神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

スメラ学塾

“永遠の処女”原節子は汚れていたか?

「書物蔵」の「珍しく畏友を援護」によると、原節子がスメラ学塾に協力していたようだ。 これは、初耳と思っていたら、小島威彦の自伝『百年目にあけた玉手箱』第5巻に、原の名前が出ていた。 その翌日、末次誠子*1が次女をつれて訪ねてきたところへ、珍客が現れ…

スメラ学塾より筑摩書房編集顧問を選んだ唐木順三

昭和15年創業の筑摩書房。塩澤実信『古田晁伝説』(河出書房新社、2003年2月)によれば、編集顧問として西田幾多郎の門下生、唐木順三を編集顧問として招くために古田らが成田を訪問している。 出版社創業の挨拶状*1を発送すると、晁は伊那谷から上京した臼…

後藤象二郎の孫とメディアの支配者

小島威彦の回想*1による、後藤象二郎の孫である川添紫郎の昭和9年のフランスへの旅立ちの様子。 早春を迎えて、川添紫郎の渡仏送別会を牛込合羽坂の深尾邸の二階で催した。山本薩夫や谷口千吉や水木洋子、長谷川紀兄妹ら早大仏文の仲間で飲みあかした。初夏…

京都学派と弘文堂

竹田篤司『物語「京都学派」』(中央公論新社、2001年10月)によれば、 三木[清]以後の、下村のいわゆる「若い層」の労作の出版を、弘文堂は一手に引き受け、彼らを世に出すために絶大な貢献をした(「西哲叢書」に次いで「教養文庫」創刊)。いわば「京都学…

西田幾多郎教授の総回診

唐木順三の回想「西田門下の人々」*1の次の一節。 読者諸君、こころみにかういふ情景を頭に浮べてみたまへ。 西田教授から四五歩距てて田辺元、和辻哲郎、天野貞祐といふ助教授たちがついてゆく。教授は午後三時からの講義に臨むためである。(中略) 教授、…

未來社創業者西谷能雄の謎(その2)

国民精神文化研究所の所員であった志田延義や山本饒とは異なり、格下の助手であったためか、堀は戦後公職追放を免れ、昭和25年以降國學院大學、東北大学、東京大学、成城大学の教授を歴任。次に、未來社の創業者西谷能雄について、見てみよう。 西谷能雄(に…

未來社創業者西谷能雄の謎(その1)

未來社というブランドからイメージされるのは、丸山真男、宮本常一。 そのブランドから、古本本が刊行されるというから画期的といえば画期的、異色といえば異色。 向井透史『早稲田古本屋街』がその本だが、既に販売されているみたいだけど、まだ私は見てい…

ブータンの神保町系女子

ジュンク堂書店のPR誌「書標」9月号は、「文化系女子」特集。 文化系女子なる言葉がはやりらしい。神保町でも女性の活躍が目立つ。 女性古書店主や、古書展めぐりをする女性、はたまた「女エンテツ」さんも・・・ そこで、これらの女性を「神保町系女子」と…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎

最終章 シュメールの黄昏(承前) 7 大文豪と小島威彦・原智恵子 小島威彦の自伝には、もう一人大文豪も登場する。某文豪が、妻の末妹にピアノを教えてほしいので、ピアニスト原智恵子を紹介してほしいと、小島に依頼するのである。この文豪と小島がいつ、…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎

最終章 シュメールの黄昏(承前) 6 上林暁と小島威彦が目撃した山田順子 戦前は、スメラ学塾や戦争文化研究所、世界創造社、日本世界文化復興会を創設し、戦後は、クラブ関西、クラブ関東の設立に奔走した小島威彦。軍人や財界人、同僚である国民精神文化…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎

最終章 シュメールの黄昏(承前) 5 国民精神文化研究所所員吉田三郎の謎 国民精神文化研究所歴史科の所員兼興亜練成所練成官であった吉田三郎は、スメラ学塾の講師を務めたり、佐藤卓己 『言論統制』によれば講談社の顧問になるなど志田延義同様積極的な活…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎

最終章 シュメールの黄昏(承前) 4 弘文堂と国民精神文化研究所所員山本饒 国民精神文化研究所助手、所員を務めた山本饒の公職追放該当事項は「著書」。具体的にどの著書が該当するのか不明*1であるが、どのような人物であったかある程度判明した。 小島威…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎

最終章 シュメールの黄昏(承前) 3 国民精神文化研究所所員志田延義の記憶の片隅 小島の著書『世界創造の哲学的序曲』の出版記念会については、6月30日に言及したところであるが、小島自身は自伝『百年目にあけた玉手箱』第2巻で次のように回想している。 …

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎

最終章 シュメールの黄昏(承前) 2 スメラ学塾とスメラ民文庫 鈴木庫三(佐藤卓己 『言論統制』)はともかく、「クラブシュメールって?」という人は、4月15日、22日、23日あたりを見ていただきたい。また、スメラ学塾についいては4月21日を参照。 スメラ…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎

最終章 シュメールの黄昏 今月号の「彷書月刊」の執筆者に坂倉準三の妻ユリの名前があって驚いた。クラブシュメールの関係者で健在の方がまだいたとは。ということで、ほっておいたこのシリーズの最終章をアップすることにした。 1 海後宗臣と国民精神文化…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(番外)

3 やはり春陽堂の編集者だったか、仲小路彰 高橋輝次『古本が古本を呼ぶ』には、次のように記されていた。 この本[小田嶽夫『文学青春群像』]で(中略)昭和初期の春陽堂の文学関係の編集者として難波卓爾と仲小路彰がいて、二入とも、坪田譲治に敬意をいだ…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(番外)

2 上林暁と小島威彦(承前) 例によって、余談だが、「満田巌」という改造社の出版部にいた人物についてついでに述べるが、彼もスメラ学塾に関わる人物である。 「特高月報」(昭和17年11月分)の「運動日誌」11月13日の条には、 スメラ学塾に在りては本月…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(番外)

2 上林暁と小島威彦 上林暁には、全くと言っていいほど、興味はないのだが、五高で小島と同期生だったということで、その後の小島との交友には関心がある。 小島の『世界創造の哲学的序曲』(昭和11年1月)は、改造社の発行なので、同社の編集者であった上…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(番外)

解けないシュメールの最終定理 「情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎」の最終章をアップするまでに、調査不足で結局解けなかった謎のいくつかを報告しておこう。 1 便利堂とクラブシュメール 岩波書店アネックス2階に美術はがきギャラリー京都便利堂を…

鴎外のトンデモ、露伴の非科学(その5)

鴎外の日記には、勿論トンデモではない人、例えば山田珠樹や、金尾種次郎なども登場して楽しめるのだが、そろそろ幸田露伴の出番としよう。 片岡貢司「太平洋のムー大陸」(『公論』昭和17年5月号所収)によれば、 この象形文字について傾日私は幸田露伴…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(その26)

12 トンデモ・バスター島田春雄がシュメールを斬る!(承前) 「特高月報」の「運動日誌」に、面白い記事があった。 昭和18年9月2日 スメラ学塾に在りては指導者小島威彦の引退以来活動消極的となり主として文化方面運動の活動を行ひつつあるところな…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(その25)

12 トンデモ・バスター島田春雄がシュメールを斬る!(承前) 島田春雄の『日本語の朝』(昭和19年6月)所収の「常若(とこわか)なる古典」(初出は「公論」昭和17年7月号)によると、 近時日本に於て唱道されつつある奇々怪々なる古代日本論を見よ…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(その24)

12 トンデモ・バスター島田春雄がシュメールを斬る!(承前) 「全然違ふ」、白を切る藤澤だが、既に見たように、小島編集の「ナチス叢書」への執筆や、『新若人』への執筆や小島との対談など、小島のグループとは密接な関係があった。 また、この偽史論争…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(その23)

12 トンデモ・バスター島田春雄がシュメールを斬る! 偽史論争で藤澤親雄をやっつけたり、『日本語の朝』の著者である国学院大学教授兼附属図書館長島田春雄が、書誌学者島田翰の次男だったということは、書物奉行さんや書誌鳥氏にだけ(?)ウケたみたい…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(その22)

11 戦時下の出版社アルスとスメラ学塾(承前) 末次信正は、海軍大将、昭和15.5〜19.2スメラ学塾頭。 於田秋光(陸軍中佐)は、スメラ学塾講師、昭和16年11月に第16軍参謀(作戦主任)。 刊行されたかどうか不明であるが、広告によればその…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(その21)

11 戦時下の出版社アルスとスメラ学塾(承前) 川上健三は、日本地政学グループの一員。明治42年生まれ、昭和8年京都帝国大学文学部史学科(地理学)卒。台湾で一時教職に就いた後、参謀本部、大東亜省へ勤務。戦後は、外務省条約局参事官、ソ連公使な…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(その20)

11 戦時下の出版社アルスとスメラ学塾 出版界には(にも?)疎い私は、アルスといっても、よく知らないのだが、ググってみると、「古書の森日記」の2月8日に、「アルス(ARS)とはラテン語で芸術を意味し、北原白秋と弟の北原鉄雄が大正4年に創立した…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(その19)

10 スメラミクニの皇族高松宮殿下 佐野眞一の『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三』は読んだかな。 同書には、 戦後、高松宮が困窮生活に陥るのを心配して、敬三が高松宮の旧邸を光輪閣として一般に開放し、国際レセプション会場などに提供するとともに、高松…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(その18)

9 ダ・ヴィンチ展覧会・コード 昭和17年7月10日から10月10日(注)にかけて、上野池端の産業会館で開催された「アジア復興レオナルド・ダ・ヴィンチ展」。 主催は、日本世界文化復興会。情報局、陸海軍省が後援した。 「レオナルド・ダ・ヴィンチ…

情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(その17)

8 ムー大陸の怪人と『新若人』の快人(承前) 親猶主義者とされる藤澤だが、『新若人』(昭和17年10月号)の「近代の終焉と新世界の誕生」では、次のようなことを言っていた。 皇国は唯むやみにユダヤ人を排斥せんとするものではない。彼等が世界各国か…