神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

きまぐれオタのメモ


エス奉行 「最相葉月の『星新一』(新潮社)は読んだだすか?」


ジンボウ町のオタ 「読んだよ。ベタぼめはしないけれど、久しぶりにぐいぐい引き込まれるようなノンフィクションを見つけたという感じ。
猫猫先生もビックリというネタが出てくるよ。
星新一谷崎潤一郎の養女恵美子が見合いをしていたのだ。
本書には、恵美子とは明記されていないけれど、星と親しかった牧野光雄が新一と谷崎の娘の見合いについて証言している。それによると、谷崎の娘と見合いをしたところ、器量はいいのだけど、週1回上京しては三越で毎月十万円の買い物をするので、そんなに使われたら暮らしていけないということで、だめだったと星が言っていたということだよ。星の結婚は昭和36年3月、恵美子の結婚は昭和35年4月だから、二人の見合いは昭和30年代前半のことだと思われるね」


エス奉行 「猫猫先生こと小谷野敦先生が、『谷崎潤一郎伝』で谷崎が養女恵美子の縁談には苦労して、見合いをしてはうまくいかないことを繰り返したと書いてましたね」


ジンボウ町のオタ 「そうだね。星を谷崎家に紹介したのが誰であるかが気になるところだけど、そこまでは書いてないね。
星の母親についての新知見となる事実を鴎外の日記から発見しているのもさすがと言うべきことの一つだね」


エス奉行 「鴎外の日記については、オタさんも亀井貫一郎や谷崎潤一郎・精二、生方敏郎ネタで使ってましたね」


ジンボウ町のオタ 「そうそう、『神皇紀』も出てくるし、鴎外の日記には意外な活用法があるものなのだよ。
本書の取材対象者は134人ということらしいけど、何分ノンフィクションを書く場合の標準的な取材数がわからないので何とも言えないのだけれど、少なくとも本書にはそんなに証言者は登場しないから、この本を書く背景には、書かれていないインタヴューが数多くあるということだね。同じく女性ライターである黒岩比佐子さんもブログでそのようなことに言及してたね」


エス奉行 「労作なんだすね」


ジンボウ町のオタ  「うん。でも、一つだけ付け加えたいことがあるね。私ごときが、彼女に教えるというのはいささかおこがましいのだけど、新一の父一が亡くなった後の星製薬で社長代理を務めた皆川三陸という人物について、旧玄洋社系の人物かと推察されるが定かでないと書いているけれど、皆川は、明治33年4月、福島県石城郡勿来町生まれで、星一明治6年12月福島県石城郡錦村生まれ)とは同郷の人物。星一の後援を受け、政治運動に投じ、昭和4年に政教社に入り、15年2月には大日本生産党評議員になっているね。
戦中や戦後の星一・星製薬の実態の解明については、星新一が取り組みながら果たせなかったけれど、私としては是非、最相葉月さんに引き続き挑戦していただきたいと思っているよ」