神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2018-01-01から1年間の記事一覧

明治41年数え17歳の岸本水府が旅先から父親に送った絵葉書

今年2月水の都の古本展でモズブックスの3冊500円コーナーは某氏の旧蔵書を中心に放出されたようで、異常な熱気に包まれる事態となった。そんなモズブックスの絵葉書コーナーには川柳家の岸本水府宛葉書が大量に出ていた。数枚であれば全部買ってもいいのだが…

恩地孝四郎と版画の家の山口久吉

だいぶ前の寸葉会で拾った加藤和三郎宛山口久吉の絵葉書。昭和3年の年賀状で、山口の住所は神戸市中山手通4丁目18ノ2版画の家である。土地勘がないが、兵庫県庁の近く、相楽園の北東側か。山口の版画の家は、恩地孝四郎に詳しい人は御存知だろう。『恩地孝四…

戦時下における京都の青少年の娯楽ーー麻田鷹司の京都市立美術工藝学校時代の日記からーー

京都市立美術工藝学校の生徒だった麻田鷹司の日記については、「京都古書組合のムードメーカーだった若林春和堂の若林正治」で紹介したところである。『麻田鷹司ーー京都市立美術工藝学校時代の日記ーー』(麻田光子、平成12年4月)には、昭和16年4月から19…

洲之内徹と気まぐれな同人仲間

先日紹介した『四国文化』1輯(四国文化社、昭和18年9月)の「感想時評」に出てくる『四国文学』は、戦前洲之内徹が同人だった『記録』を改題したもの*1でした。「感想時評」を引用すると、 光田稔の四国文学はどうなつたのか、その後の音信にふれてゐないので…

『近代大阪』の北尾鐐之助と青塔社の池田遙邨

寸葉会で拾った西宮市北昭和町の北尾鐐之助宛池田遙邨の葉書。 北尾の著書は時々古書展で見かけるが買ったことはない。『日本の写真家』(日外アソシエーツ、平成17年11月)から北尾の経歴を要約すると、 明治17年3月9日名古屋市生 東京高商(現・一橋大学)中退…

『時代を駆ける:吉田得子日記1907-1945』(みずのわ出版)に大本教ネタ

女性の日記から学ぶ会編『時代を駆ける:吉田得子日記1907-1945』(みずのわ出版、2012年6月)は続編の戦後編が刊行された。どちらも装幀は林哲夫氏。とりあえず戦前編の方を読んでみると、宗教関係のネタが。 (大正9年) 6月9日(水)晴 (略)業後早くかへり居た…

米浪庄弌の『こけしだより』を積ん読本から掘り出す

何やら水害の危機が迫りつつあるようなので、一階の居間に積ん読だった本を二階へ避難させた。おかげで、色々埋もれていた本を発見。『こけしだより』2輯(おけしゑん米浪庄弌、昭和14年)は、ツイン21の古本市で「ぶんざい」出品、300円。値札シールに「ぶん…

戦時下の雑誌統廃合が進む中でも創刊された同人雑誌『四国文化』

何やら大雨でブログをアップしてる場合ではないような気もするが、本が使えるうちに書いておこう。 富士正晴・野間宏・桑原静雄により昭和7年10月創刊された同人雑誌『三人』は戦時下の昭和17年6月廃刊された。その経緯は富士の「同人雑誌『三人』について」…

富士正晴らに同人雑誌『三人』の発行を認めた第三高等学校教授平田元吉

第三高等学校教授で志賀直哉の英語の家庭教師だった平田元吉は、富士正晴・野間宏・桑原静雄(竹之内静雄)が発行した同人雑誌『三人』とも縁があった。富士の「同人雑誌『三人』成立」によると、 [昭和七年]五月一日、記念祭のとき、文三乙がやったゲーテ展会…

『田中恭吉日記』にひそめる宮武辰夫

6月18日の地震では、オタどん邸の被害はほぼゼロでした。ほとんどの本は段ボールや衣装ケースに入れてあるか、床に積んであるので元々落下しようがない状態です。それでも、積んである本の上部が数ヶ所崩れていました。 さて、宮武辰夫という人物については…

竹久夢二と京都の同人雑誌『ひゞき』(響社)

文庫櫂だったか「たにまち月いち古書即売会」で唯書房から拾ったか判然としないが、昨年『ひゞき』*1創刊号(響社、大正7年2月)という京都の同人雑誌を購入。編輯兼発行者は京都市丸山吉水庵室の有田篤太郎、発行所は同吉水庵安養寺内の響社。「響社清規」に…

クライン文庫の古書目録『クラインの壺』

古書店も閉店するとすぐに忘れられてしまう。勿論例外的に伝説として残る古書店もあることにはあるが、極一部に限られる。大阪にあったクライン文庫も四天王寺の古本まつりなどででよく拾えた古書店ではあったが、閉店して数年たち、もはや話題になることも…

蔵書票コレクター原野賢吉

関西学院大学博物館では「ポスターでたどる戦前の新劇展」を7月21日(土)まで開催中。同博物館は瞠目すべき展覧会が多く、2015年10月19日-12月12日に開催された「蔵書票(本を彩る版画)を愛した男ーー蒐集家原野賢吉の軌跡ーー」も非常に良かった。関西学院大…

東洋民俗博物館の九十九豊勝と足立史談会の福島憲太郎

寸葉会*1で入手した九十九豊勝(奈良県生駒郡伏見村あやめ池畔)宛の年賀状。差出人は東京市足立区千住阿原町の福島憲太郎。昭和12年の年賀状で、裏面には「千住小板絵馬・丑」の字と黒い牛の版画が印刷されている。 九十九豊勝については、山口昌男『内田魯庵…

恩地孝四郎の父恩地轍と上田貞次郎の父上田章

『上田貞次郎日記 明治二十五年ーー三十七年』(上田貞次郎日記刊行会、昭和40年5月)に恩地孝四郎の父恩地轍が出てくる。 (明治三十年三月) 七日 日 旧藩主徳川侯祖先南竜公祭典に付、御殿へ参上、来客に接す。同公年々の祭典は恰も旧藩士諸氏の親睦を温むる…

発禁になったオッペケペー節ーー永嶺重敏『オッペケペー節と明治』(文春新書)を読んでーー

名著『の誕生』(日本エディタースクール出版部、平成16年3月)で知られる永嶺重敏氏の『オッペケペー節と明治』(文春新書、平成30年1月)を拝読。地方新聞掲載のオッペケペー節に関する記事を丹念に拾っていてさすが永嶺氏と唸らせるものがある。気付いたこと…

昭和6年の件名簿から見た岐阜県海津郡海西村役場の公文書管理

昨年知恩寺古本まつりでキクオ書店の和本一冊300円(?)コーナーで拾った岐阜県海津郡海西村(現海津市)役場の件名簿。件名簿というのは、役場で受信又は発信した文書について、番号を付与し記録するもので、役場の文書課のような所で管理したと思われる。本書…

『北方人』29号にかわじもとたか『続装丁家で探す本 追補・訂正版』の近刊案内

盛厚三氏より『北方人』29号(北方文学研究会)を御恵与いただきました。ありがとうございます。一時期休刊するとの噂もあったが、無理をされない範囲内で長く続けていただきたいものである。 目次は、 創作/御城前のおババ(三) 通雅彦 創作/陀羅尼助丸の秘…

大正9年大西洋上で日本人に渡されたスエデンボルグ著・鈴木大拙訳『天界と地獄』

昨年善行堂でスエデンボルグ著・鈴木貞太郎(大拙)訳の『天界と地獄』(英国倫敦スエデンボルグ協会、明治43年3月)を購入。善行堂にしては中々いい値段で何やら英文の書き込みもある*1し、講談社文芸文庫から安藤礼二氏の解説付きで刊行されているのでおまけし…

『二級河川』19号のトム・リバーフィールド「戦前の東京堂版『出版年鑑』に掲載された訃報一覧」

『二級河川』19号(金腐川宴游会)を御恵投いただきました。ありがとうございます。前号に続きゲーム特集で、そちらは関心がないが、リバーフィールド氏の労作「戦前の東京堂版『出版年鑑』に掲載された訃報一覧」を拝読。東京堂から発行*1された『出版年鑑』…

日出新聞記者金子静枝と意匠倶楽部ーー京都市学校歴史博物館における竹居明男先生の講演への補足ーー

先日京都市学校歴史博物館で竹居明男同志社大学名誉教授の講演「『日出新聞』記者金子静枝の奮闘の生涯」を拝聴した。これまで京都関係の事典類に立項されてこなかった金子の研究*1に対する先生の溢れる熱意が伝わる講演で素晴らしいものであった。竹居氏の…

木山捷平と内務省検閲官佐伯郁郎

平成16年5月発行の『月の輪書林古書目録』13号は特集「李奉昌不敬事件」予審訊問調書であった。装幀は林哲夫氏。冒頭、木山捷平の『酔いざめ日記』からの引用で始まる。 一九三二(昭和七)年一月八日、金。 朝風呂にゆきひげをそる。午後三時すぎ、農林省営林…

明治・大正カトリック著述家筆名考

どこで拾ったか、『望樓』4巻3号*1(ソフィア書院、昭和24年3月)という雑誌がある。増田良二「明治・大正カトリック著述家筆名考」が載っているので購入したもの。同論考は、『公教雑誌』『天主の番兵』『通俗宗教談』『聲』『カトリック』等の諸雑誌から取…

昭和17年8月シンガポールで交錯したジャワ派遣の大木惇夫と日米交換船の鶴見和子・俊輔

書砦・梁山泊京都店で掘り出した(つもり)の『井上照丸追憶録』(井上照丸追憶記刊行会、昭和44年4月)。昭和43年4月に亡くなった元満鉄の調査マン井上の追悼本。わしは饅頭本が好きで、古本市などで面白いものを見つけると安ければ買ってしまう。ただ、饅頭本…

最初期の仏教唱歌集、西村義嶺編『仏教唱歌』(井上教山、明治23年9月)

三密堂の100円均一コーナーで何度か見かけて、どうしようと思っていたが、仏教唱歌集としては、古そうなので買ってみた。西村義嶺編『仏教唱歌』(井上教山、明治23年9月)。奥付を含めて11頁の小冊子。編輯者西村の住所は奈良県下大和国式下郡都村で、肩書は…

戦時下に蔵書目録を自費出版しちゃう慶應出身の阿部貢

阿部貢『道楽巡礼』(阿部貢、昭和19年10月)。限定版100部の内の第45部。これもリーチアートで。ん千円もして、何度か見送ったのだが、どこの図書館にもなさそう、戦時中の自費出版、愛書家の蔵書目録、うかうかしてると「ぬりえ屋」さんが買っちゃう、という…

青田寿美『蔵書印の話』を夢見る頃ーー小谷方明『蔵書印の話』を読んでーー

昨年移転した阪急古書のまちは、特にリーチアートが入りやすくなった。小谷方明『蔵書印の話』(和泉郷土文庫、昭和22年5月)はそこで見つけた一冊。国会図書館になし。 内容は、「日本の蔵書印」、「蔵書印の歴史」、「蔵書印の使ひ方」、「蔵書印文の種類」…

満洲の唐木順三とスメラ学の前波仲尾

古田晁と臼井吉見とともに昭和15年筑摩書房を創業した唐木順三の評伝である澤村修治『唐木順三ーーあめつちとともにーー』が、昨年ミネルヴァ書房から刊行された。読んでみると、トンデモネタがあって驚き。唐木は、昭和5年5月三木清の斡旋で満洲教育専門学…

山名文夫宛小山展司の年賀状ーー森山大道の師デザイナー小山展司とはーー

昨年の寸葉会で大豊作だった時に拾った一枚、200円。日本絵葉書会のお歴々は裏面の図柄をもっぱら見るようだが、絵葉書に限らず古本は人の見ない所を見なければいけない。本と本の間に挟まった背表紙にタイトルのない冊子とか足元の箱に無造作に放り込んであ…

『現代女流人物事典』(愛隆堂、昭和27年)から見た大橋鎮子

いつの古本市で拾ったか忘れてしまったが、『成功』特別増刊号『現代女流人物事典』(愛隆堂、昭和27年10月)を持っている。奥付の前の頁に「山根キク」が載っているので、おっと思って買ったのだろう。もっとも、皓星社の『日本人物情報大系』8巻として復刻さ…