神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

西田幾多郎教授の総回診


唐木順三の回想「西田門下の人々」*1の次の一節。


読者諸君、こころみにかういふ情景を頭に浮べてみたまへ。
西田教授から四五歩距てて田辺元和辻哲郎天野貞祐といふ助教授たちがついてゆく。教授は午後三時からの講義に臨むためである。(中略)
教授、助教授の姿が渡り廊下の向うにあらはれると、芝生に腰を下ろしてゐた一群が、いそいで腰をあげて、教室へいそぐ。(中略)木村素衛高坂正顕(中略)戸坂潤の姿はまづ毎週見えないことはない。(中略)
学生席の中には、下村寅太郎(中略)などがゐる。これは三回生である。(中略)樺俊雄、唐木順三(中略)などがゐる。これは二回生である。小島威彦、高山岩男(中略)などもゐる。これは一回生組である。
(中略)専攻が哲学ではない学生、社会学梯明秀、美学の中井正一といふやうな顔もみえる。(中略)洋行から帰つたばかりの三木清もまたにぎやかな存在であつた。
これが西田教授が停年退職に近い頃の、京大哲学の姿である。


名前を省略しなかった人物のすべてが後々まで小島威彦と関係を保ったというわけではないが、こういうつながりがあったのだね。戦後、国会図書館副館長(だったっけ?)になる中井正一の名前も出てきた。
しかし、講義に行く教授に助教授や門下生までぞろぞろついていくとは・・・

*1:昭和25年6月7日『日本読書新聞』、唐木順三全集第11巻所収