四天王寺春の大古本祭りが終了しました。今回古書あじあ號が目録参加のみ*1で、会場は不参加でした。体調がお悪いようです。御回復され、次回を期待しています。あじあ號というと、均一台で買い逃した本を思い出す。「買った本より買い逃した本の方がいつまでも記憶に残る」というのは、古本者の皆様には共感していただけるだろう。
あれは、5年前の四天王寺だった。あじあ號の500円均一台に背表紙に『復興』と書かれた雑誌の合冊版らしきものがあった。タイトルから関東大震災からの復興に関する雑誌かなと思っただけで、目次を見ることもしなかった。ところが、翌日吉永さんが入手され、民間精神療法に関する珍しい記事が載っていたという。悔しいので詳しい話を聞かなかった。そのためどういう雑誌とか記事の詳細も分からない。大谷大学図書館が創刊号を有する『復興』(大谷大学内復興社、大正13年1月)と同じものかどうか。
私はその時のあじあ號からは、「心斎橋のヨネツ子供服装店と三条寺町のコドモヤ洋装店 - 神保町系オタオタ日記」で言及した『日本婦人』(日本婦人新聞社)5冊(大正12年4月~8月)を入手している。値段が付いていないので、店主に聞くと1冊1,000円だという。どうしても欲しい雑誌ではなく5冊5,000円ではなあと思ったが、今更返すのも恥ずかしいのでお買い上げ。まあ、京都発行の婦人雑誌で珍しそうだという意識もあった。
30号(大正12年5月)の目次を挙げておく。目次に記載はないが、「宇宙の大愛に触れよ」の執筆者は帆足理一郎である。残りの無署名の記事は、編輯発行兼印刷人の衣川延治の執筆なのだろう。目次と共に挙げた「『日本婦人』の使命」にあるように格調の高い雑誌で、実用的な婦人雑誌というより修養雑誌、更には宗教雑誌の感がある。それもそのはずで、この時点では特定の宗教性をうかがうものはないが、国会図書館デジタルコレクションで見られる『報告書8(司法研究;第21輯)』(司法省調査課、昭和12年3月)に、「京都市左京区西福の川天理教信者衣川延治著「吾れ天地を語る」と題する著書は、宇宙間の現象を天理教独特の教義に依り説明するもの」とある。この衣川の住所は、『日本婦人』奥付記載の日本婦人新聞社の所在地と一致する。また、天理大学附属天理図書館が衣川著の『神言註解やしきの言葉』(天光社、昭和10年)を所蔵している。大正12年当時から天理教の信者だったかは不明だが、後に天理教の信者となっていたことになる。
衣川の詳しい経歴は不明である。『新聞総覧大正11年版』(日本電報通信社、大正11年)によれば、『日本婦人新聞』(月2回)を大正10年5月12日に創刊している。中嶌邦監修『「日本の婦人雑誌」解説編』(大空社、平成6年1月)の「近代婦人雑誌関係年表」(三鬼浩子)によれば『日本婦人』は大正10年6月25日創刊*2なので、同時期に婦人新聞と婦人雑誌を発行していたことになる。京都で手広くやっていたようだ。入手した『日本婦人』の裏表紙には、髙島屋呉服店や大丸呉服店の広告が載っていて、宣伝効果があると評価されていたのだろう。なお、令和4年阪神百貨店古書ノ市でモズブックスから同誌68・69号合本(日本婦人会、大正15年8月・9月)も入手しているので、発行所名の改称はあったものの5年間は続いたことが確認できる。
追記:むしろ古書あじあ號が「日本の古本屋」に大正13年6月号を出品して売り切れた大阪の復興社が発行していた『復興』の方かもしれない。