神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

大阪府立中央図書館国際児童文学館で精文館が発行した「幻の児童雑誌『カシコイ』」展開催中

f:id:jyunku:20190521113826j:plain
かつて北村宇之松(宇宙)が創立した精文館という出版社が存在した。『日本児童文学大事典』に一応立項されているので、そこから要約すると、

精文館 せいぶんかんしょてん
大正3年北村宇宙が神田神保町1丁目に創業した出版社。奈良生まれの北村が大阪の積善館で8年間修行後上京して創立。同社での経験を生かし、処女出版に村田素堂『カナの習字本』を出し、以後各種参考書を中心に刊行し、児童書では木村小舟の童話集『教育お伽はなし草』(大正7年)が特に知られ、月刊誌『カシコイ一年小学生』、『カシコイ二年小学生』を昭和7年に創刊。しかし、長くは続かなかった。(亀谷真弓)

この精文館が発行した学年別児童雑誌『カシコイ』に関する展覧会が大阪府立中央図書館国際児童文学館で今月30日(日)まで開催中である。昨年末から今年3月にかけて京都国際マンガミュージアムでも同種の展覧会が開催されたが、出品物は異なっている。
展覧会のきっかけは、京都新聞記者行司千絵氏による祖母の家での発見である。行司氏の祖父藤本卯一は北村の従兄弟で、精文館で編集に携わっていたのだ。詳しくは、『図書』平成30年11月号及び12月号に同氏による「精文館と児童誌『カシコイ』を探して」(上・下)が掲載されているので、見られたい。私が国際児童文学館に行った時は当該『図書』が若干置いてあったので、まだもらえるかもしれない。『カシコイ』は、童謡顧問北原白秋、童話顧問浜田広介、童画顧問初山滋、作曲顧問藤井清水だったというからそのレベルの高さがうかがわれる。また、新美南吉の「アメダマ」など5作品、浜田の代表作「泣いた赤おに」、白秋の「アマダレ」や小川未明「花とあかり」の初出誌でもあるという。
f:id:jyunku:20190628180709j:plain
国際児童文学館における展示の目玉は、北村の次女の家で発見された保存状態のよい原画で、田原利一、初山滋、前島トモ、鈴木寿雄、越智はじめ、池上重雄、黒崎義介の物が出品されている。掲載誌が判明している分は原画と該当頁とが並べて展示されていて、一興である。残り極僅かの会期だが、お近くの方は是非行かれたい。