神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

翻訳家列伝13(その7)


元々社の最新科学小説全集の翻訳陣について、福島正実は『未踏の時代』で、

(略)元々社では、SFは科学的な小説だからというので、理工科系の若手学者を翻訳陣に入れ、難解な科学・技術的なテクニカル・タームにアタックさせているという、一見まことしやかな噂が流れましたが、もちろん、たんなる嘘だったのでしょう。それにしては、あまりに非科学的な誤りや、初歩的な語学力の不足が目につきすぎました。

としている。確かに、今のところ理工科系の人間は見つかっていない。デヴィッド・ダンカン人工衛星物語』の訳者間野英雄も文系の人間であった。『日本紳士録第六十版』などによれば、

間野英雄 明治38年東京生。昭和4年東大英文科卒。昭和15年以降大蔵省勤務。戦後、大臣官房資料統計管理管、財務研修所長を経て、東京家政学院短大教授。昭和57年12月10日没。


東大や京大の英文科卒が何人か翻訳陣にいても翻訳がひどかったとされるのは、SFの翻訳には適さなかったということなのか、帝大の英文科卒はその程度ということなのか、一部で言われるようにそもそも翻訳がひどかったわけではないという説が真実なのか。

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出版ニュース』1月上・中旬合併号で2010年の執筆予定を読む。長山靖生氏は『日本SF精神史』の続編『日本SF黄金史』を書くらしい。岡崎武志氏、安藤礼二氏も登場。猫猫先生は、最近は恐ろしいくらい本が売れないので、初版分の印税しか入らないと、ぼやいていた。『現代語訳・浮雲』を出すらしい。例年登場の黒岩さんの名がないのは寂しい。


丸善で『図書』、『ちくま』、『本の旅人』をもらってきた。
誰ぞのいないうちに、松屋銀座の古書の市へ。行くだけ無駄の予感もあったが、目の保養にはなった。『SF図書解説総目録 上』が出てた。