神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

翻訳家列伝13(その2)


元々社の第2期最新科学小説全集の発行者は、津田和弘であった。高橋良平氏が津田和宏としているのは、誤植だったようだ。


翻訳家列伝を続ける。
ロバート・シェクレイ『人間の手がまだ触れない』などの訳者松浦康有は、

松浦康有 大正3年6月4日生。昭和18年駒澤大学英文科卒。昭和31年から36年まで東洋大学文学部助教授。31年4月〜32年11月の文学部長は、斎藤晌。37年からは、立教大学一般教育部助教授。後、淑徳大学教授。


松浦は、「英語発音学、英語教育法の分野で次々に秀れた業績を上げていた気鋭の助教授」だったらしい。→「http://bunbun.toyo.ac.jp/eibun/rekishi.html


さて、高橋氏の文章で一番驚いたのは、ロン・ハバード『宇宙航路』などの訳者尾浜惣一の本名が斎藤忠だということ。斎藤は、戦後「言論報国会常務理事、著書」を理由として公職追放となった人物。斎藤晌とは、大日本言論報国会つながりである。

尾浜惣一 本名斎藤忠。明治35年12月29日生。昭和3年3月東大文学部英文科卒。昭和5年同学部大学院修了。昭和11年より15年まで姉崎正治とともに東大附属図書館内に研究室を主宰し、日本文化資料を調査の事業を指揮*1。戦後、「東京裁判」で東郷茂徳広田弘毅の弁護に当たる。『ジャパンタイムズ論説委員長。平成6年1月12日没。(『第十九版大衆人事録東京篇』など)


また、高橋氏によると、斎藤忠の妻静江が、『火星人記録』の訳者斎藤静江であるという。

斎藤静江 大正3年生。東京女子大英文科卒。斎藤忠の妻。(『第十九版大衆人事録東京篇』など)


静江が訳した『火星人記録』は、訳文に問題あるという意見(石原藤夫『SF図書解説総目録(1946−70年)上』)と、現在流布している訳と遜色がないという意見(高橋氏)の両論がある。

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中央公論アダージョ』。「谷崎潤一郎人形町を歩く」特集がキター。

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出版ニュース』12月下旬号の「情報区」に、『一箱古本市の歩きかた』が登場。
『潮』1月号から四方田犬彦「日本の「漫画」への感謝」の連載が始まった。初回は、杉浦茂

*1:姉崎の年譜や『図書館再建50年』に記載はない。