ジュンク堂書店のPR誌「書標」9月号は、「文化系女子」特集。
文化系女子なる言葉がはやりらしい。神保町でも女性の活躍が目立つ。
女性古書店主や、古書展めぐりをする女性、はたまた「女エンテツ」さんも・・・
そこで、これらの女性を「神保町系女子」と名付けよう。
神保町系女子の一人、黒岩比佐子さんの「古書の森日記」によると、ブータン王妃は複数いるとのこと。日本とはなじみの薄いと思われるブータンの王妃だが、スメラ学塾の小島威彦が、50年程前遭遇している。
小島の自伝『百年目にあけた玉手箱』第7巻(創樹社、1996年11月)によると、昭和32年11月9日、小島が招いたフランスの哲学者、ガブリエル・マルセルの講演旅行に同行した京都へ向かう特急での出来事。
隣に静かに腰かけていた妙麗の婦人も食堂車へ移っていった。お付の臣下のような、日本の短衣のような服装の者が入口で恭しく礼をもって案内している。印度の土侯かと思うとそうでもない。腕や脚に飾りに施された純金の装飾はブータンの王族の衣装のようであるが、どう見ても日本の品格ある貴婦人のようにしか見えない。(略)そして驚いたことに、「ガブリエル・マルセル先生じゃありませんか。私は数年前に、オックスフォードで、先生の講義を伺いました。私はブータンの王妃ですが」(略)「日本に永く御滞在ですか」「いいえ、まだ数日なのですが、私の母が日本を尊敬しているばかりではなく、大変好きで、もう二度も日本を訪ねていまして、私にも是非見てこいとすすめるものですから」「お一人で」「ええ、私一人で、王は印度の帰りに香港で私を待っていますの」「日本はいかがでしたか」「色んな意味で親しみを感じますね。(略)何だか風俗でも顔つきでも似通っているところがあって、親しみを感じまして、何か昔から連なりがあるようで、まず、日本の農業家に私の国をよく見ていただきたいと思っています。私の隣国のチベットやネパールには英国人が随分来訪しますが、不思議なことに日本人は全くと言っていいほど来訪者はありません」
今や、日本の女性も数多く来訪するブータン。この王妃は、ご健在であろうか。