神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

古本

花見にも行かず『早稲田古本屋日録』を読む

先週の「週刊新潮」で紹介されていたからというわけではないが(て、どこかでも使った言い回し)『早稲田古本屋日録』を読んだ。 ちょうど、昨年は穴八幡宮の青空古本祭に行ったので、当日までの段取りが特に興味深かった。ブログでは読んでいたけれど、活字…

大川周明とトンデモ本の世界(その11)

4 大川周明と鵜澤總明(補遺) 鵜澤の名前を意外なところで見る。 『透視も念写も事実である』(寺沢龍著)によれば、霊の、じゃないや、例の千里眼事件で登場する高橋貞子(リングの「貞子」は、この名前からきているのだろうね)夫妻は、千駄ヶ谷の鵜澤の…

わすは「古本」に恋した

「波」3月号中「恋は粘りが勝負−松田哲夫(イラスト・内澤旬子)『「本」に恋して』」(山本容子氏:銅版画家)によれば、 恋の顛末を語る眼となり、頭の中のイメージを代弁する役目は、内澤旬子さんのイラストが務めている。松田さんの視線の動きや注視す…

「さぼうる」で夢の古本合戦(感動の最終回?)

南陀楼さん:ちょっと、アヤシゲな本にしようかと思ったけど、やめにして、昭和23年9月発行の「暮しの手帖」創刊号にした。当時は、「美しい暮しの手帖」というタイトル。ちょうど、世田谷文学館で『花森安治と「暮しの手帖」』展が開催されているしね。 …

「さぼうる」で夢の古本合戦(その6)

セドローさん:それじゃ、自分は右翼の古本屋(笑)らしく、児玉誉士夫先生の著作を紹介。昭和47年12月発行の『児玉誉士夫著作選集』全3巻。下巻に収録されている「甦れ日本のこころ」には、今泉定助先生とのエピソードが出てくる。 引用すると、『謹厳…

「さぼうる」で夢の古本合戦(その5)

書誌鳥さん:「満を持して、我輩の登場かな。昭和15年10月岡倉書房から発行の『世界人と日本人』。著者は大槻憲二。精神分析学者、文芸評論家だよ」 ジュンク堂の怪人:「江戸川乱歩の『わが夢と真実』収録の「精神分析研究会」によると、昭和8年初め頃…

「さぼうる」で夢の古本合戦(その4)

ジュンク堂の怪人さん:「ドタバタも終わったみたいなので、私がいってもいいでしょうか。 お得意の展覧会ものでいきます。平成3年に滋賀県は栗東歴史民俗博物館で開催された『明治の図書館 里内文庫と里内勝治郎』展の図録。 里内文庫っていうのは、明治4…

「さぼうる」で夢の古本合戦(その3)

退屈男さん:「では、次は僕が。これです」 書物奉行さん:「おっ!『皇道図書館目録』ではないか。 よく見つけたなあ!!若いのになかなかよくやるではないか。これで2冊目の出現だぞな、もし」 退屈男さん:「いや、いや、書物奉行さん、まなじりを決して…

「さぼうる」で夢の古本合戦(その2)

ジュンク堂の怪人 「藤澤は戦前、戦後にかけて世田谷区成城町892に 住んでいたんだよ。同じく、成城にいた、里見機関 の里見甫、柳田國男、鶴見祐輔と重なる時期がある。」 神保町のオタ 「相変わらず成城にこだわるね。 それじゃ、藤澤がらみで次は僕が…

 「さぼうる」で夢の古本合戦

今日も今日とて「さぼうる」で、仕事をさぼっている一団がいる。 神保町のオタさん 「書物奉行さん、遅いなあ」 退屈男さん 「いつものように、おっとり刀で駆けつけてくるんじゃないですか」 神保町のオタさん 「風邪の方はどう?」 退屈男さん 「ブックオ…

『雑読系』(坪内祐三著)中「福田久賀男の遺著となった処女作」から

古書通、博識家の一つの典型であった彼は、知ること多く、出すこと少なく、自らはあまり筆を取ろうとしなかった。文章を書くなどといったヤボな作業を嫌った。 (中略) 「『探書五十年』編集委員会後記」と題された、この本のあとがきに、こうある。 (前略…

『弘文荘訪問記』の続き

ようやくだれぞの読んだあたりまで追いつく。 あまり追い越してはいかんので一休み。 山田朝一、三橋猛雄、村口四郎、品川力、中山信行は 知っているが、石尾光之祐、八鍬光晴、小林晴生、 斎藤孝生(後から「玉英堂」と出てきた)って、誰だっけ? 一誠堂の…

『頭山満翁写真伝』(藤本尚則編)から

朝倉文夫氏の美術界に於ける存在は力強き一種特異の光彩を 放つもので、其人と為り立派な親分肌で『美術界の頭山』と の世評さへ耳にする事がある。さらにいへば朝倉氏の顔の大 きな方形の輪廓を始めあの秀れた逞しい鼻の恰好や、眼鏡の 底から閃めく強く而…

『古書に見る温泉−私の温泉史ノート抄−』(野口冬人著)から

最近では暇がないので、あまり歩きまわらなくなったが、 そのかわり高田馬場駅前ビッグボックスで毎月始めの一 週間ほど古書市が開かれる。ときどき行ってみるが、め ったに掘り出しものはない。ほとんど駄本ばかりである が、ときに思いがけない本がポンと…

『本棚探偵の回想』(喜国雅彦著)から

あったのは、本来本屋があるべきだろう場所にでんと 立っているブックオフのみ。大嫌いな店だ。出版不況 の原因の一つと言われているが、そのせいだからでは ない。僕の欲しい本が一冊もないから、でもない。看板 に「本」と書いてあるからだ。「古本」とは…

早速『紙つぶて』が受賞第一弾

『紙つぶて 自作自注最終版』(谷沢永一著)が第4回毎日書評賞を受賞。 まずは一つ目の受賞というところか。 まだ、買っていない(汗)わすも、うれしいなあ。 立ち読みという暴挙(笑)は行った。 1箇所確認したいところがあったから。 『日本近代書誌学…

「肥田せんせいのなにわ学展」

「肥田せんせいのなにわ学展」 INAX ギャラリー1(京橋)で 2月18日まで。 坪内祐三氏もナンダロウ氏も大阪で観覧済みのためか、 東京会場はあまり宣伝されていないか? (わすは大阪、名古屋でも見ていない。東京でみるか・・・エヘへ) 「論座」2月号…

『本道楽』(中野 三敏著)から

狩野文庫は狩野亨吉という稀代の目利きが十分に嗅覚を働かせて 集めた分類泣かせの集書といえるが、岩瀬の場合は、そんな嗅覚 などどこ吹く風、とにかくある物全部もってこい式に手当り次第 の集め方ゆえ、恐らく弥助自身、何があるやら殆んど御存知なか っ…

『私の稀覯本』(今井田勲著)から

変質で思いついたので『世界名作家庭文集*1』のもう一人の執筆者について書いておきたい。巻中に『ビスマルクの愛の手紙』*2という一冊がある。鉄血宰相ビスマルクと愛人とが交換した手紙で、鉄血どころか、情愛あふれんばかりの清廉な文章で、戦時中文部省…

『今和次郎』(川添登著)から

明治、大正期に、民間学者がきら星のごとく輩出して、偉大な業績 の数々を生んだ。そのなかには、現在にも影響を与えているものが少 なくないであろう。にもかかわらず柳田国男の民俗学など、ごく僅かな 例を除いて、そのほとんどは、継承、発展されることな…

『横田順彌のハチャハチャ青春記』(横田順彌著)から

特記すべきは高校二年生の時東横線・自由が丘駅近くの<文生堂書店>店頭均一台で、押川春浪という明治時代の冒険SF作家の処女作『海底軍艦』(博文館文庫版)ほか数冊を、一冊二十円で手に入れたこと。これが、ぼくの古典SFの研究と明治文化史の研究に…

『日本の経済学を築いた五十人 ノン・マルクス経済学者の足跡』(上久保敏著)から

思わぬ所に思わぬ古本屋があり、思わぬ品を置いているということが ある。自宅の最寄り駅から電車で10分足らずの古本屋がそうである。 誰にも教えたくない漁場のような存在だ。以下でみる作田荘一の『皇国 の進路』(昭和19年)もここで知った本である。 …

『横田順彌のハチャハチャ青春記』(横田順彌著)から

[一の日会]の仲間が、ぼくを古典SF研究家にしてくれたのだ。そのおかげで、 いまは、ほとんど蒲団一枚しか敷くスペースしかなく、あとはすべて古本に 囲まれるという生活をしているが・・・。数年前、二十年間生活を共にして きた妻に、突然離婚届けを突きつ…

 『古書巡礼』(品川力著)から

(日本文壇史)24巻の索引は大学の図書館の人がやったときかされて、いよいよ専門家の登場、講談社も索引に本腰を入れ始めたなあと思いながら眼をやると、古屋(こや)芳雄がFの部に、素木(しらき)しづ子がMの部、坪谷善四郎が坪内善四郎なんですよ。 (…

『横田順彌のハチャハチャ青春記』(横田順彌著)から

古書集めは前記のように中学時代から、ぼちぼちとやっていたが、買うのは、旧<宝石>のほかは<丸>や<画報戦記><世界の艦船><航空ファン><航空情報><海と空>といった戦記雑誌や飛行機関係雑誌、[世界航空文学全集]のルネ・ムシュット『大空への…

再び都丸書店

このようにして健康に恵まれているために、どこの古書展にもよく出かけているが、なかでも高円寺の古書展の時には朝早く眼がさめる。 ここにきて、かならず立寄るのは高円寺駅そばの都丸書店だが、社会科学・経済学書などが豊富にある本店でなく、人文科学が…

戒厳令下の古本市

あれほど、猛威を振るった新型インフルエンザもようやく下火に なりつつある200×年。戒厳令はまだ解除されていない。 ここは、神田○町、某古書会館前。時刻は、金曜日の午前9時過ぎ。 政府の自粛要請を無視して、強行されようとしている古本市。 未だ、…

 帝国図書館は、かすばかり

わたしが松井簡治という人物に惚れこんだのは、古書収集の 動機や目的を語った「わが蒐集の歴史」を読んでからである。 「書誌学」(7巻2号、昭和11年8月)に掲載されたもの で、簡治の談話を編集部がまとめている。 (中略) 帝国大学と取引している古…

平凡社新書『書店の近代』(小田光雄著)から

この『東京古書組合五十年史』は出版史資料としてよく利用 されているが、昭和56年(1981)に刊行された全国出 版物卸商業協同組合の『三十年の歩み』に関してはまったく といっていいほど言及されることがない。だがこの『三十年 の歩み』は古書業界…

『ある法学者の軌跡』(川島武宜著)から

終戦直後の或る時期、与謝(引用者注:後の相模湖町の一部) にいるあいだに、私はロシアの種々の本を読みました。その 直接の原因は、日本軍の全面降伏の直後、米軍が上陸してくる までの短い期間に、企画院という戦時中の官庁の所蔵していた 書籍が古本屋…