神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『秘密辞典』の著者自笑軒主人の正体はあの学者だった!?

その男は、明治32年東京専門学校(のちの早稲田大学)邦語法律科を卒業。35年俳人岡野知十が主宰する『半面』に参加。36年から大正2年にかけて、電報新聞、報知新聞などに勤務。同年報知を退社して、柳田國男に師事。4年博文館に入社。仕事をそっちのけで、本を読んではカード作りにはげみ、十年間に2万枚に達したという。

自笑軒主人『秘密辞典』(大正9年6月、千代田出版部)とこの男が作成した辞典の正編(昭和8年11月)及び補遺編(昭和10年9月)には共通の語彙はほとんどないが、「青豆」についてみると、

『秘密辞典』
[青豆] 昔京都にて朝早く遊郭へ来る客を罵りていふ詞。

『補遺×××××辞典』
アオマメ[青豆] 朝早く来る客を云ふ。箕山の大鑑に青豆を商ふ者京の京を早暁の頃に商ふ。是により早く来る客を嘲りて青豆と称す(嬉遊笑覧巻一一)。按に、京都に限る通言である。

となる。

この男、本名は太郎治、俳号は丙子。民俗学者中山太郎として知られる男である。

(参考)黒岩さんも少し書かれているように、自笑軒主人名義で翻訳をしていた人物が存在する。自笑軒不酔訳「悪魔」(『裏錦』明治38年11月)及び自笑軒主人訳「善魔」(同誌40年1〜3月)で、いずれもゴーリキーの翻訳である。この人が『秘密辞典』の著者と同一人物とすると、中山太郎とは無関係そうである。あと、『秘密辞典』の発行者である京橋区北紺屋町一番地の千代田出版部深尾幸太郎の経歴も調べる必要がある。同じ所在地で『植民地大鑑』などを発行していた東洋タイムス社の社長でもあるようだ。

(参考)8月17日9月10日