神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

トンデモハンドで御用御書物所の村上勘兵衛が発行した『議案録』(明治2年)を掘り出す

f:id:jyunku:20200724134659j:plain
科研に「KAKEN — 研究課題をさがす | メディアがもたらした近代教育―新史料「御用書林 村上勘兵衛家文書」に基づいて― (KAKENHI-PROJECT-17J02573)」があるのを発見。新史料村上勘兵衛家文書を用いて御用書林村上勘兵衛の情報発信の実態と教育事業の関連を解明するという。これをTwitterに挙げた翌日大阪古書会館に行くと、『議案録』第4(明治2年4月)を発見。古本横丁出品で300円。もしやと奥付を見ると、
f:id:jyunku:20200724134810j:plain
御用御書物所の村上勘兵衛と井上治兵衛の発行であった。『明治文化全集』4巻(日本評論社昭和3年7月)収録の『議案録附決議録』(上州屋惣七、明治2年)への解題(藤井甚太郎)によると、『議案録』は明治2年3月・4月*1に7冊*2発行された。内容は、公議所に提案された議案66案を収録したものである。藤井は、同書について2種類存在とする。1つは全集に収録した上州屋惣七の東京版で、もう1つは京都版であるという。東京版と京都版の体裁、内容に大体変わりは無いが、京都版には表紙の裏に題目が列記してあるとも。私が入手したものが、この京都版である。
f:id:jyunku:20200724134713j:plain
ただし、実は京都版にも2種類あるようで、国会図書館サーチによると、群馬県立図書館等が所蔵する井上治兵衛単独の発行版があるようだ。発行地不明とされているが、京都ということになる。『京都書肆変遷史』に、井上は「越後屋治(次)兵衛・東塘亭」として立項されている。元明年間創業、姓は井上。天保、弘化、嘉永期の願出届の点数は当時京都第一だったという。明治16年の『都の魁』を最後に名簿から名前が消えているので、明治中頃に廃業したらしい。
我ながら引きが良いようで、ゴッドハンド(善行堂)、ブッダハンド(扉野良人氏)、レイキハンド(吉永さん)にも負けないトンデモハンドかな(・∀・)
参考:「明治期京都における出版界の日蓮主義者、平楽寺の村上勘兵衛 - 神保町系オタオタ日記
f:id:jyunku:20200724134739j:plain

*1:正しくは、3月・4月・5月に刊行

*2:宮城県図書館が第10まで所蔵しているようだ。