神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

横田順彌『近代日本奇想小説史 明治篇』(ピラールプレス)刊行記念トークイベント(横田順彌氏×長山靖生氏×北原尚彦氏)

本書の編集者である司会の川村伸秀*1の、「今日この前に黒岩比佐子さん関係のイベントがありましたが、生きておられればこのトークに参加されていたはずです」との挨拶に心の中で泣いた。

ヨコジュンさん、長山靖生氏、北原尚彦氏、お疲れさまでした。ありがとうございました。

以下、記憶に残っている範囲内で記録しておく*2と、

・古典SFに開眼するようになったのは、自由が丘の古本屋で押川春浪海底軍艦』(博文館文庫、昭和14年7月)を20円で拾った時から。普段話をしない父親だったが、「俺も昔読んだ」と言い、久しぶりに親子の会話が成立した。
・『近代日本奇想小説史 明治篇』の続篇は、来年からとりかかったとしても20年はかかる*3。明治時代は刊行数が少ないからこれくらい(本来の半分くらいに省略したという)ですむが、大正・昭和となるとこの何倍にもなるから。続篇への意欲に長山・北原両氏や会場も大喜び。もっとも、大正篇は北原氏、昭和篇は長山氏にまかせたい(笑)とも。
・実は、この三年間、古本は一冊も買っていない。
・家は相変わらず古本の山に占拠されており、食事をするスペースもなく、布団の上で飯を食っている状態である。←最近も、同氏宅を訪問した長山・北原両氏が「それで誇張はないです」と確認。
・古典SFの中には、森鴎外が憑霊して書かせたという九鬼盛隆『神示小説 宇宙の統一』(本道宣布会、大正13年12月)のような心霊小説もあるが、嫌いである。大本教の「未来記」は人にあげた。←すると、長山氏は「私のところにあります」と。一同、爆笑。
・長山氏は、結婚する前にあらかじめ婚約者に古本好きでも大丈夫だということをヨコジュンさんから説明しておいてもらおうと、打ち合わせの上、会ってもらうことになった。しかし、当時引越しをしたが、本の量が多すぎて、見積りの何倍も請求されていたヨコジュンさんは、「いやあ、古本は買うのも金がかかるし、引越しでも金がかかって大変だ」と言ってしまい、長山氏はだまされてしまったという。
・値段を一桁見間違えて注文してしまい9万円払ったアフリカ探検物の本があるが、どこにあるか見つからない。この本は別として、見つからない本はもう一度買った方が早い。
・北原氏が、ヨコジュンさんから教わった研究には遠回りも必要な例として、京王の古書展で買った田中中尉*4の書いた『血の叫び』(つはもの叢書、昭和8年11月)の例をあげていた。異版(時事新報社昭和8年11月)も買ったが、頁が欠けていたので、もう一冊同じ異版を買ったら、切抜きの挿絵が貼り付けられていて、新聞連載されていたことがわかったという。
・北原氏いわく、誰とは言わないが、何も教えてくれない研究者がいる一方で、ヨコジュンさんは、一を聞くと十教えてくれる。
(その他)
・質問時間で一番最初に手をあげた人は、ヨコジュンさんの研究(書誌の作成のことか)をしたいと言っていた(と思う)。若そうな人であったが、将来が楽しみなり。
・女性の参加者もチラホラといて、古本界の将来にとって頼もしかった。
・他に聞く人がいなければ、「なぜ早川書房でなく、ピラールプレスという聞き慣れぬ出版社から出るのか」と聞きたかったのだが、川村氏が「他に質問は」と言うと、ヨコジュンさんが「なかったことにしましょう」と言われ、聞き逃した。
日下三蔵氏、『宇宙気流』の編集長(誰?)が来られていたようだ。
ヨコジュンさんは手の具合が悪い(腱鞘炎?)とのことで、サイン会は長山氏・北原氏の分のみであった。
・東京古書会館での展覧会は、同人誌『SF倶楽部』や『宇宙気流』から始まり、三大冒険雑誌『探検世界』『冒険世界』『武侠世界』などの展示を経て、最後の方には篠原嶺葉*5村井弦斎の『食道楽』『酒道楽』があった。黒岩さんの分までしっかり見ました。『SF倶楽部』は、北原氏も全部は持っていないとのこと。私も一部持っている。メイコンで『星雲』の復刻版とともに買ったか。

*1:昨年12月7日参照。

*2:特記なきはヨコジュンさんのこと。一部書誌事項を補った。

*3:明治篇の初出「近代日本奇想小説史--または、失われたナンジャモンジャをもとめて」は『SFマガジン』2002年1月号〜2008年7月号に6年半連載。

*4:田中軍吉である。田中については、2008年4月27日などを参照。

*5:昨年8月25日参照。