神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

中村正直を食いつぶした神保町珊瑚閣の息子


南方熊楠大正8年9月3日上松蓊宛書簡*1で、中村一吉という面白そうな人物に出会った。


中村一吉氏(珊瑚閣と申す表神保町辺の書肆主人、中村正直先生を世話せしことあり。その恩を謝するため先生一女あるに約束通り珊瑚閣の悴を婚わせ嗣子とせしなり。この一吉氏神楽坂辺の芸妓にのろけ、せっかく先生の作り上げたる身代を片はしから無用のことに費やし、毎度世話のかけ通しなりし。外遊二回までせしも何たる成績挙がらず。フィラデルフィアで歯科卒業し歯科医となり東京にありしが一向聞こえずなり候)


高橋昌郎『中村敬宇』(吉川弘文館、昭和41年10月)を見るも、こんなことは全然書いていない。同書の参考文献一覧によると、『西洋品行論』スマイルス原著(珊瑚閣、明治11年3月〜13年2月)とか、『敬宇詩集』嗣子中村正一著とかあるみたい。また、ググると、中村敬宇『自叙千字文』(明治20年3月)の発行者は中村一吉とあった。

*1:南方熊楠全集』別巻第一所収