神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

ブックス・ヘリングから入手した松平斉光主宰祭礼研究会発行の『おまつり』

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美術館、図書館、動物園が再開して賑わいを取り戻した岡崎。ブックス・ヘリングはその一角にある。昨年5月31日の京都新聞にも載ったので、知名度は上がったようだ。一時期新着コーナーがあって、雑誌『おまつり』の端本5冊をそこで見つけた。5冊で1,000円。安い!
奥付に「発行所 東京帝国大学図書館研究室」、「編輯兼発行人 松平斉光」とあって、「もう一人いた、マルセル・モースの弟子 - 神保町系オタオタ日記」で言及した松平が「図書館研究室」を開設していたのかと購入。しかし、よく見ると「東京帝国大学図書館研究室二十五号 祭礼研究会」とある。図書館を研究する「図書館研究室」ではなく、図書館内にある研究室に設置された祭礼研究会であった。
入手したのは、『おまつり』15号(昭和18年7月)、16号(同年9月)、17号(同年11月)、18号(19年1月)、21号(同年8月)。『おまつり』については、同誌13号(昭和18年3月)掲載の「宇佐美若衆組の入団式」を収録した『ナショナリズムと教育』1巻(国土社、昭和44年3月)の解説(中内敏夫)に比較的詳しい。それによると、昭和16年8月創刊で、発行所は9号(昭和17年8月)までは東京帝国大学図書館研究室29号松平斉光、10号以降同研究室29号祭礼研究会。21号まで続刊されたのは確実だが、以後の詳細は不明。11号に会則、10~12号に会員名簿掲載。会長は「当分ノ間松平斉光」で、会員は在京の日本民俗研究者を中心に、ほぼ全国にわたっているという。
会員名簿をぜひ見たいところである。とりあえず、14号までの松平執筆分に巻頭論文を付加した『祭』(日光書院、昭和18年9月)収録の「伊豆の鹿島踊」に、同行者として5人の会員が出てくるので、紹介しておこう。
関口児玉之輔・・・「人事興信録データベース」によると、昭和3年版がヒット。明治11年7月生で東洋紙工印刷(株)専務取締役。玩虎洞『虎』(関口児玉之輔、大正15年4月初版・昭和13年1月再販)を発行し、玩虎洞と号したようだ。
倉光設人・・・『日本民俗学大系』11巻(平凡社、昭和33年10月)で愛知県を担当。白井一二編『ひとつ紙鳶:豊田哲夫追悼記念文集』(豊田珍彦、昭和11年11月)収録の「朝顔と凧と虫の声」に「豊橋日日新聞社編輯室にて」とあるので、新聞記者か。なお、豊田は、「趣味人をつなぐ豊橋趣味会の舟橋水哉 - 神保町系オタオタ日記」で言及した豊橋趣味会の会員である。
岸啓真・・・前記『祭』収録の「黒川の王祇祭」に「宗教芸術史研究者」とある。
渡辺安麿・・・不詳
近藤綸二・・・明治32年10月生、戦前は弁護士で戦後東京高等裁判所長官等を務め、昭和57年4月亡くなった近藤か。大正12年東京帝国大学法学部法律学科卒で大正10年政治学科卒の松平と在学期間が重なる。また、留学期間(大正15年から昭和4年)は異なるが松平と同じくソルボンヌ大学で学んでいる*1
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*1:内藤頼博・川島武宜編著『自由人近藤綸二:一法曹の生涯』(日本評論社、昭和61年4月)参照