神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

直木三十五を読む横田順彌と會津信吾

筒井康隆氏が、「直木三十五なんて、誰か読んだ?」と揶揄する直木*1だが、横田順彌氏や會津信吾氏は読んでいるのであった。『新・日本SFこてん古典』(徳間文庫、昭和63年8月) の「第四講 意外な作家、意外なSF」で、村田春樹名義の未来戦記『太平洋戦争』(文藝春秋昭和6年2〜8月)、「ロボットとベッドの重量」(『新青年昭和6年3月)を直木のSFとしてあげている。また、直木は、「科学小説に就て」(初出誌不詳。『直木三十五全集十四巻』に収録)というエッセイで、

私は今、横浜の少し先へ家を建てゝゐる。それは、私の健康が、烈しく害されてゐるからでもあるが、同時に、私は、そこへ立籠つて、その「科学小説」を書き「統制的科学主義」の体系を立てんが為である。(略)
科学を知らなくても、立派な文学者ではありうるが、文学者としては科学小説を書く事も、又恥べき事ではないし、私はこの小説こそ、私が、これからの一生を、全力的に打込んで行けるものであるといふ情熱と、決心をさへ持つてゐる。

と書いているという。それで、ヨコジュンさんは、

それにしても、あの直木三十五がねえ。これを見ると、直木賞にSFが選ばれないというか、選考委員がSFを選ばないのは、とんでもない話だな。直木賞の選考委員は直木三十五が、こんなにSFに興味を示していたことなど知らないだろうね。SFを選ばないで、恋愛小説や風俗小説なんか選んでいたんじゃ、直木三十五は浮かばれないよ。許せないな。(笑い)

と発言している。SFの定義は人によって違うと思うが、ウィキぺディアによると、現時点でもは直木賞受賞作品にSFは存在しないようだ。

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朝日新聞穂村弘氏による黒岩比佐子『古書の森 逍遙』の書評が読める。→http://book.asahi.com/review/TKY201009140173.html

*1:『現代語裏辞典』(文藝春秋 、平成22年7月)の「直木賞」の項。