神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2010-01-01から1年間の記事一覧

柳田國男に群がる図書館人(その1)

お許しを得て、閉鎖中の「ジュンク堂書店日記」さんから孫引き。 柳田國男の『炭焼日記』にズショカンの関係者が何人か登場する。 1 中田邦造日比谷図書館長 昭和20年 7月15日 中田邦造君来、文庫疎開の話をして行く。信州高遠がよからうといふ話などを…

笹川臨風と田端の天然自笑軒

筑摩書房の『明治文学全集』の総索引は優れもので、田端の天然自笑軒も立項されていて、笹川臨風『明治還魂紙*1』(亜細亜社、昭和21年6月)に出てくることがわかった。この笹川の回想録は、黒岩さんの新著『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘…

田端の天然自笑軒と有島一族

有島武郎の一族も田端にあった天然自笑軒を利用していたようだ。有島の日記によると、 大正6年1月9日 夕方、原が来て、英も一緒に天然自笑軒へ行く。 原文は英文で、小玉晃一訳(『有島武郎全集第十二巻』)による。「原」は友人の原久米太郎(原智恵子の父…

『中外』の内藤民治と民衆図書館

黒岩比佐子さんの『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』は、黒岩版日本文壇史といった感もあって、今面白く読んでいる真っ最中である。さて、同書は、大正6年内藤民治が創刊した『中外』について、売文社が手伝っていたと言及している。この…

竹内文献の社会史

森本和男『文化財の社会史 近現代史と伝統文化の変遷』(彩流社、2010年6月)なる本にびっくら。「第12章戦時下の史跡保存」、「第14章日本の中国侵略と文化財」に、上記、竹内文献、富士文献、契丹古伝などの偽書の信奉者としての藤澤親雄や中里義美らが登場…

日経文化面に「変わる国会図書館」の記事

今日の日経朝刊を誰ぞは見たかすら。長尾眞館長就任後、書籍の電子化を主導するなど従来の慎重な姿勢から変わった国会図書館の動きについて紹介してるだす。来年10月には各部に所属していた電子部門担当の職員を統合して約70人規模の電子情報部を新設、また…

2005年の四天王寺と天神さんの古本祭

5年前の大阪の古本祭りの記録があった。 2005年10月7日 書物奉行さんに負けじと10時をもって突撃!の巻 書物奉行さんに10月7日の大阪古本祭めぐりを推奨したものの、どうやら「雨にたたられた青空古本祭」になりそうな気配・・・ 責任をとって辞職しよ…

有島武郎と村井弦斎のすれ違い

有島武郎と村井弦斎は、もう少しで出会いそうになった機会があった。大正4年5月6日付け武郎の妻安子(相模国平塚 杏雲堂分院内)宛書簡*1によると、 其後熱の具合如何や あれより絃(ママ)斎方を訪れ候処主人殿は未た睡眠中に而代人出来り候間御申聞の旨尋…

『彷書月刊』300号の目次

これは、買わないわけにはいかなかった。『彷書月刊』300号にして、休刊号である。目次をアップすると、 ・特集 彷書月刊総目次後編 1997−2010 ・読者のみなさまのおたより 連載 ・尋ね人の時間(78・特別編) 生活社と鉄村さんと 河内紀 ・均一小僧の気まぐ…

古屋鉄石の孫弟子、北一輝

北一輝・北署吉兄弟と、古屋鉄石の催眠術の試験台だった行者永福なる人物とは親しかったようだ。稲邊小二郎『一輝と署吉 北兄弟の相剋』(新潟日報事業社、2002年6月)によると、 また署吉の記録にも次のように書いてある。 「兄がどうして霊的人物になった…

文部官僚にして絵馬蒐集家の鶴岡春三郎

鶴岡春三郎「常陸眞壁地方特殊民雑話」*1を収録した礫川全次編『穢れと差別の民俗学』では、不詳とされてしまった鶴岡。この人は、木村捨三編『千里相識』(集古会、昭和10年9月)*2によると、 鶴岡春三郎 明治二十四年一月廿一日生 一(出生地)東京目白台 …

幸田露伴と建築家・発明家の伊藤為吉

千田是也ら芸術家兄弟の父親で建築家・発明家の伊藤為吉は、幸田露伴と菊池松軒の塾で同窓だった。そのため、露伴の日記に名前が出てくる。 明治44年3月2日 かねて漆山又四郎をして伊藤為吉を問はしめ、我が菊池松軒翁塾にての同窓なりしことを確かめ置きた…

久米正雄「モン・アミ」の登場人物を追って

久米正雄が昭和4年パリに到着した時のことを書いた「モン・アミ」に出てくる人物の正体を探求してみよう。画家 ・医師で画家を兼ねているM君・・・慶應医学部卒の宮田重雄 ・有名な実業家で喜劇作者を兼ねている父を持つY君・・・不明 ・二科会の中堅で、…

忘れられた美人女優及川道子と堺利彦夫妻

今月7日発売予定の黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)の刊行記念に。 忘れられた美人及川道子については、黒岩さんが『古書の森 逍遙』の書籍コード179『婦人倶楽部』附録『和装洋装 流行見立大集』(大日本雄弁会講…

鳥居龍蔵の孫娘鳥居玲子の母親、そして父親は?

三田村鳶魚の日記に鳥居龍蔵に関する驚くべき記述があって、前から気になっている。 昭和17年7月17日 ○鶴岡氏話に、鳥居竜蔵氏娘が外人と駈落せし由、その外人は宣教師にて嫌疑者なり、引いて竜蔵氏も嫌疑され、外出には監視つきとか。 「鶴岡氏」は、鶴岡春…

明治44年創刊の『鉄道画報』

斎藤昌三の『現代筆禍文献大年表』によると、大正2年9月『鉄道画報』は風俗壊乱を理由として発禁。調べてみると、大正元年12月15日付東京朝日新聞の「近刊雑誌」に「鐵道畫報(二の一二)」とあり、明治44年1月に創刊された雑誌のようだ。少なくとも、明治44…

本屋風情岡茂雄の本音

三村竹清の日記に岡書院の岡茂雄が出てきて、面白い。 大正15年9月27日 岡書院主 岡茂雄 内田君之紹介にて来 鳥居さんは利益之為にあちこちの書林より出版されるのて 評判あしき由 南方君は南方閑話之件にて中山氏とおもしからす 近頃悴気か狂ひて経済上にも…

田端の天然自笑軒に集う芭蕉研究会のメンバー

『秘密辞典』(千代田出版部、大正9年6月)の著者自笑軒主人の正体として中山太郎を提示してみた*1が、実際中山ならあの辞典を一人でも執筆できそうである。しかし、説としては自笑軒に集う文人グループの合作とする方が面白そうだ。引き続き、どういうグル…

『西洋画報』と横山有策

明治期に発行された『東洋画報』(のち『近事画報』)については、黒岩比佐子さんの『編集者国木田独歩の時代』に詳しいが、大正期に発行された『西洋画報』という雑誌については、文献はないようだ。明治新聞雑誌文庫は所蔵しているようだが、さすがの黒岩…

慶應卒業を控えた竹田龍児の就活

相変わらず就職戦線は厳しいようだが、昭和9年慶應義塾大学卒業の竹田龍児も、苦労したようだ。昭和8年12月24日付け三好達治の桑原武夫宛書簡によると、 これは少し私的のことになりますが、貴兄の友人で天理外語(?)に勤めてゐられる方(略)は、何といふ…

米子図書館史と水木しげるの大叔父住田寅次郎

水木しげる氏の大叔父(水木氏の父方の祖母の弟*1)には東京帝国大学出身者もいる。水木氏の父武良亮一の母の弟である住田寅次郎である。ウィキぺディアの「水木しげる」の項からの孫引きとは情けないが、引用させてもらうと、 元米子市長野坂寛治の著書『米…

水木しげるの大叔父住田良三パリに死す(その2)

spin-edition氏ご教示の橋爪節也編著『モダン道頓堀探検』を読んでみた。「キャバレー・ヅ・パノン」*1の常連だった住田良三について、橋爪氏が書いている。しかし、水木氏との関係や住田の生没年に言及されておらず、一安心。目新しいこととしては、 ・絵描…

水木しげるの大叔父住田良三パリに死す

住田良三を平凡社の『新撰大人名辞典』(昭和12年10月。復刻:『日本人名大事典』)でみると、 スミダリョーゾー 住田良三(一八九一−一九二〇) 大正時代の洋画家。大阪の人*1。洋画を能くして令名があったが、また多才にして松井須磨子、伊庭孝らと共に劇…

直木三十五を読む横田順彌と會津信吾

筒井康隆氏が、「直木三十五なんて、誰か読んだ?」と揶揄する直木*1だが、横田順彌氏や會津信吾氏は読んでいるのであった。『新・日本SFこてん古典』(徳間文庫、昭和63年8月) の「第四講 意外な作家、意外なSF」で、村田春樹名義の未来戦記『太平洋戦…

ポール・ケーラス『仏陀の福音』のもう一人の訳者

ポール・ケーラスのThe Gospel of Buddhaの邦訳は鈴木大拙の物がよく知られているが、八幡関太郎による大正8年9月誠文堂書店版もある。同書の「訳者序」によると、 自分が此本を始めて知つたのは今から四年前のことである。(略) 自分が此本を訳したのは…

読売新聞「緩話急題」に『古本検定』登場

9月10日付読売新聞朝刊の「緩話急題」に文化部次長尾崎真理子さんが、古本話を書いていた。「日本の古本屋」を愛用している尾崎さんが、たいていのリストに顔を出す「高原書店」が気になり町田の本店を訪ねたという。本店長の池原実歩さんや現社長の高原陽子…

『秘密辞典』の著者自笑軒主人の正体はあの学者だった!?

その男は、明治32年東京専門学校(のちの早稲田大学)邦語法律科を卒業。35年俳人岡野知十が主宰する『半面』に参加。36年から大正2年にかけて、電報新聞、報知新聞などに勤務。同年報知を退社して、柳田國男に師事。4年博文館に入社。仕事をそっちのけで、…

菊池寛の記録に漏れたる天然自笑軒における河童忌の出席者

田端の天然自笑軒で開催された河童忌の出席者については、一部ではある*1が菊池寛が『文藝春秋』に書いてくれている*2。たとえば、昭和9年開催分について見ると、「芥川龍之介八回忌くさぐさ」*3に、 芥川文子、芥川比呂志、葛巻義敏、下島勲、徳田秋聲、内…

戦前の河童忌と田端の天然自笑軒

河童忌については、戦前田端の天然自笑軒で開催されたとされる。芥川龍之介の長男芥川比呂志も「河童忌」*1で、 毎年、七月二十四日が近づくと、河童忌の集まりを想い出す。父の命日である。 田端の、天然自笑軒の、六畳、十畳二間つづきの座敷へ、参会の方…

田端の天然自笑軒と俳人岡野知十の深い関係

天然自笑軒の創業者宮崎直次郎の孫小林素次氏によると、天然自笑軒は宮本百合子、佐多稲子、吉田絃二郎、室生犀星、内田百輭、久保田万太郎、小島政二郎らの著述に出てくるという。このうち久保田の著述とは、「「引札」のはなし」*1と思われる。 なほ『鴎外…