神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

文部官僚にして絵馬蒐集家の鶴岡春三郎

 鶴岡春三郎「常陸眞壁地方特殊民雑話」*1を収録した礫川全次編『穢れと差別の民俗学』では、不詳とされてしまった鶴岡。この人は、木村捨三編『千里相識』(集古会、昭和10年9月)*2によると、

鶴岡春三郎 明治二十四年一月廿一日生
一(出生地)東京目白台
二(住所)杉並区天沼二丁目四九二
三(職業)文部省官吏*3
四(研究事項)江戸時代名物、迷信に関するもの、墳墓に関すること
五(蒐集)絵馬、御影、土製玩具、燐票
六(本姓名乗雅号)春盞樓、時に毛賀生太郎の変名を使用す

このほか、大正5年7月鳥居龍蔵、福良竹亭、沼田頼輔、尾佐竹猛らが創立した武蔵野会の機関誌『武蔵野』(大正7年7月創刊)に盛んに執筆している。大正15年4月には、林若樹、三村竹清三田村鳶魚、木村仙秀、笹野堅らと『彗星』を創刊。山口昌男内田魯庵山脈』には、斎藤昌三の『いもづる』4巻3号(大正15年5月)の「趣味往来」に福島から投書した人物として名前があがっている。

(参考)9月30日

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サントリー学芸賞選評集』(財団法人サントリー文化財団、2009年11月)所収の山崎正和「学芸賞の三十年と歴史的な意味」によると、

・私は、当初受賞者の最高年齢を四十歳に抑えたいと考えていたのだが、候補作品を集め、選考委員と相談するなかで結局、五十歳に引き上げることに決め、実際の選考ではそれを超える受賞者を出すことにもなった。
・国際性と並んで学際性もこの賞の目標の一つだが、これも結果を見ると絢爛たる成果をあげた。色男に食道楽、こおろぎの闘技から「太平洋のラスプーチン」まで登場する賞は、まずほかにないだろう。
・二〇〇〇年代の日本の言論界を展望して、その半ば以上をサントリー学芸賞の受賞者が支えているといっても、傲慢のそしりを免れるはずである。

もし40歳以下という選考基準だったりしたら、猫猫先生はぎりぎりセーフ、黒岩比佐子さん、佐藤卓己先生はアウトだったということになる・・・

*1:『民族と歴史』8巻4号、大正11年

*2:『書物関係雑誌細目集覧1』所収。

*3:『職員録 昭和九年八月一日現在』に、文部省専門学務局の属として、名前があがっている。