神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2020-01-01から1年間の記事一覧

トンデモハンドで御用御書物所の村上勘兵衛が発行した『議案録』(明治2年)を掘り出す

科研に「KAKEN — 研究課題をさがす | メディアがもたらした近代教育―新史料「御用書林 村上勘兵衛家文書」に基づいて― (KAKENHI-PROJECT-17J02573)」があるのを発見。新史料村上勘兵衛家文書を用いて御用書林村上勘兵衛の情報発信の実態と教育事業の関連を解明…

第三高等学校の『嶽水会雑誌』(明治42年)に仏教大学学生梅原真隆の演説記事

第三高等学校の校友会雑誌『嶽水会雑誌』(第三高等学校嶽水会)は復刻版も出ているので、1度は通覧してみたいものである。明治32年3月創刊、嶽水会の当初の会長は、校長の折田彦市であった。原本は、43号(明治42年6月)を三密堂書店の100円均一台で見つけてい…

平楽寺書店の井上四郎に倭点法華経を売った反町茂雄

大正2年に12代村上勘兵衛から営業権を譲り受け平楽寺書店を興した井上治作は、昭和30年に亡くなる。後を継いだのが、井上四郎である。ここに弘文荘の反町茂雄から四郎に宛てた書簡が3通ある。平成29年に平楽寺書店の土蔵が取り壊された後、出回った書簡群の…

矢野書房から『東天紅』第3篇中「宮武外骨関係の新聞雑誌図書総目録」の抜刷を

何年か前の大阪古書会館の古本市で見つけた『宮武外骨関係の新聞雑誌図書総目録』。矢野書房出品で2千円。1度は見送ったが、翌月も残っていたので購入。23頁、奥付なし。「明治十八年より昭和十六年に至る五十七年間に於て、宮武外骨が発行した自己の編集著述…

小田光雄『近代出版史探索』『近代出版史探索Ⅱ』(論創社)をいただく

小田光雄先生から論創社より刊行された『近代出版史探索』と『近代出版史探索Ⅱ』を御恵与いただきました。本当にありがとうございます。特に前者は先生のブログと拙ブログの「セッション」となったテーマが幾つか収録されていて、光栄である。また、横山茂雄さ…

京都における戦前の合同古書目録『書燈』と戦後の合同古書目録『書之燈』

紫陽書院が、一時期戦前の『日本古書通信』や古書目録を出品していた。写真の「戦前京都の古書目録5点 ¥600」もその時入手したものである。「合同古書目録『書燈』1号(書燈会事務所、昭和8年1月) - 神保町系オタオタ日記」で紹介した京都における戦前の合同古書…

ブックス・ヘリングから入手した松平斉光主宰祭礼研究会発行の『おまつり』

美術館、図書館、動物園が再開して賑わいを取り戻した岡崎。ブックス・ヘリングはその一角にある。昨年5月31日の京都新聞にも載ったので、知名度は上がったようだ。一時期新着コーナーがあって、雑誌『おまつり』の端本5冊をそこで見つけた。5冊で1,000円。…

明治期京都における出版界の日蓮主義者、平楽寺の村上勘兵衛

一時期書物関係の本を手当たり次第に買っていたが、今田洋三『江戸の本屋さん:近世文化史の側面』(日本放送出版協会、昭和52年10月・平成4年6月12版)もその1冊である。江戸時代における京都書林の十哲の一つとして、平楽寺の村上勘兵衛が出てくる。村上家は…

風呂敷包みを一つだけ抱えて満洲から引き揚げてきた柚木馨満洲国新京法政大学教授

家の中に饅頭本(追悼本)が山ほどあって困るが、『偲び草 柚木馨先生を憶う』(かおる会、昭和42年5月)もそんな1冊。臨川書店のバーゲンセールで購入したか。柚木の経歴は、 明治35年4月 舞鶴生 大正11年3月 第三高等学校文科甲類卒業 大正14年3月 京都帝国大…

月遅れ雑誌を読んで育った高橋正治が通う館林の書店・図書館ーーヨドニカ文庫で見つけた『高橋正治先生遺稿集』からーー

均一台で未知の人の饅頭本(追悼本)を見つけた時は、できるだけ購入することにしている。買う基準としては、まったく無名のただの人よりも、ある程度の知識層に属した人の方が面白い。知人による回想文の他に、年譜、日記・書簡、遺稿なども欲しいところであ…

ナチスの退廃美術展を見たドイツ文学者谷友幸が旧制広島高校時代に通った音楽喫茶ムシカとは

旧制広島高等学校卒のドイツ文学者というと富士川英郎がいるが、京大文学部教授だった谷友幸も忘れてはいけない(追記:谷は、昭和6年第六高等学校理科乙類卒業でした)。書砦・梁山泊で入手した『谷友幸先生追想録』(谷友幸先生追想録刊行会、昭和63年9月)の…

創元社の矢部文治社長と関西学院大学名誉教授武藤誠

トム・リバーフィールド編、書物蔵監修・解説『昭和前期蒐書家リスト 趣味人・在野研究者・学者4500人』(トム・リバーフィールド、令和元年11月)。まだ持ってない人は、「日本の古本屋」に金沢文圃閣が出品しているから買っておこうね。国会図書館のほか、CiNi…

自宅「向日庵」を図書館にしてしまった壽岳文章の読書人生

テレビに登場したらしい三密堂書店の100円均一台で見つけた久山康編『読書の伴侶』(基督教学徒兄弟団、昭和27年4月初版・同年8月3版)。戦後の読書論はあまり興味がないが、座談会のメンバーの中に壽岳文章がいたので、購入。他のメンバーは、森信三、高坂正…

昭和5年に池田師範学校の平松朝夫教諭が集めた昔話・伝説ーー河童、鬼そして砂かけ狸ーー

大阪古書会館の「たにまち月いち古書即売会」で見つけた『北斗』31号(大阪府池田師範学校校友会雑誌部、昭和5年12月)。古本横丁出品で300円。表紙に「昔話・伝説集」と書き込みがあるので、目についた。しかし、目次に×の付いた本篇は欠けていて、附録の「昔話・…

北白川の銀林堂書店が70年代に発行していた同人誌『ヴァリエテ』

一昨年文庫櫂から『ヴァリエテ』2号(銀林堂、昭和48年4月)を入手。銀林堂書店は私が学生時代だった頃は、今出川通の南側、今善行堂書店がある所より少し東側にあって、新刊書店だった。その後、いつの間にか白川通りの東側へ移り、古本も扱うようになった。…

謎に包まれた龍谷大学予科教授時代の吉田光邦

『yama』4号(鬼蛍社、昭和23年12月)という雑誌が手元にある。龍谷大学内の鬼蛍社が発行。編輯兼発行人は、西山賢珠。国会図書館サーチではヒットしない。タイトルから山に関する雑誌かと思ってしまうが、目次を見ていただこう。 執筆者のうち、木村秀雄は龍…

マルクス主義が輝いていた時代の三月書房と日曜会のPR紙『読書の栞』(昭和27年)

4月のツイン21古本フェアは中止となり、次は今月の予定だが無事開催されるだろうか。『読書の栞』1号(日曜会、昭和27年)は何年か前のツイン21で拾ったと思う。高山文庫出品で300円。飯澤文夫「出版社・書店等PR誌一覧」『神保町が好きだ!』12号(ネット上に補…

藪田嘉一郎の古書店文林堂書店が参加した書好会の『書好』ーー『書物関係リトルマガジン集ーー中京・京阪神古本屋編ーー』(金沢文圃閣)で復刻ーー

昨年11月から12月にかけて、京都新聞の「ウは『京都』のウ」で4回連載(樺山聡記者)された藪田嘉一郎に関する記事には、度肝を抜かれた読者も多かっただろう。松本清張との交流に関しては平成16年北九州市立松本清張記念館の「松本清張『火の路』誕生秘話展」で紹…

京都外国語大学国際文化資料館で開催された宮武辰夫コレクション展

京都新聞6月13日の「ミュージアムのちから コロナ禍に考える」10回(林屋祐子記者)は、京都外国語大学国際文化資料館であった。小原豊雲(1908-95)のコレクションと宮武辰夫(1892-1960)のコレクションを紹介。コレクションを引き取ることになった豊雲記念館の学…

百萬遍知恩寺秋の古本まつりで拾ったスクラップブックの楽しみ方ーー明治の閨秀画家野口小蘋と跡見花蹊ーー

2年前に百萬遍知恩寺秋の古本まつりで福田屋書店の200円均一コーナーからスクラップブックを購入。表紙に「白萩 香山」とあり、宮川香山と関係があるのかなと思って買ってみたが、関係なさそうだ。「藤井蔵書」と書かれた蔵書票が貼られていた。内容は、画報、美…

岡本橘仙や金子竹次郎らの読書会記録『列子天瑞篇之研究』ーー黒田天外の旧蔵書かも?ーー

3月お誘いをいただいて、亡くなられた某先生の蔵書処分に参加した。ありがとうございました。先生と直接の面識はないが、退官記念シンポジウムを拝聴させていただいたし、横山茂雄さんや吉永進一さんの古本仲間であったので知り合いの知り合いということにな…

下鴨神社納涼古本まつりで見つけた『崇信会と芦屋仏教会館のえにし』(昭和5年)

いよいよ暑くなってきて、8月の下鴨納涼古本まつりが近づいてきました。今年は無事開催されるか心配なところだが、関係者の皆様よろしくお願いします。 さて、2年前の下鴨で『崇信会と芦屋仏教会館のえにし』(芦屋仏教会館、昭和5年8月。以下「本書」という)を…

江馬務の江蔭会が創刊した雑誌『好』(大正15年)

江馬務が主宰した風俗研究会(風俗研究所)の機関雑誌『風俗研究』はよく見かける雑誌で、私も 『風俗研究』138号(風俗研究所、昭和6年11月)で見る風俗研究会の二十年 - 神保町系オタオタ日記」で紹介した1冊を持っている。「妖怪の史的研究号」(20号,大正8年11月…

『民族文化』『あんとろぽす』を発行した山岡書店の山岡吉松

東京の古書会館の古本市には、戦前の文学・民俗・宗教等関係雑誌の端本が2、3百円で大量に出品されることも多いので、漁り甲斐がある。他の古本市では1冊ずつビニール袋に入れてそこそこの値段が付く雑誌も格安で出たりするのである。手元にある『民族文化』…

姉崎正治が創設した三高仏教青年会と中井正一の青春

百万遍知恩寺の古本まつりで見つけた『会報』26号(三高同窓会、昭和39年)は、菊田太郎「仏教青年会の第二期」が載っているので購入*1。三高仏教青年会は3期に分かれるという。卒業年を補って要約すると、 ・第1期 北畠貞顕(明治26年卒) 下間空教(明治34年卒) …

未だ詳細不明の『伊那婦人』創刊号(伊那婦人社、大正11年)

善行堂で見つけた『伊那婦人』(伊那婦人社、大正11年3月)。30頁、1,000円だったか。国会図書館サーチでヒットせず、石川武美記念図書館のリストにもなく、所蔵している図書館はなさそうである。 目次も挙げておく。発行編集兼印刷人は、長野県下伊那郡山本村…

増田正雄と貴族院議員水野直子爵ーー柳田国男、増田正雄、結城礼一郎を繋ぐものは?ーー

後に国際政経学会常務理事となる増田正雄が柳田国男の日記に出てくることは「結城禮一郎と柳田國男 - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである*1。その他戦前の各種の日記に名前を見つけることができるが、今回は伊藤隆・西尾林太郎が資料紹介した「水野…

宮武外骨の明治新聞雑誌文庫退職慰安会と記念会

明治新聞雑誌文庫は耐震改修工事で休館中。昭和2年2月に創立され、初代館長は穂積重遠、事務主任は宮武外骨であった。宮武は、23年近く勤めた文庫を昭和24年9月30日に退職。穂積の日記に、宮武の退職慰安会や記念会に関する記述があった。穂積重遠著・大村敦…

新生会と名古屋文教協会における愛知教会牧師金子白夢

モダニズム詩人折戸彫夫の父でメソジスト派牧師だった金子白夢は、様々な雑誌に執筆をしていた。ヴォーリズや吉田悦蔵らが明治45年7月に創刊した『湖畔之声』(湖声社)の端本が東京古書会館に大量に出た時に拾った229号,昭和7年3月にも、「語られざる言葉」を執…

なにわ古書肆鹿田松雲堂と小中村清矩

『小中村清矩日記』(汲古書院、平成22年7月)に大阪にあった古書肆鹿田松雲堂が出てくる。 (明治廿七年十月) 十一日 晴。 (略)午後石田来る。同道にて市中遊歩。鹿田といふ古本屋にて古書三四種求め、夫より書林松村行(これハ新刻本の問屋成)。(略) 国学者で…