神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

昭和3年古書趣味の会展覧会に一條成美の原画や『法藏館蔵版並発兌書目』(明治25年)


 天地書房なんば店で『古書趣味の会展覧会出品目録』(古書趣味の会、昭和3年8月)を購入。20頁、1,900円。展観品目の一覧を挙げておく。

 35名の同人の中に後に斎藤昌三書物展望社を経て昭森社を興す森谷均と思われる名が見える。大阪時代の森谷については、「昭森社の森谷均も図書研究会の会員だった・・・かも - 神保町系オタオタ日記」参照。

 三宅吉之助が出品した「書籍及雑誌の原画」が特に注目される。一條成美、中澤弘光、藤島武二らの原画が出品された。一條による中村春雨『無花果』(金尾文淵堂、明治34年7月)の表紙画については、木股知史先生のnote「蛇と十字架:竹久夢二『山へよする』研究⑤|表現急行の人」を見られたい。
 他には、高尾彦四郎が出品した「明治初年の本屋目録」中の『法藏館蔵版並発兌書目』(西村七兵衛、明治25年1月)が目を引いた。法蔵館の図書目録については、先に「法藏館図書目録大正15年版と令和6年版 - 神保町系オタオタ日記」をアップしたばかりである。その時は失念していたが、社史の『仏教書出版三六〇年』(法藏館、昭和53年11月)を積ん読本から掘りだしてきた。川島昭夫先生の旧蔵書である。「出版総目録」で『法藏館発行図書目録』(大正8年10月)が使用されているので、少なくとも大正8年版は法藏館にあるようだ。
 「日本の古本屋」には、『法藏館蔵版並発兌書目*1』の明治41年版や大正3年版が出ている。今のところ明治25年版が最も古い目録ということになる。「出版総目録」によると、嘉永7年~明治24年の刊行書は170点(分冊も1点とカウント)であった。西村七兵衛は明治11年生まれで17年に家督を相続している。明治25年の書目発行時でもまだ数え15歳である。

 カズオ書店の伊藤一男が出品した「古い書誌」も挙げておく。このうち『文書雑誌』(文書雑誌社、明治25年)が非常に気になりますね。斎藤昌三『書物誌展望』(八木書店、昭和30年5月)には言及されていない。 

*1:法蔵館蔵版並発行書目」と表記されている。