神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『民族文化』『あんとろぽす』を発行した山岡書店の山岡吉松

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東京の古書会館の古本市には、戦前の文学・民俗・宗教等関係雑誌の端本が2、3百円で大量に出品されることも多いので、漁り甲斐がある。他の古本市では1冊ずつビニール袋に入れてそこそこの値段が付く雑誌も格安で出たりするのである。手元にある『民族文化』2巻3号(山岡書店、昭和16年3月)も玄書房200円の値札が付いているので、東京古書会館で拾ったのだろう。
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目次を挙げておく。澤田四郎作「ぼら頭とその他」が載っているね。10頁の「民族文化の会」は、2月8日神田駿河台の佐藤新興生活館で開催された同会の報告。欧州特にフランスにおける民俗学調査機関の報告や会の仕事にカードを用いることの検討等がなされた。出席者は、後藤克己、磯貝勇、江坂輝彌、芹澤長介、中島馨、中西定雄、大神俊文、山岡、津田逸夫、中西不二男。武田久吉は急用で欠席。同館での3月の会の案内も出ていて、津田「名前について」、早川孝太郎「題未定」が予定されていた。佐藤新興生活館については、「財団法人佐藤新興生活館生活図書館旧蔵の仏教社会学院編『新興類似宗教批判』 - 神保町系オタオタ日記」で紹介したことがある。単に会場を借りたのか、民族文化の会と関係があるのか、気になるところである。
編輯兼発行人は、神田区神保町2丁目7番地の山岡吉松。裏見返しに「関係文献販売目録」として他社の古い本が挙がっているので、古書の販売も行っていたか。幾つかの文献で経歴が判明したので紹介しておこう。
・昭和21年7月『あんとろぽす』(山岡書店)を創刊。住所は、東京都北多摩郡三鷹下連雀。創刊号の執筆者は、後藤守一、長谷部言人、肥後和男鈴木尚、甲野勇、折口信夫など。
・昭和26年10月から33年7月まで神田神保町1ノ5にあった古書店神田書房を経営。13年からこけしのコレクターだった関係で、28年から30年まで収集家からの委託、買取りのこけしを店内で販売。11年10月から20年3月まで神田神保町2ノ7にあった山岡書店は前身(『こけし辞典』(東京堂出版、昭和46年9月)中「神田書房」の項(中屋惣舜執筆))。
・山岡書店(武蔵野市中町1-21-5)の先代山岡吉松は、民俗学関係雑誌の発行元も務めたが、晩年はライフワーク「藍染百譜」「伊勢型紙百譜」の完成に情熱を傾けた(『全国古本屋地図’92~’93改訂新版』(日本古書通信社、平成4年8月))。
おそらく宮本常一の日記に出てくる人物なので、宮本の日記も確認してみたい。
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