神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『皇国』(皇国発行所)に「古本随筆」を書いた照本金川こと照本亶

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2年前の天神さんの古本まつりでオヨヨ書林から『皇国』(皇国発行所)の338号(昭和2年2月)及び339号(同年3月)を入手。1冊200円。安かろう、悪かろうで、前者は55頁から64頁まで、後者は1頁から59頁までが落丁。若い人には、「安くても奥付が欠けていたり、落丁のある本は買ってはいけない」と言いたいが、わしみたいに残された古本人生があまり無さそうな爺さんになると、状態のよいものに再会できる機会は無いので購入。目次で見つけた「古本随筆」の頁が存在するのも買うことにした決め手である。『皇国』は洛魚氏辺りは当然承知の雑誌だろうが、『神道史大辞典』(吉川弘文館、平成16年7月)によれば、全国神職会の機関誌で、明治32年8月創刊の『全国神職会々報』(会通社、のち全国神職会々報発行所)を大正10年1月266号より『皇国』(皇国発行所)と改称。神職間の通信にとどまらず与[ママ]論の喚起と団結を目指した。昭和5年1月より『皇国時報』と再改称し、14年末頃まで継続したという。折口信夫の「現行諸神道の史的価値」279号(大正11年2月)が載った雑誌である。
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写真は339号の目次だが、引用は338号の「古本随筆」からにしておこう。

 読書熱の盛んなこと昭和に入つて益々景気がよい。一円の全集が日本文学、世界文学、世界大思想全集へと真似て出てくる。『読本』が下火になつたせいでもなからう。又古事類苑が重版され本居宣長全集につゞいて、賀茂真淵の全集が出る。栗田博士の神祇志料も重版されるといつたやうに古典全盛、何とすばらしいではないか。改造社の日本文学全集は、二十万円儲けたさうであるから景気がよいのであらう。
 書物専門の雑誌すら十七もあるといふのだから、古本随筆が試みたことも、穴勝、非科学的のものでない。各新聞のブツクレブユー欄も相当評判がよい。本誌も久しく古本随筆を休んだので茲に復活させる。(略)
芳賀矢一博士の薨去は、国文学界の、一大損失である。(略)富山房などが今日あるは確かに博士のお蔭だ。それにつけても古本随筆から見ると、文会堂あたりも博士の恩恵を受けたものであらうが没落したので惜しいことだ。例へば国文口訳叢書の如きは、其の一つであらう。此の既刊の内先生の『つれ”/\草』と『大鏡』は折口信夫万葉集上、中、下三冊と共に評判がよく、値も高い。折口君の万葉と其の辞典はすばらしい。前者は三冊で八、九円、後者も五、六円する[。]絶版なること勿論である。それから同じ文会堂のもので『月雪花』『日本人』があるが富山房から刊行した『国民性十論』と共に先生の随筆ものとして最も好評のものである[。]前二者は絶版である。殊に『日本人』の方はあまり見受けない。
(略)

この執筆者は、338号では無署名だが、339号には照本金川とあり、本誌の編輯人、発行兼印刷人である照本亶と同一人物と思われる。照本亶には『神社概説』(東方書院、昭和9年8月)などの著作がある。経歴は調べてないが、神道書に限らず古本全般に詳しく面白そうな人物である。本誌はゆまに書房から復刻されているので、「古本随筆」だけでも通覧してみたいものである。
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奥付の写真もあげておこう。次頁に國學院大學院友会の広告が載ってるね。大学図書館が完成して、「院友著書展覧会」の開催が予定されていたようだ。三島敦雄『天孫人種六千年史の研究』(スメル学会)の広告も載っているので写真をあげておく。
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