神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

笹川臨風と田端の天然自笑軒

筑摩書房の『明治文学全集』の総索引は優れもので、田端の天然自笑軒も立項されていて、笹川臨風『明治還魂紙*1』(亜細亜社、昭和21年6月)に出てくることがわかった。この笹川の回想録は、黒岩さんの新著『パンとペン 社会主義者堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)にも出てきて、私にはちょっとしたシンクロニシティとなった。黒岩さんによると、笹川は、堺とは防長回天史編集所で親しくなったという。

前掲書で、自笑軒が出てくるのは、

知人原穂村氏が友人吉川霊華君の後援会を作るから是非来てくれとのことであつた。会場は田端の天然自笑軒。集合者は入江為守子、谷森眞男男、松方五郎、別府金七其他五六人であつた。(略)霊華君未だ世間に知られず、其の知られ出したのは、金鈴社に入つてからである。

というところである。吉川が鏑木清方、松岡映丘、結城素明平福百穂金鈴社を結成するのは大正5年4月なので、後援会が自笑軒で開催されたのはそれ以前の話である。

*1:「すきがへし」と読むようだ。