神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2006-01-01から1年間の記事一覧

明治四十四年銀座のカフェーに先陣争い(その1)

明治44年銀座に相次いで、オープンしたカフェー、プランタン、ライオン、パウリスタ。当時の日記が残る森鴎外、小泉信三の日記を使って、どちらが先に入店したか調べてみた。 1 初戦はカフェープランタン 鴎外*1は、 明治44年5月20日 亀井伯夫人洋行の途に…

黎明期の日比谷図書館(その2)

市島春城の日記(『早稲田大学図書館紀要』34号、1991年3月)によれば、 明治39年10月18日 伊東平蔵来訪、東京市図書館の評議員を嘱託して去る。 明治39年10月31日 尾崎市長より市立図書館評議員を嘱托する旨通牒あり。 明治39年11月20日 三時より市役所ニ至…

黎明期の日比谷図書館(その1)

黎明期の日比谷図書館が登場する日記を見てみよう。 まずは、正木直彦(東京美術学校長)の日記(『十三松堂日記』第1巻)から。 明治41年2月7日 午後東京市役所内に開会の日比谷図書館評議員会に出席す 此評議員は肥塚龍 林謙三 中鉢美明 稲茂登三郎 坪谷善…

月の輪書林と丸山真男

丸山真男の安田つたゑ(故安田武夫人)宛書簡(1994年8月25日消印)*1によると、 貴信をいただいて間もなく、私の書いたものの目録をつくっている若い友人から来信があり、「古書目録八−’94年7月号」*2に、安田君宛封書四通、ハガキ二枚(昭37)が二十万円と…

後藤象二郎の孫とメディアの支配者

小島威彦の回想*1による、後藤象二郎の孫である川添紫郎の昭和9年のフランスへの旅立ちの様子。 早春を迎えて、川添紫郎の渡仏送別会を牛込合羽坂の深尾邸の二階で催した。山本薩夫や谷口千吉や水木洋子、長谷川紀兄妹ら早大仏文の仲間で飲みあかした。初夏…

京都学派と弘文堂

竹田篤司『物語「京都学派」』(中央公論新社、2001年10月)によれば、 三木[清]以後の、下村のいわゆる「若い層」の労作の出版を、弘文堂は一手に引き受け、彼らを世に出すために絶大な貢献をした(「西哲叢書」に次いで「教養文庫」創刊)。いわば「京都学…

鎌倉に読書はあったか −西田幾多郎と東田平治の接触−

「東田平治って何者だ?」って・・・ わしも知らん(笑 知らんが、最近の「書物蔵」に頻繁に出てくるから、図書館界では偉い人に違いない。 日比谷図書館長中田邦造の弟子だったみたいだが、その中田と共に、西田幾多郎の日記*1に出てきた。 昭和20年4月22日…

麻布の古本屋小川書店と柳田國男

柳田國男の『炭焼日記』には古本屋さんも登場する。 昭和20年7月18日 古川橋の古本屋小川勝蔵来、色々の本をもたせてかへす、よき商人と見ゆ。 念のため、反町茂雄『一古書肆の思い出』を見ると、第2巻に麻布の小川書店の小川勝蔵として、出ていた。 追記:…

森茉莉のために一肌脱いだ吉野作造

吉野作造の日記*1に、森茉莉に関する記述があった。 昭和4年6月16日 森鴎外夫人より電話あり 遇ひたいと云ふ 夜来て貰ふことに返事して九時内を出る(中略)七時過帰宅す 鴎外夫人来て居られる 山田珠樹君の所へゆかれた令嬢翻訳ものをされ岸田国士君に見て…

西田幾多郎教授の総回診

唐木順三の回想「西田門下の人々」*1の次の一節。 読者諸君、こころみにかういふ情景を頭に浮べてみたまへ。 西田教授から四五歩距てて田辺元、和辻哲郎、天野貞祐といふ助教授たちがついてゆく。教授は午後三時からの講義に臨むためである。(中略) 教授、…

中村正直を食いつぶした神保町珊瑚閣の息子

南方熊楠の大正8年9月3日上松蓊宛書簡*1で、中村一吉という面白そうな人物に出会った。 中村一吉氏(珊瑚閣と申す表神保町辺の書肆主人、中村正直先生を世話せしことあり。その恩を謝するため先生一女あるに約束通り珊瑚閣の悴を婚わせ嗣子とせしなり。この…

折口信夫の見た金尾文淵堂

折口信夫「詩歴一通」*1によれば、 同じ月*2に薄田泣菫の『暮笛集』も出た筈だが、これは翌年になつて仲兄に教はつて、当時南本町にあつた金尾文淵堂で求めた。今から思へば、出版史の上に書いてよい当時としては豪華な本で、而もこれが自分の手で最初に購う…

柳田國男の幻の妻 −木越安綱夫人貞−

三村竹清の日記(『演劇研究』掲載)については、山口昌男『内田魯庵山脈』で言及されているところである。その三村の日記には、榊原芳野についての詳細な記述があるほか、柳田國男についての瞠目すべき記述*1がある。 大正7年9月21日 此間柳田にて買ひし 木…

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!? 弥吉光長・吉村貞司兄弟

図書館界のビッグネーム、弥吉光長ネタがとうとうキターだす。 あるジャーナリストの日記に、弟で文芸評論家の弥吉三光(かずみつ。吉村貞司)とともに登場するのである。 昭和6年5月15日 午前、彌吉三光氏*1来訪。 昭和6年7月12日 彌吉*2氏午後来訪。三光氏…

大いにやせた国文学者鈴木棠三君

柳田國男の『炭焼日記』には、多彩な人物が登場して楽しめる。 横山重『書物捜索』で「序に代えて」を書いている、鈴木棠三も登場する。 昭和20年11月16日 鈴木棠三君大いにやせて来る、今諏訪の富士見の山に在り、書物疎開の手伝、内閣文庫の本の中に自分の…

丸山真男と水島爾保布

丸山真男については、「未来」で没後十周年特集をしていたが、とっつきにくいイメージがどうしてもつきまとう。しかし、そんな丸山にも面白いエピソードを発見した。 「如正閑さんと父と私」(『丸山眞男集』第16巻)によれば、 まず、水島爾保布。この人は…

四天王寺べんてんさん青空大古本祭は今年も雨(かと思ったが晴れた)

けふはダレゾも来るかもしれぬ。古本祭。 昨年、雨に泣かされたが今年も雨だすね。普段「台風よ、来い!」と言ってたバチかもね(笑 追記:ダレゾの執念か、晴れただす(笑 でも、またどんより曇ってきた・・・ ところで、古書店は掲載されていないが、大阪…

新聞学の小野秀雄に関する噂

戦後、東大新聞研究所所長、日本新聞学会会長を務めた小野秀雄。 ベストセラー『旋風二十年』の著者、森正蔵の日記*1に彼に関する噂が記されている。 昭和21年9月6日 「東京日日」のための新聞用紙配給が否決されたことについては、まだいろいろ折衝が続いて…

帝国図書館員朝倉無声の図書破壊疑惑(その3)

初代早稲田大学図書館長市島春城の日記(『早稲田大学図書館紀要』)によれば、 明治39年10月31日 朝倉亀三より円光寺活字若干を贈らる。 明治40年9月15日 朝倉亀三より名家書翰二軸を示さる。直ちに購入。 明治40年9月18日 朝倉亀三より馬琴の手柬壱通を贈…

帝国図書館員朝倉無声の図書破壊疑惑(その2)

もちろん、この記述だけでは朝倉の破壊行為の証拠にはならないけどね。 さて、帝国図書館の蔵書の切取り行為について、識者の声を聞いてみよう。 まずは、柳田國男*1から。 日本に唯一つの国立図書館、しかも帝都の大公園と併存する図書館の中にも、駆除し難…

帝国図書館員朝倉無声の図書破壊疑惑

最近、日本人のモラル低下の例として、図書館の本の切取り行為や無断持出し行為が挙げられているという。「書物蔵」参照。 単に図書館員による感覚的なものなのか、データによる裏づけがあるのか、知らないが、昔から図書破壊行為などがあったことは間違いな…

北京近代科学図書館長山室三良

岡村敬二氏によれば、国際文化振興会の北京駐在員でもあった、北京近代科学図書館長山室三良。 さすがの日記好きのオタさんでも、日記には登場しないだろうって? 見つけたのだ! 東京美術学校長(明治34年8月〜昭和7年3月)であった正木直彦(文久2年−昭和1…

戦時下の日独図書交流?

国際文化振興会について、岡村敬二氏は『遺された蔵書』で次のように記している。 国際文化振興会とは知的協力国際委員会および「対支文化事務局」を源流として昭和九年四月に設立された財団で、中国だけでなくアジアや欧米各国に対して広く文化事業をうけ持…

水野梅暁本を狙う(その2)

水野は、藤澤親雄とも一時期行動を共にしたようで、阿部洋『「対支文化事業」の研究』(汲古書院、平成16年1月)にも、「東亜文化協議会」*1設立の関係で登場する。 日本側では特務部の意をうけた藤澤親雄(大東文化学院教授)および水野梅暁の斡旋で、貴族…

水野梅暁本を狙う

森銑三の『読書日記』(『森銑三著作集続編』第14巻所収)には、前から気になっている記述がある。 昭和8年6月24日 夜水野梅暁氏の「満洲国図書館の保有せる文化的資料と其の価値」を読む。奉天文溯閣の『四庫全書』の無事なりしことまづ悦ぶべし。 この水野…

未來社創業者西谷能雄の謎(その2)

国民精神文化研究所の所員であった志田延義や山本饒とは異なり、格下の助手であったためか、堀は戦後公職追放を免れ、昭和25年以降國學院大學、東北大学、東京大学、成城大学の教授を歴任。次に、未來社の創業者西谷能雄について、見てみよう。 西谷能雄(に…

未來社創業者西谷能雄の謎(その1)

未來社というブランドからイメージされるのは、丸山真男、宮本常一。 そのブランドから、古本本が刊行されるというから画期的といえば画期的、異色といえば異色。 向井透史『早稲田古本屋街』がその本だが、既に販売されているみたいだけど、まだ私は見てい…

ブータンの神保町系女子

ジュンク堂書店のPR誌「書標」9月号は、「文化系女子」特集。 文化系女子なる言葉がはやりらしい。神保町でも女性の活躍が目立つ。 女性古書店主や、古書展めぐりをする女性、はたまた「女エンテツ」さんも・・・ そこで、これらの女性を「神保町系女子」と…

寺田寅彦と謎の本郷カフエー

『日本の名随筆別巻3 珈琲』中の寺田寅彦「コーヒー哲学序説」*1によると、 ドイツに留学するまでの間におけるコーヒーと自分との交渉についてはほとんどこれという事項は記憶に残っていないようである。(略) 西洋から帰ってからは、日曜に銀座の風月へよ…

青弓社の復刊選書

青弓社の復刊選書で、一柳廣孝『催眠術の近代日本』と田中聡『健康法と癒しの社会史』を見る。 確か、どちらも黒岩比佐子さんの『『食道楽』の人 村井弦斎』の参考文献*1だったし、私も好きな本である。復刊はいいことだけど、「中身が読めたらいい」派の私…