神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

黒岩比佐子

黒岩比佐子『パンとペン』(講談社)が第62回読売文学賞評論・伝記賞受賞

黒岩比佐子『パンとペン』(講談社)が読売文学賞評論・伝記賞を受賞とのこと。黒岩さんも喜んでおられることでしょう。沼野充義氏の選評には「そしてみずからも燃え尽き、この傑作を私たちに残してくれた。/残念なのは、賞がいつも人生よりも一足遅く来る…

堺利彦と『平民日本史』の編集

堺利彦の売文社は、大正2年3月四谷区四谷左門町から四谷須賀町へ移転、翌4月京橋区南佐柄木町へ移転。これに関する黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)の記述は混乱している。『パンとペン』の ・278頁では大正2年4月…

黒岩比佐子さんと中島俊郎先生

「daily-sumus」氏(1月22日分)が紹介していた神戸新聞1月19日夕刊に、黒岩比佐子さんについて「逝去される半年くらい前であっただろうか、「古書をすべて処分しようと思う」、と突然に電話で伝えてきた。声に力がない」とある。結局、本の処分は思いとどま…

白柳秀湖『民族日本歴史』完成祝賀会

黒岩比佐子『パンとペン』に、堺利彦と松本清張をつなぐものとして白柳秀湖『民族日本歴史』が出てくる。全5巻で昭和10年4月から同年12月にかけて刊行。その完成祝賀会は翌11年2月6日に開催。当日の様子が、高橋邦太郎「銀座日誌抄」『銀座』昭和11年6月号に…

横田順彌『近代日本奇想小説史 明治篇』(ピラールプレス)刊行記念トークイベント(横田順彌氏×長山靖生氏×北原尚彦氏)

本書の編集者である司会の川村伸秀氏*1の、「今日この前に黒岩比佐子さん関係のイベントがありましたが、生きておられればこのトークに参加されていたはずです」との挨拶に心の中で泣いた。ヨコジュンさん、長山靖生氏、北原尚彦氏、お疲れさまでした。あり…

黒岩比佐子さんと岡林信康氏

「フォークの神様と鳩」『正論』平成13年12月号によると、『伝書鳩』(文春新書)の刊行により、黒岩比佐子さんは、「鳩ともだち」とも呼ぶべき人脈が広がったという。様々な便りをもらい、その一人が、フォークの神様岡林信康氏だった。同年秋に会うことも…

横田順彌・黒岩比佐子関連イベント

なんとまあ、今月22日の横田順彌『近代日本奇想小説史』(ピラールプレス)刊行記念トークイベントには、ヨコジュンさん御本人も来場との追加情報が(http://www.tokyodoshoten.co.jp/)。ヨコジュンさんと黒岩さんについては、昨年12月7日参照。 横田順彌『近…

昔「三銭均一食道楽おとわ亭」、今「キッチンジロー」(その2)

PsychomPsychoさん(http://twitter.com/PsychomPsycho)が、地元民(?)の力を発揮して調べてくれました。ありがとうございました(その1は、昨年12月23日参照)。 @jyunku やはりキッチン・ジローのビルはおとわ亭の跡地でした。ギャラリーはご親族の方…

心理学者多湖輝氏と奇術研究家阿部徳蔵

1月18日付朝日新聞夕刊「心理学者・多湖輝 追憶の風景 目白」。 7歳のころ、僕ら邸内の子供たちも、徳川(義親)さんがよくお屋敷に招いていた阿部徳蔵師匠に奇術を教えてもらいました。種も仕掛けもあるのに不思議な世界。今でも奇術にひかれています。 阿…

孝行娘の黒岩比佐子『明治のお嬢さま』(角川選書)

『婦人公論』2009年3月7日号の「私の書いた本」で、黒岩比佐子さんは、次のように語っている。 数年前から古書の魅力にとりつかれて明治時代の女性誌をたくさん集めていたこともあり、編集者に「明治のお嬢さまのことを書いてはどうですか」と提案されたのが…

堺利彦の告別式での非戦論

黒岩比佐子さんは、『パンとペン』(講談社)の412頁で、堺利彦の告別式において、真柄が謝辞で「帝国主義戦争絶対反対」と口にしたところで、警官に中止命令を受けたに違いないと推定している。ところで、斎藤茂吉が堺の告別式について日記に書いている*1。…

黒岩比佐子『『食道楽』の人 村井弦斎』の瑕瑾

黒岩比佐子さんの『『食道楽』の人 村井弦斎』(岩波書店)をオールタイムベスト10の一冊に選んだことがある(2007年12月8日参照)*1。これは今でも変わっていない。しかし、その名著にも少しだけ誤りがある。一つ目に関しては、2006年7月13日に「『村井弦…

三省堂書店と「おとわ亭」

このブログのカテゴリーのうち、「谷崎潤一郎」は猫猫先生、「図書館」は誰ぞこと書物蔵氏、「カフェー」は林哲夫氏、「催眠術」・「平井金三」はma-tango氏、「中村古峡」は森洋介氏、「森茉莉」はちわみさん向けにもっぱら書いているのだが、「サンカ」は…

60歳の黒岩比佐子さんの笑顔

黒岩比佐子さんが2008年5月30日付日経に「60歳から本番」を書いている。 九十歳を超えたいまも現役のジャーナリストとして活動するむのさんに、「六十歳からが人生の本番。人間は六十年間苦労して、やっと物事がわかるようになる」と言われると勇気が湧く。…

黒岩さんをめぐる書物蔵氏と神保町のオタどんの日々

2007年3月30日の「古書の森日記」から。東京古書会館の「和洋会」で書物蔵氏(旧名・書物奉行)が黒岩比佐子さんを「ナンパ」した日である。三人でこういうやりとりをした日々がひたすら懐かしい。 (本文)“書物奉行”さんは、ブログの書きぶりから受けるイ…

黒岩比佐子さんと巽孝之氏

黒岩比佐子さんは、『図書』2009年7月号の「村井弦斎とマーク・トウェイン」で、 世界的に著名なある作家が、日露戦争当時に『花子』を読んでいたのである。 その貴重な情報を知らせてくださったのは、慶應義塾大学教授の巽孝之氏だった。 と書いている。世…

『新はがき用文』の著者宇保野昆陽=野入佐次郎の根拠

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』(工作舎)の書籍コード027は、宇保野昆陽『新はがき用文』(田村照春堂、明治34年10月初版)。 著者は宇保野昆陽とあり、もちろん聞いたことがない名前である。国会図書館で検索してみると、この筆名ではこの本一冊だけ、別名の…

黒岩比佐子さんと杏さん

杏さんがWebちくまに書いた「出会えなかった出会い」(http://www.chikumashobo.co.jp/new_chikuma/anne/18_1.html)が評判だ。「Atsuko」さんは読んで涙したそうだが、私はもはや涙が枯れ果てたのか、泣くことはなかった。杏さんは、 作家の黒岩比佐子さ…

黒岩比佐子さんと梯久美子さん

黒岩比佐子さんは、8月8日の『読売新聞』朝刊の「読書委員が選ぶ「夏休みの一冊」」で「私のイチオシ文庫」として、梯久美子『散るぞ悲しき』(新潮文庫)をあげていた。「改めて著者のきめ細かい取材と文章の冴えに目をみはった」という。また、『現代プレ…

読売新聞読書委員としての黒岩比佐子さん

今日の読売新聞は、「読書委員が選ぶ「2010年の3冊」」。生きておられれば、黒岩比佐子さんの読書委員としての最後の仕事になるはずだった。昨年、黒岩さんが読書委員になったのを発見したときの驚きを思い出す。同年1月11日に話題にすると、早速黒岩さんか…

昔「三銭均一食道楽おとわ亭」、今「キッチンジロー」

黒岩比佐子さんの「神保町にあった『食道楽』ゆかりの洋食屋−おとわ亭」『神田神保町古書街2009』(毎日新聞社、2008年12月)によると、 2006年秋、おとわ亭のことをすっかり忘れていた私は、何気なく、すずらん通りから三省堂書店と反対側の路地に入った。…

第一回「いける本大賞」の候補作に黒岩比佐子『パンとペン』

『いける本・いけない本』第13号(2010年12月)を読む。うるさ方の本好きのメンバーが選んだ「いける本」として、佐藤美奈子さん(フリー編集者)は黒岩比佐子『パンとペン』(講談社)を、永滝稔氏(有志舎)は関口良雄『昔日の客』(夏葉社)を、糸日谷智…

横田順彌『近代日本奇想小説史 明治篇』資料展が東京古書会館で

ピラールプレスの「ホームページ」を見てたら、横田順彌『近代日本奇想小説史 明治篇』刊行記念のトークイベント「横田順彌と奇想小説の世界」(長山靖生氏×北原尚彦氏)がある1月22日とその前日の21日に、東京古書会館で資料展もあるらしい。黒岩さんも、生…

黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)への補足記事一覧(該当ページ順)

黒岩比佐子さんの『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)の五刷が決定したという(「古書の森日記」による)。その記念に同書に関連する記事を該当ページ順にまとめてみました。各ページの末尾の月日をクリックすると記事が読めます…

黒岩比佐子さんが追いかけようとしていた奇術研究家阿部徳蔵

『出版ニュース』2007年1月上・中旬合併号の「今年の執筆予定」に黒岩比佐子さんが書いた執筆予定の中に結局執筆されなかったと思われるものがある。 (4)奇術研究家の阿部徳蔵という興味深い人物のことを知り、調査中。近代の「奇術と霊術」に新しい切り口が…

横田順彌『近代日本奇想小説史』(ピラールプレス)刊行記念トークイベントと追悼・黒岩比佐子さんDVD上映会

東京堂書店で、ヨコジュンさんの『近代日本奇想小説史』(ピラールプレス、2011年1月)の刊行記念トークイベントがある。ヨコジュンさん本人は出られないようだが、楽しみ。←ヨコジュンさん本人も出席との追加情報あり。 『近代日本奇想小説史』(ピラールプレ…

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』(工作舎)への補足記事一覧(書籍コード順)

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』(工作舎)について書いた記事を書籍コード順に並べてみました。各コード末尾の括弧内の月日をクリックすると記事が見られます。 022 佐瀬得三『続々当世活人画』(春陽堂、明治33年4月)(6月28日、8月6日) 030 稲岡奴之助『獅…

黒岩比佐子さんとNHK「五木寛之 21世紀・仏教への旅」

黒岩さんが、2006年8月ブータンへ出張していたことはブログ「古書の森」に書かれている。これは、五木寛之『21世紀仏教への旅』シリーズ(講談社)やNHKの「五木寛之 21世紀・仏教への旅」プロジェクトの関係者としての参加であった。五木寛之『21世紀…

黒岩比佐子さんを支えた編集者たち

無名時代の黒岩比佐子さんを支えた編集者の名前こそ記憶されるべきだという気がするので、著作等のあとがき*1で謝辞を述べられているすべての編集者を記録しておこう。 ・『音のない記憶』(文藝春秋、1999年10月・角川ソフィア文庫、2009年5月) 文藝春秋:…

管野すがらの遺体を引き取った堺利彦ら

小谷野敦氏が、ブログで、 黒岩さんは、処刑されたあとの管野スガの遺体を、堺利彦がひきとったと、さらりと書いている。しかし、引き取ったのは荒畑寒村と安成貞雄で、このことは『寒村自伝』に詳しく書いてある。『寒村自伝』を見ていないはずはないし、堺…