2019-01-01から1年間の記事一覧
『本郷』7月号(吉川弘文館)で仏教大学を定年退職した原田敬一氏の「雛道具と生活史」に冨山房の百科事典が出てきた。 古書市で朝一番に行くと、必ず松尾孝兊先生と遭遇し、簡単な挨拶の後は、お互いに無言で書物を漁っているのが常だった。松尾先生が、文英堂…
従来いわゆる「偽史」はトンデモ扱いされて言及する者は好事家などに限られていたが、近年立教大学で偽史に関するシンポジウムが開催され、小澤実編『近代日本の偽史言説』(勉誠出版、平成29年11月)として刊行されるなど、アカデミックな研究者も参入してきた…
國學院大學研究開発推進センター編・阪本是丸責任編集『昭和前期の神道と社会』(弘文堂、平成28年2月)の藤本頼生「照本亶と『皇国』ーー大正期・昭和初期の神社人の言説ーー」に照本の経歴が出ていた。要約すると、 明治22年 横浜市の郷社熊野神社社司照本肇の…
2年前の天神さんの古本まつりでオヨヨ書林から『皇国』(皇国発行所)の338号(昭和2年2月)及び339号(同年3月)を入手。1冊200円。安かろう、悪かろうで、前者は55頁から64頁まで、後者は1頁から59頁までが落丁。若い人には、「安くても奥付が欠けていたり、落丁…
神戸の古書店つのぶえはキリスト教書の専門店だが、専門外の本が格安で出るので時々のぞいている。『会報』昭和16年第5号(國學院大學院友会、昭和16年6月)、16頁・非売品もそんな1冊である。國學院大學院友会は國學院大學の卒業生の親睦団体で現在も一般財団…
積ん読だった『山川弘至書簡集』(桃の会、平成3年7月)を読了。twitterの記録によると、4年前に知恩寺の古本まつりで拾ったようだ。三密堂書店出品、200円。山川弘至は折口信夫の門下生で、詳しくはWikipediaなどを見られたい。そこには書かれていないが、昭…
日本の古本屋メールマガジンで南陀楼さんが「『本のすき間』を探る人」と名付けてくれた。これは、物理的に本と本の間に挟まった小冊子等を掘り出すという意味だけでなく、雑書や日記の記述の中から研究者も気付いていない情報を見つけるという意味も含めてい…
昭和44年3月29日昭森社の創業者森谷均は亡くなった。4月3日に青山斎場で開かれた友人葬で神原泰が述べた弔辞が『本の手帖』別冊,昭和45年5月に掲載されている。 (略)森谷君は、絵を、彫刻を、詩を、文学を愛したが、更に人間を愛した。芸術を愛する以上に芸…
古書目録については、鈴木宏宗「古書販売目録の効用」『日本古書目録大年表』2巻(金沢文圃閣、平成27年1月)にその特性と意義が適格にまとめられている。それによれば、古書目録には、読み物としての目録もあり、吉野作造らの序文が載った『一誠堂古書籍目録』(…
昨年12月大阪古書会館の全大阪古書ブックフェアでは全品300円の古書鎌田へ一番乗り。ガハハとあれこれ抱え込んでいたら、後から来られた某先生に「これいいでしょう」と見せられる。表紙に「天眠」とあるではないか。ガーン、珍しそうな小林天眠関係の資料か。し…
「古本は迷ったら買い」とよく言われる。もっとも、真に受けて何千円、何万円もする本を迷う度に買っていたら破産してしまう。しかし、100円均一とか200円均一の場合は、「迷ったら買い」の鉄則を実行してもよいだろう。昨年下鴨納涼古本まつりの福田屋書店の200…
KADOKAWA発行のPR誌『本の旅人』が7月号(25巻7号、通巻285号)で休刊となった。創刊は平成7年11月。出版社の紙のPR誌がどんどん減って行く寂しい状況である。最後まで残るのは岩波書店の『図書』と新潮社の『波』であろうか。『本の旅人』は萩尾…
ナンダロウさんが6月21日の『新潟日報おとなプラス』に画家水島爾保布(みずしま・におう)に関する記事を書いたらしいので、読みたいと思っていた。しかし、地元以外では国会図書館ぐらいにしか無いだろうなあとくさっていたら、何と記事にも登場するかわじ氏…
なんか知らんうちに小林昌樹編・解説『満鉄調査部から国会図書館へーー調査屋流転』(金沢文圃閣)なる本が出てた。戦前満鉄の調査マンで戦後国会図書館の調査及び立法考査局長や副館長を務めた枝吉勇の自伝『調査屋流転』と併せて国会図書館職員名簿などの復…
かつて北村宇之松(宇宙)が創立した精文館という出版社が存在した。『日本児童文学大事典』に一応立項されているので、そこから要約すると、 精文館 せいぶんかんしょてん 大正3年北村宇宙が神田神保町1丁目に創業した出版社。奈良生まれの北村が大阪の積善館…
易学書の専門店である京都の三密堂書店の100円均一台は昔から古本者がよく立ち寄るスポットである。水明洞無き現在、林哲夫画伯や扉野良人氏がいいものを拾ったという場合大抵三密堂だろう。さて、先日藤本一恵『東山五十年』(昭和53年3月)という私家版211頁…
知恩寺の古本まつりでキクオ書店の和本300円コーナーから見つけた哥澤芝虎編『哥澤撰』。驚いたことに大正14年3月クラブ化粧品本舗(現クラブコスメチックス)発行なので購入。印刷所は京都市西洞院七条の内外出版株式会社印刷部、65頁。定価の表示はない。 内…
寸葉会で大量の使用済み官製葉書から発見した1枚。100円。岐阜県の放光寺内の森本省念から京都学派の鹿野治助に宛てた葉書。消印が「12日」しか読めないが、「鹿野治助の日記から見た物語「京都学派」再び」などで紹介した架蔵の鹿野日記昭和22年8月13日の条にエス…
今日は大阪古書会館の「たにまち月いち即売会」に遅刻。何冊か掘り出し物があったが、それよりも某先生から嬉しい連絡をいただく。5月に世田谷美術館で開催された川端康雄日本女子大学教授の講演「ウィリアム・モリスと小野二郎」で拙ブログの「小野二郎と妻悦子…
藤岡作太郎は国文学者として知られているが、その経歴から言って宗教関係者の知己も多かった。村角紀子編『藤岡作太郎「李花亭日記」美術篇』(中央公論美術出版、平成31年3月)の「年譜」及び村角氏の「解説」から一部を抜き出すと、 明治3年7月 加賀国金沢早道町生…
近代文学研究者や出版史研究者、更には明治文化研究者や社史編纂者などにとっても必読書の感がある稲岡先生の著が刊行された。『明治出版史上の金港堂 社史のない出版社「史」の試み』(皓星社)である。今後研究者は、稲岡先生が惜しげも無く披露してくれたトゥ…
昨日の研究会では結局古本バトルに参加。「検閲」と言うべきところを「事前検閲」と言ったりして、やや冷や汗ものであった。持って行ったのは、既に紹介した『神代文化』(神代文化研究所)、人生創造支部連盟機関雑誌『交響』のほか荒深道斉の『純正真道』4巻5号(…
今月15日人文研で第19回「仏教と近代」研究会&宗教雑誌ワークショップ第2回「雑誌メディアの近代仏教」開催。今度は出番がないので、気楽に聞けそう。詳しくは、「「仏教と近代」研究会 : 第19回「仏教と近代」研究会&宗教雑誌ワークショップ第2回「雑誌メディア…
グーグルブックスの威力は凄いもので、オタどんが自力では到達できなかったであろう文献を示してくれた。クレス出版から復刻版が出ている文部省編『宗教要覧』(光風出版、昭和27年7月)である。ここに昭和26年4月2日現在の教宗系教団の現勢が出ていて、その中…
今年も下鴨の納涼古本まつりが近づいてきた。昨年は福田屋書店の200円均一コーナーが水田紀久先生の旧蔵書を放出して圧巻であった。写真の『清澤満之』(観照社、昭和3年9月)は水田先生とは多分無関係で、「門野普光」の旧蔵書のようだ。 見返しには書き込みが…
相馬黒光「滴水日記」昭和18年2月22日の条が載った『女性時代』について「昭和18年河井酔茗主催の文庫会に集まった誌友達 - 神保町系オタオタ日記」で言及した。その後、休店前の古書からたちでおまけしてもらった『滴水録』(相馬安雄、昭和31年2月)に昭和16年か…
黒岩比佐子さんが亡くなる前、「あと10年生かしてくれれば」と泣いておられたと思う。黒岩さんには執筆予定の作品が幾つかあった。ヘレン・ケラー、婦人記者下山京子である。他にも、「忘れられた美人女優及川道子と堺利彦夫妻」のコメント欄にあるように女優及…
学生時代から酒井勝軍、荒深道斉、鵜沢総明、田多井四郎治といった竹内文献に関わった人達の名前にキャアキャア言っていた。田多井が理事を務め、大湯の環状列石の発掘にも関わった神代文化研究所も当然知っていたが、機関紙『神代文化』は未見であった。と…
私は「内田百閒より内田魯庵を大事に思いたい」方だが、百閒の戦前・戦中の日記が慶應義塾大学出版会から出たので、百閒の日記からネタを。中公文庫になった『百鬼園戦後日記』(小澤書店)だが、余りブログのネタに使える記載はなく、原稿の依頼に来る編集者の…
これまで散々『秋田雨雀日記』(未来社)を利用してきた。劇作家のイメージが強く、戦後は共産党に入党しているので敬遠する人も多そうである。しかし、秋田の日記は意外な人物が登場して有用なので、是非とも読んでいただきたい。拙ブログでは例えば次のよう…