神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

文藝

金座後藤の末子としての後藤末雄さん

三村竹清の日記*1になぜか後藤末雄(谷崎潤一郎の友人)が出てくる。 大正7年11月3日 朝 竹栢園へ行く 後藤季[ママ]雄といふ人にあふ 肥たる鼻の大きなる五分刈之めかねをかけたる若き人也 帝国文学之編輯をして居る仏国文学をやる人之由 金座後藤之末子也と…

モダンガールの北澤秀一

斎藤美奈子。小谷野敦氏とは、仲がいいのか悪いのか、結局よくわからないが、それはさておき、『モダンガール論』で次のように言っていた。 日本におけるモダンガール(正確にはモダーン・ガール)という語の初出は、関東大震災の翌年の女性誌(『女性』大正…

赤木桁平と薄井秀一

赤木桁平こと、池崎忠孝。今では、「「遊蕩文学」の撲滅」の著者としてのみ名前が残っているらしい。 薄井秀一。明治末期の千里眼の時代に、東京朝日新聞の記者として『神通力の研究』を執筆。 この両者は親しい仲であった。 赤木の追悼録*1所収の朝倉文夫「…

煎餅を焼くのが嫌になった平井呈一

河東碧梧桐の日記「海紅堂昭和日記」によると、 昭和8年11月23日 うさぎやの弟平井程一君従来塩煎餅屋を営みしが氏ハ小説家希望にて煎餅をやく気のりせず近来うつちやり放しのよしきく 我が家族之を継承してやるべしとうさぎやに相談す 常収入のないアヤフヤ…

倉田啓明と坪内逍遥の関係

谷崎潤一郎や坪内逍遥の名を騙ったとされる倉田啓明。6月12日に紹介したところである。 その倉田と逍遥の関係に疑問が生じてきた。 逍遥の日記によると、 大正6年1月17日 倉田啓明より脚本稿を、イプセン模倣ニテ物に成らず 6月25日 朝 倉田啓明 「葛城の神…

最相葉月の残された宿題

誰ぞも読んだという最相葉月『星新一 一〇〇一話をつくった人』(新潮社)。 最相さんは、『SF japan』夏号のインタヴューで次のように語っている。 お父さんは、まだまだ謎が多いですね。私自身も興味があります。特に「中国、満州に進出した後の星製薬が何…

江見水蔭の死に泣く鶯亭金升

村井弦斎の死について言及した日記は見つからないが、江見水蔭の死について言及した日記があった。鶯亭金升の日記*1がそれで、昭和9年11月13日の条に次のような記述があるという。 江見水蔭氏伊予の松山にて死去の由。行年六十六歳 明治の昔 通油町の山岸商…

ただ者ではなかった「浩水君とやら」

中井浩水君は、やはりただ者ではなかったみたい。 『日本文壇史』第11巻には、『早稲田文学』の姉妹誌として明治39年6月に創刊された『趣味』の編輯者として、西本翠蔭、東儀鉄笛、土肥春曙、水口薇陽、水谷不倒とともに中井の名前が挙がっている。 また、中…

『先生とわたし』刊行記念対談を読む

『波』7月号をようやく拾う。四方田犬彦と巽孝之の対談あり。 四方田 (略)僕がこの本を何とか書けたのは、自分が英文学の世界にいなかったからでしょう。もう一つは、僕は東京大学にいないということです。おそらく東大の中にいたら書けなかった。例えば東…

星新一もぼけていたか!?

まだぼけていなかった頃の城山三郎の『落日燃ゆ』に 大空襲の夜から一週間後、広田は箱根強羅の知人の別荘に現れた。家を焼かれ、そこへ避難してきているという口実であった。 とある。この「大空襲」とは昭和20年5月25日の空襲のことであり、「知人」とは星…

高見順と玄洋社々員横山雄偉

大西比呂志「ドン・ブラウンと横山雄偉」(『図説ドン・ブラウンと昭和の日本』)には、横山雄偉について 横山は帝国ホテルに個人事務所を構え、旧知の広田などを通じて外務省やドイツ大使館から情報を入手したほか、陸軍の憲兵隊や特務機関とも密接な関係を…

吉祥寺さかえ書房と金子光晴

『おに吉』に載っている吉祥寺の「さかえ書房」の広告には、「金子光晴の書による看板が目印」と書かれている。 『金子光晴全集」第15巻(中央公論社、昭和52年1月)所収の「日録(2)」*1を見ていたら、「さかえ書房」が出てきた。 某月某日 午後から吉祥…

大本教の櫻井重雄と八雲邸の怪談の会

『會津八一全集』第11巻(中央公論社、昭和57年10月)によると、 昭和29年1月20日 もとの大本教の櫻井重雄来訪。もと早中につとめし人にて、早大にて高田保等と同期なりしよし。小泉八雲邸にて怪談の会を開きしこと、また俳句会を開きしことなど思出噺をなし…

Wanted! 武田麟太郎

『朝日ジャーナル』1962年1月7日号の座談会(正宗白鳥・広津和郎・小林秀雄・高見順)「明治・大正・昭和三代の文学・人間・社会」を読む。 高見 ぼくらの学生時分、たとえば下宿なんかなんにも払わないでいて、友だちが来ると客膳を出してもらってね、借金…

谷崎潤一郎・坪内逍遥を騙る倉田啓明

細江光『谷崎潤一郎 深層のレトリック』によると、『東京日日新聞』(大正6年12月13日、同月17日)に、倉田啓明なる悪文士が、8月15日、坪内逍遥の紹介状を偽造して『黒潮』に「結搏葛城の神」を売りつけようとしたり、谷崎潤一郎の名も騙っていたことが記さ…

何用あってフロイトを読む坪内逍遥

なぜかフロイトを読む坪内逍遥*1。 大正9年10月4日 Erotic Motive in Literature*2を読む 9年10月29日 Psycho Analysis 研究 9年11月19日 此頃中 折々Freud 及び其版のPsycho analysis 研究 *1:『未刊・坪内逍遥資料集』第2巻 *2:アルバート・モーデル(精神…

甲鳥書林の土橋利彦

斎藤茂吉の日記にも甲鳥書林が出てきた。 昭和17年2月3日 ○午前診療、来客石田徳太郎、土橋利彦 3月17日 ○来客、櫻井書店(中略)土橋利彦(甲鳥) 4月21日 ○来客、(中略)土橋利彦(甲鳥書林) 11月24日 ○来客第一書房斎藤春雄(中略)土橋利彦 19年12月11…

稲岡奴之助の娘と散歩する秋田雨雀

『秋田雨雀日記』第1巻を見ていると、 大正6年12月8日 晴。夜寒い。昼は温かに日光が輝いていた。今朝下村君がきて小林*1の撮影があるからといって誘いに来た。ちょうど其時稲岡奴之助の娘さんも来たのでみんなで出て行った。停車場前で井出*2の連中と逢った…

永代静雄の鳩事報国に賛同した協力者たち

天羽英二の日記には、永代静雄も登場する。 昭和17年3月10日 新聞研究所長永代静雄ヨリノ、大東亜伝書鳩総聯盟発起人ノ依頼相談 この「大東亜伝書鳩総聯盟」は、永代により昭和17年に創設された団体で、「大東亜ノ要域ニ鳩通信網ヲ建設スル」ことを目的とし…

第一書房の二人の社員

第一書房の社員の名前を著名人の日記で見ることができた。 斎藤茂吉の日記*1には、 昭和16年4月8日 来客(略)鍛代利通(改造)、(略)荑田貞二(文學士)、(略)木下(第一書房)等。 「木下」は、長谷川郁夫『美酒と革嚢 第一書房・長谷川巳之吉』に出て…

戦時下に迷惑な武林無想庵一家

『秋田雨雀日記』第4巻によると、 昭和20年7月23日 今日約一ケ月黒石に滞在した武林夢[ママ]想庵夫妻と、夫人の息子の広康君は黒石を出発して新潟に向った。新潟では画家の水島君のところに一時滞在するらしい。二人とも漂浪癖があって一ケ所に滞在する考え…

岩波書店の小熊虎之助?

菅原憲二他編『田中秀央 近代西洋学の黎明』(京都大学学術出版会、2005年3月)によると、[1920・21年]12月17日付け田中秀央宛岩波茂雄書簡に次のように記されている。 哲学辞典の編纂につきては一方ならぬ御尽力相煩はし奉謝候、(略)校正は小熊乕之助文学…

その時乱歩が動いた!

今日の10時からNHK「その時歴史が動いた」に乱歩登場(日本ミステリー誕生〜江戸川乱歩・大衆文化との格闘〜)。 そう言えば、都営地下鉄の駅でもらえるけれど、『中央公論アダージョ』創刊号(4月25日発行)は、「江戸川乱歩と浅草を歩く」特集。表紙が…

星製薬の謎(その2)

最相葉月『星新一』では、昭和26年1月ロサンゼルスで星一が亡くなったという訃報を受け開催された緊急の取締役会議に集まったメンバーとして、常務取締役の日村豊蔵、監査役の顧問弁護士花井忠のほか、元陸軍中将若松只一の名前を挙げている。 この若松は、…

星製薬の謎(その1)

戦後、星新一の下、星製薬の社長代理となる皆川三陸の名前を幾つかの文献で見つけたので紹介しておこう。 『右翼事典』(双葉社)の巻末の「右翼・民族派運動年表」昭和4年3月の条に、「黒龍会皆川三陸、船生利量等、政教塾創立」とある。 また、「柴田宵曲…

きまぐれオタのメモ

エス奉行 「最相葉月の『星新一』(新潮社)は読んだだすか?」 ジンボウ町のオタ 「読んだよ。ベタぼめはしないけれど、久しぶりにぐいぐい引き込まれるようなノンフィクションを見つけたという感じ。 猫猫先生もビックリというネタが出てくるよ。 星新一と…

市河彦太郎夫人、市河かよ子

市河彦太郎は、外務省文化事業部第二課長だった時に小島威彦が主宰する第一期スメラ学塾講座(昭和15年6月17日〜7月16日)に講師と参加している。翌年彼はイラン公使として赴任するが、現地でスメラ学を究めたかは不明である。赴任する前の市河夫妻が野上彌…

『ドグラ・マグラ』の校正をしていた柳田泉

『夢野久作の日記』によると、 昭和10年1月10日 十二時春秋社へ行き、鈴木氏享[ママ]氏、柳田氏、喜多氏、神田父子に会ひドク[ママ]ラマグラ記念会の相談をする。後大下宇陀児君の処へ行き又相談。水谷準、乾信一郎君と会ひ夕食の御馳走になる。 昭和10年1月…

大槻憲二の東京精神分析学研究所

『戦時下日本文化団体事典』第3巻(大空社、1970年7月。底本:『日本文化団体年鑑 昭和十八年版』)に、 東京精神分析学研究所 所在地 東京都本郷区駒込動坂町三二七 役員 所長大槻憲二、編集部員岩倉具栄、長崎文治 組織 会員組織(内部課−研究、講習、治…

諸岡存と夢野久作(その2)

『夢野久作の日記』(葦書房、昭和51年9月)によると、 昭和10年1月26日 大坂ビル。レインボーグリルに於てドクラマグラ発刊記念会。探偵小説作家。書店、画家。余の親戚関系[ママ]許五十余名。(略)テーブルスピーチ如次。(略)諸岡存(阿呆陀羅経否定*1…