神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

伝書鳩

小さなものへの視線を忘れなかった黒岩比佐子さん

黒岩比佐子『伝書鳩 もうひとつのIT』(文春新書)は、2000年12月刊行。同月27日付毎日新聞が早速「ひと」欄で、「「伝書鳩 もうひとつのIT」を出版した黒岩比佐子さん」を掲載している。そこには、例えば、 ・防衛庁の人に「こんなことを聞きにきた人は…

上毛新聞社で伝書鳩に餌をやる草野心平

草野心平の『わが青春の記』の「詩への絶望感」に、草野が上毛新聞者校正部時代にしていたもう一つの仕事が書かれている。 (前略)大晦日のひるひなか、それは私の日課の一つだったので工場のはじっぽの梯子段をあがって屋根上に出た。そこには伝書鳩の鳩舎…

黒岩比佐子さんと岡林信康氏

「フォークの神様と鳩」『正論』平成13年12月号によると、『伝書鳩』(文春新書)の刊行により、黒岩比佐子さんは、「鳩ともだち」とも呼ぶべき人脈が広がったという。様々な便りをもらい、その一人が、フォークの神様岡林信康氏だった。同年秋に会うことも…

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』(工作舎)への補足(その3)

書籍コード183は軍用鳩調査委員会編『軍用鳩通信術教程草案』(北林鳩具店印刷所、昭和10年)。これの原型は既に昭和2年6月には完成していたようだ。2007年3月17日に書いたが、井崎於菟彦大尉が、「鳩通信仮教程」を三田村鳶魚に渡している。三田村の日記の…

朝日新聞社の伝書鳩を心配する高見順

高見順の日記に伝書鳩ネタあり。 昭和20年1月26日 帝国ホテルの横山氏の部屋を訪れたが不在。四丁目まで歩く。朝日新聞社の上に伝書鳩が舞っている。何か眼をひかれた。 1月30日 (略)爆撃の被害地を見に行くことにし、地下鉄で銀座に出ようとすると、新橋…

井伏鱒二がリポートする大原漁業組合の伝書鳩通信

井伏鱒二の「外房の漁師」*1によると、 ここの大原漁業組合には伝書鳩を飼つてゐる。現在、七十羽ゐるさうだ。漁師は万一必要だと思ふときにはこれを三羽づつ持つて沖に出る。網が岩礁に引つかかつて潜水夫を入用のとき、または魚の大群に遭つて仲間の船を呼…

小野賢一郎と東京日日新聞の伝書鳩利用計画

黒岩さんの『伝書鳩』(文春新書)に出てくる東京日日新聞による菱田少将の「鳩の講演会」や「伝書鳩利用計画」。東日の記者だった小野賢一郎が関係していたらしい。『明治・大正・昭和』(萬里閣書房、昭和4年4月)所収の「鳩通信の話」によると、 (大正九…

『没収指定図書総目録』で楽しむ

西尾幹二『GHQ焚書図書開封 米占領軍に消された戦前の日本』(徳間書店)。タイトルから予想した内容にかかわる部分が、目次をみると第1章だけと思い、読みもせずに、「買わない方がいいかも」と言ってしまった。 しかし、パラパラ見てみると、多少面白いこ…

池田彌三郎と伝書鳩

池田彌三郎は、伝書鳩を飼っていたことがあるらしい。 『銀座十二章』によると、 さて、泰明小学校は、わたしが卒業した年(昭和二年)の暮れに、震災後のバラック建築を建て直すことになり、当時、滝山町一番地(今の西六丁目)にあった、朝日新聞社の旧館…

『江戸川乱歩小説キーワード辞典』に「比佐子」あり

『江戸川乱歩小説キーワード辞典』(東京書籍、平成19年7月)は高いので座り読み。 カフェー、上山草人、山窩、神保町、谷崎潤一郎、図書館、古本屋なども立項されている。 「鳩、ハト」を見ると、6作品に登場しているらしい。そのうち、伝書鳩として登場す…

永代静雄と満蒙研究所(補遺)

永代静雄と坂口二郎・大蔵公望について、書き忘れたことがあった。 坂口・大蔵は永代が昭和17年に創設した「大東亜伝書鳩総聯盟」の創立賛成人である。 この創立賛成人については、5月30日に紹介したところだけど、そこで挙げた人の他には、次のような名前も…

永代静雄と満蒙研究所

永代静雄は、田山花袋「蒲団」の田中秀夫のモデル 本邦における『不思議の国のアリス』の最初の翻訳者 「永代湘南」名義でSFを執筆(横田順彌氏の説) 新聞研究所の創設 伝書鳩の愛好家(3月23日、5月30日参照) として知られているが、別の顔を発見した。…

永代静雄の鳩事報国に賛同した協力者たち

天羽英二の日記には、永代静雄も登場する。 昭和17年3月10日 新聞研究所長永代静雄ヨリノ、大東亜伝書鳩総聯盟発起人ノ依頼相談 この「大東亜伝書鳩総聯盟」は、永代により昭和17年に創設された団体で、「大東亜ノ要域ニ鳩通信網ヲ建設スル」ことを目的とし…

永代静雄の鳩事報国

書物奉行氏が「文献報国」とすれば、黒岩さんは「鳩事報国」というべきか。 「鳩事報国」って、「オタさんの造語か?」って・・・ 戦前そういう言葉があったみたいなのだ。『戦時下日本文化団体事典』第3巻(大空社、1970年7月。底本:『日本文化団体年鑑 …

軍用鳩委員部の鳩中尉と三田村鳶魚

久しぶりに伝書鳩ネタが提供できる! 三田村鳶魚の日記(『三田村鳶魚全集』第25巻・第26巻)で、「軍用鳩委員部」なる言葉に出会った。 大正9年4月26日 山田益次氏、鳩中尉。 大正10年3月21日 ○井崎中尉新妻を挈へて来る。 大正11年1月1日 井崎於菟彦(中略…

伝書鳩班にいたのらくろ

マンガの中で伝書鳩を見た覚えがあるが、もしかしたら「のらくろ」だったのかもしれない。 『のらくろ一代記 −田河水泡自叙伝』によると、大正10年、22歳の田河は、陸軍一等兵として軍用鳩通信班に配属されるが、その時の中隊長の命令。 第十九師団軍用鳩研…

詩人と伝書鳩

高橋輝次『関西古本探検』で、「伝書鳩」関係の話を見た。『詩人黄瀛(こうえい) −詩集<瑞枝>復刻記念別冊−』(昭和59年、限定千部、蒼工舎)を採り上げ、詩人黄瀛(こうえい)について、 多くの人が印象的に触れているのが、軍隊では伝書鳩の係の隊長…

伝書鳩と均一小僧は古本道楽が過ぎてコショテン依存症に!?

日没後は、ふらふらしないことにしているのだが、昨日はお忍びでアンダーグラウンドブック・カフェのトークショー(黒岩比佐子さんと岡崎武志さん)へ。 最初は緊張されていた黒岩さんを巧みにリードされた岡崎氏はさすがと言うべきか。内容は、一言で言えば…

ユダヤ論者も伝書鳩が好きだった!?(その3)

三村の書には、様々な「新猶主義関係の人々」が登場する。 伝書鳩の研究から、秦氏ユダヤ人説を提唱した日下部照を紹介しよう。 氏の研究によれば、山鳩は日本島に発生した所謂「日本鳩」であるが、神社などにいる所謂「宮鳩」は渡来種だというのである。 (…

ユダヤ論者も伝書鳩が好きだった!?(その2)

小磯国昭って、知らないって? これだから、戦後生まれのバカ者、じゃない若者は・・・ おっと、わすも、戦後生まれだった(汗 小磯は、昭和19年7月から20年4月まで、内閣総理大臣。東京裁判で終身禁固となり、昭和25年巣鴨プリズンで死去。享年70…

ユダヤ論者も伝書鳩が好きだった!?

伝書鳩については、黒岩比佐子さんの文春新書『伝書鳩−もうひとつのIT』が存在するので、詳しくはそちらを見ていただくとして、同書にも書いていないネタを紹介してみよう。 1 反ユダヤ主義者と伝書鳩 『伝書鳩』には、「大戦終結後の1919年、以前の失…