで言っても、泉鏡花記念…

オタどんのオールタイムベスト

新聞も雑誌も2007年の回顧モードに入っているが、まだまだ黒岩さんの本が今月2冊も刊行されるのだから、1年を回顧するにはちと気が早い。 そこで、オタどんはオールタイムベストということで思いついた本を挙げてみた。本来は、ジャンル別にして、選びたい…

「AKB48」対「JIMBOU16」

紅白歌合戦に出るとかいうAKB48は全然知らなかったが、確かに可愛い子が多い。 しかし、神保町系女子もアキバ系に負けていられない。 岡崎武志氏が『ちくま』で紹介した女性古書店主13名にノンフィクション作家黒岩比佐子さん、元書肆アクセス店長畠中理…

古本大学という名の古本酒場

吉行エイスケによると、かつて道頓堀に古本大学という店があったらしい。 「享楽地漫談会」(『近代生活』昭和5年3月号、海野弘編『モダン東京案内』平凡社、平成元年11月所収)での対談によると、 吉行(エイスケ) 岡田さんは大阪の古本大学は御存知ですか…

谷崎潤一郎を聞く二十歳の青木正美

後に反町茂雄にどつかれる青木正美が初体験を済ませ、古書店を開業することとなる昭和28年。 青木の二十歳の原点、『二十歳の日記』(東京堂書店、2003年1月)を読んだ。 昭和28年4月11日 十時だ。家でラジオの谷崎潤一郎の談話を聞いて来た。聞き手は中央公…

反町茂雄天皇の遺産

『京古本や往来』特別号のキクオ書店前田司「「古書研」の誕生」によると、 30年前の12月*1、「文車の会」会員だった臨川書店の久保田厚生*2のお膳立てにより、京都に研修旅行に来ていた弘文荘反町茂雄らと京都の若手との交流会が開催された。しかし、それは…

神保町の夕日

鹿島茂の「とある一年、小説世界にどっぷり漬かってみた〜二〇〇四年の「時評文芸」から」『鹿島茂の書評大全 和物篇』(毎日新聞社、2007年8月)に、 12月 現在、東京・神田神保町に仕事部屋を構えているが、この神保町は土曜日には不思議な街に変わる。他…

1978年に2回あった古本まつり

第31回秋の古本まつりへトチゲキすべく体調を整えたはずが、お腹の調子が悪く朝から四回もトイレに。 用事もあって、10時になっても、ようやく京都市内の某駅を通過したていたらく。初日は古本供養で開会が遅いはずだと、気を落ち着かせる。 会場の知恩寺…

古本に群がる都筑道夫!植草甚一!!大橋健三郎!!!

都筑道夫『推理作家の出来るまで』下巻(フリースタイル、2000年12月)によると、 早川書房に入って間もなく、知らない古本屋から、電話がかかってきて、そういう図書館本を、大量に見せられたときのことを、いまでもおぼえている。古本屋ではなく、廃品業者…