神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『私の稀覯本』(今井田勲著)から

変質で思いついたので『世界名作家庭文集*1』のもう一人の執筆者について書いておきたい。巻中に『ビスマルクの愛の手紙』*2という一冊がある。鉄血宰相ビスマルクと愛人とが交換した手紙で、鉄血どころか、情愛あふれんばかりの清廉な文章で、戦時中文部省推薦図書になったほどである。当時ドイツ文学では山岸光宣、茅野蕭々、それにこの本を推奨され、自ら翻訳に当ったJ・S博士の三人が独文三巨匠といわれていた。
そのJ・S博士とやはり新宿の「秋田」でお会いした。(中略)
「ええ、”主婦の友”にいた今井田です。ビスマルクの・・・。」
その時老紳士の顔が痙攣した。
「君か、僕はあの一冊で公職追放に指定されるところだった。実に不愉快だ。」

独文学者吹田順助が、公職追放に該当するとしたら、私はむしろ、アルフレート・ローゼンベルク『二十世紀の神話』を翻訳(中央公論社刊。上村清延と共訳)したことだと思うけどね。
ローゼンベルクの名は、最近、レオン・ゴールデンソーン著・ロバート・ジェラトリー編『ニュルンベルク・インタビュー』(河出書房新社)や、河野真『ドイツ民俗学とナチズム』(創土社)で見かけた。

*1:正しくは、世界名作家庭文庫

*2:正しくは、『ビスマルクの手紙』