今月7日発売予定の黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)の刊行記念に。
忘れられた美人及川道子については、黒岩さんが『古書の森 逍遙』の書籍コード179『婦人倶楽部』附録『和装洋装 流行見立大集』(大日本雄弁会講談社、昭和8年5月)で言及していたところである。この及川の名前は、秋田雨雀日記で見ることができる。
昭和6年11月8日 革命記念日で、いろいろな催しがおこなわれている。午後四時すぎ、千代子と二人で布施家を訪い、三人で大使館へゆく。(略)ホールではロシヤ人、日本人の明るい元気な顔が輝いていた。集まった人々は左翼から社民系では堺夫妻、真柄女史、リベラリスト、出版者、新聞雑誌記者、ロシヤ語関係の人々、音楽者ら。及川道子は首をほう帯してきていた。身体が悪いようだ。
及川が包帯をしていたというのは、この年の3月11日帝劇からの帰途に交通事故にあった後遺症と思われる。及川は病弱の上、交通事故に会うことも多かったようで、昭和7年5月29日付東京朝日新聞によると、6年10月「生活線ABC」の撮影中十二指腸を患い療養中だったが、28日慶應劇研究会に山本安英と出席し、新宿白十字で催された秋田、白柳秀湖、厨川蝶子ら百余名の「みつか会」による全快祝いに出席した帰り道に、再び交通事故にあったという。及川については、ググるとウィキぺディアには立項がなく、はてなのキーワードが詳しい。そこにも書かれていないが、『日本映画俳優名鑑 昭和九年版』によると、身長は五尺二寸(1メートル58センチ)、体重は十二貫(45キロ)である。今のところ、スリーサイズは不明。
堺は、この翌月脳溢血の発作で倒れ、8年1月に亡くなることとなる。社会主義者堺と女優及川、その二人の人生がこの日交錯した。
- 作者: 黒岩比佐子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/10/08
- メディア: 単行本
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「ぐろりや会」のみなづき書房さん、10月8日に神保町(南海堂書店と文華堂書店の間)に開店するのだな。